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暗くてボツった堀鹿

君が大丈夫と笑うから(1)




「ねぇ先輩、誕生日プレゼント、くれませんか?」

そう言った鹿島の表情に、俺の中の何かが変わった。

既に誕生日プレゼントは用意していたけれど、鹿島本人に欲しいものがあるならそれの方が良いと思った。

「何が欲しいんだ?」
「先輩と一緒に演じたいんです」

それはもう真剣な表情で言うから何を言われるのかと思ったら、なんだ、そんな事で良いのか。

「何を?」
「良いんですか?」
「あぁ、そんなに長い台本は覚えてやれないけどな」

これでも受験生だから、そう笑って付け足すと、鹿島は一瞬だけ、辛そうな顔をした。

「どうした?」
「大丈夫です、台本はなんか千代ちゃんがくれるって」

佐倉?じゃあつまり野崎の書く台本か。それなら任せて問題ないだろう。

「いつ台本仕上がるんだ?」
「10月30日に」
「…一日で覚えるのか?」
「何だか、むしろぶっつけ本番でやってほしいとか言ってました」
「一日が温情かよ、意外と鬼畜だな…」

「きっと、気を使ってくれたんです」

さっきから、何だか鹿島に違和感がある。
俺の知ってる鹿島は大型犬みたいで。
気が付けば心に入り込まれたくらいの、強烈なインパクト。

なのに今の鹿島は…。
消えそうなくらい、儚い。

冷たくて強い風が吹く。
それに飛ばされるんじゃないかって。
そんな馬鹿なことを考えて、その腕を掴んでいた。

「おい、鹿島」
「はい」
「お前ちゃんと食ってるか?」
「何ですか急に。食べてますよ。今日の晩御飯は温たまカルボナーラ、レタスのサラダ。コンソメベースのスープ」
「そうか」
「希望ですけどね!」
「……おい」

「大丈夫ですよ」

クスクスと、くすぐったそうにはにかんだ鹿島に見惚れて、手を離すタイミングを逃した。

「なぁ鹿島」
「何ですか堀先輩」

(あと何度こうして一緒に帰れる?)

出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
そんな事、俺が言うべきじゃない。
置いて行くのは俺の方だ。

俺が進学するつもりなのは、県外の大学。
そして俺はその大学の近くで一人暮らしをする予定だ。

ずっと会えない距離じゃない。
でも、会いたい時に会えない距離かもしれない。

だから俺は、鹿島に、何も言ってやれない。

待ってる、とも。
待っていてほしい、とも。

掴んでいた手を、ゆっくり離すと、鹿島はまた、何とも言えない表情をした。

「大丈夫ですよ、堀ちゃん先輩」

「大丈夫」

それが最近の鹿島の口癖になっていた。

一瞬だけしか、俺にはもう、その本当の感情を見せてくれなくなった。

「…そうか」
「はい」

こんな歯がゆい未来が待ってるんだったら、もっと早く、言ってしまえば良かった。


お前が、好きだって。

みっともなくても良い。

俺は、大丈夫なんかじゃないって。



(届く台本は、そんな二人を暴く。閉じた心を開く、鍵になる。みんなの希望の話だと言う事を、二人はまだ知らない)

一歩ずつ(さとやち)

自分から言うのは、はしたないのかな?と思った。
けど、私は何故だか、そうしたくて仕方ないみたいで。
「八千代」
「な、何?佐藤くん」
「どうかしたのか」
「え……?」
「何か言いたいんだろ、俺に」
佐藤くんは私を見てくれてる。いつも、私が自分でも気付かない事、教えてくれる。
この、佐藤くんを大好きな気持ちも、ずっと、待っていてくれた。
「あ、あのね…その…あの…」
「俺はもう逃げないから」
その手がそっと私の頭をぽんぽんと叩く。
佐藤くんの優しいところ、大好き。
でも、今は少し、もどかしい。
「佐藤くん」
「?」
「私、手を、繋ぎたいわ」
あ、びっくりしてる。
ほんのちょっとだけ、照れてくれてる?
それが分かる自分が、嬉しい。
「いくらでも」
そう言って佐藤くんは私の手を握ってくれた。
佐藤くんの手が私の手を包み込む。
これも嬉しい。けど、ちょっと違うの佐藤くん。
「佐藤くん」
「…何だ八千代」
「恋人、繋ぎなの」
佐藤くんはやっぱりまたびっくりした。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
やっぱり、はしたなかった?
「八千代」
「ご、ごめ…」
「ごめんはいらん」
佐藤くんの指が、私の指に絡む。
「笑え」
「う、うん!ありがとう佐藤くん!」

(スローテンポな二人の恋は、やっぱり少し、もどかしい)

気持ちの名前(さとやち)

お話し出来ないなんて、寂しいと思った。
佐藤くんに恋人が出来たらって想像したら、胸がぎゅっと痛くなる。
抱き締められたらドキドキした。
でも私はこの気持ちに、何て名前を付けたら良いんだろう?

