ときどき、人の前で道化役に徹してしまうことがあります。ふざけた気分ではないのに、わざととぼけたことを言ってしまうことが。そうしてみんながわらってくれることが嬉しいし、自分がそうすることを相手から求められているような気がするのです。でも、そうした気分でもないのに”ふざけなくてはならない”という一種の強迫観念のようなものにとらわれ、自分を欺き無理をしてふざけるという行為はとても疲れを感じるもので、その反動で人に会うのが凄く億劫になってしまうこともあります。


うつくしい人/西加奈子
人の顔色をうかがってばかりいる主人公が、職場でちょっとしたミスを上司に責められ泣きだしてしまった。上司は「疲れている」と泣いてしまった主人公を称し、その言葉に衝撃をうけた主人公はそのまま会社をやめ、しばらく家にこもった後、ひとり旅をする。外に出るためのリハビリ、としてではなく、一生懸命働いた自分への「ご褒美」として。旅先で出会ったバーテンダー坂崎とドイツ人マティアス。彼らとの出会いを通して、主人公の固まった心は少しずつ解きほぐされ・・・。

この本を初めて読んだとき、私の心もきっと疲れていたのだと思います。主人公にとても共感しました。この主人公は人目を凄く気にする人間ですが、わたしもそういうところがとても多いです。被害妄想な自意識過剰が強いんでしょう。たとえば小さなミスをしてしまったときに、相手は笑って許してくれるけれど、「めんどくさい奴」と思われているような気がしたり。ぐっとくるところも多く、声に出して読みたいと思う描写が多々ありました。
また、少しずれますが、この本ではビールがとてもおいしそうに描かれているので、読んでいるうちに飲みくなってしまいました。私はビールは苦みが苦手で飲めないのですが、明日の晩にでもちょっと挑戦してみようかと思います。美味しく飲めたらいいなぁ。


心にスッと入ってきた言葉。海が見たなります。
―海も変わるのだ。こんな立派な海が。では、私が変わることぐらい、環境によって自分を見失ってしまうことぐらい、起こりうることなのではないか。(略)
海だってだめな時はきっとあるのだ―

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