「それはズバリ恋です!」
「…恋?」
「それ以外の何でもないと山田は思います」
「でも、私には杏子さんが居て…」
「山田は相馬さんが好きです」
「え!?」
「でも相馬さんに抱きしめられてドキドキするかは今はちょっとまだ分かりません」
「あの…」
「ときめきは大事です!伊波さんなんか常にドキドキしてそうですよ、あれは間違いなく恋ですね!」
「そ、そうね」
「逆も考えてみましょう。例えば抱きしめてきた相手が小鳥遊さんだったらどうですか?」
「…事故?」
「…八千代さん、意外に手ごわいですね」

「山田、お前来たなら仕事しろ」
「山田は今八千代さんのカウンセリング中です」
「は?…八千代、お前溺れたいのか?」
「佐藤さんは山田に全力で失礼ですよね」
「良いから、今フロアが混み出した。仕事しろ」
「今行くわ、ごめんなさい佐藤くん」

「…何かおかしくないかアイツ」
「山田知りません」
「あのな」
「佐藤さん、ヘタレも度を越すと罪ですよ」


今日は、あんまり良くなかった。
ミスも、何回かしてしまったし。
補充確認も、書き間違えて…何やってるんだろう、私。

「…あんま、落ち込むな」

珈琲の香りと、タバコの香り。

「佐藤くん、怒らないの?」
「反省しまくって凹んでる奴に追い打ちかけても意味ないだろ」

佐藤くんが向かいの椅子に座った音がして、でも、それだけ。
いつも、私が立ち直るの、そっと待っていてくれる人だから。

「佐藤くん」
「なんだ」

「私、佐藤くんの恋、応援したくないみたい」

そう、応援なんか、したくなかった。
でも佐藤くんが此処に居てくれないなんて、嫌だった。
だから、自分に嘘吐いたの。

「お友達なの、嫌って、きっと、私…」
「俺は、お前が好きだ」

思わず顔を上げたら、そこに居た佐藤くんは出会った時みたいに、どうして良いのか分からないって顔で。

「フラれても、傍に居られる自信は無い」
「さとうく…」
「だから、お前が俺を好きじゃないなら、俺は此処を辞める」

佐藤くんが椅子から立ち上がる。咄嗟にテーブル越しにしがみ付いた。

「…八千代?」
「行かないで」
「………何で?」
「佐藤くんとさよならするのは嫌」


「………す、き」

どうしてちゃんと言えないの。
きちんと伝えたいのに上手くいかない。
ドキドキして、心臓が痛い。

「八千代」
「す……す、」
「もう、いい」

良くない。そう言おうとして開きかけた唇にそっと佐藤くんの唇が近付く。

「四年分、覚悟しろ」


(初めてしたキスは、私が慣れ親しんだタバコの香りがした)

2度目の居酒屋(さとやち)

八千代と二人で来た二回目の飲み屋。
前科がある俺はあまり酒を飲まず、対し八千代は何故かカクテルをコクコクと飲み続けていた。
「八千代、飲み過ぎだ」
「甘くて美味しいから大丈夫よ。佐藤くんは何で飲まないの?」
八千代がきょーこさんきょーこさんと言わなくなった時点でコイツは相当酔ってる。
「俺は良いから」
「お酒飲みに来たのにどうして?」
八千代がトロンとした目で俺を見る。嬉しそうに笑う。
「あのね、私、佐藤くんが大好き」
そして、幸せそうに照れながら、俺の言葉を待っている。
「…そうか」
他に何て言えば良い。沸騰しそうな頭で、やりきれない想いを抱えて、四年分の恋なんて、どうしたらいい。
「さとーくんは、ずるい」
八千代は珍しく頬をふくらませて、持っていたカクテルをグイッと飲んだ。
「おい八千代」
そろそろ本気でヤバい。八千代のカクテルを取ろうと手を伸ばすと、ペチンと叩かれた。
「どうして、持ってっちゃったの」
「何の事だ…」

「私の一番、持っていっちゃったじゃない」
八千代の目からポロポロと涙が零れ落ちる。俺はそれを拭う事すら出来ない程、固まっていた。
「ずっときょーこさんが一番だったのに、大好きなのに、きょーこさんと佐藤くんが話してたら、もやもやして…嫌なの。こんな気持ち、いや…」
佐藤くんのせい、とか、返して、とか、言って宝物取られたガキみたいに八千代は泣き続ける。
「なぁ、八千代」
俺は八千代の頬を伝う涙ごと、手のひらで包んだ。
「じゃあお前は俺の四年分返してくれるのか?」
珍しく八千代の目が大きく開かれて、それだけで、割りと幸せな俺だったけど。
「四年、ずっとお前が好きだった。ずっとお前のきょーこさんに妬いてた俺は可哀想じゃないのか?」
八千代は固まったまま、瞬きをぱちぱちとして、俺を見上げてる。
「泣き止んだな。そろそろ帰るぞ、立てるか?」
「え、あの、ちょっと、ちょっと待って佐藤くん!!」
俺が伝票を取ろうとした手を八千代はぎゅっと掴む。
「待って、無かった事にしないで佐藤くん」
「…お前は酔ってる。大分な。きっと寝たら忘れ」
「ないわ!絶対、忘れない!だから、佐藤くん、お願い、もう一回…」
その手を握り返して、俺は八千代の唇を塞いだ。嫌がるかも知れない。そんな心配を蹴散らす位、八千代は真っ赤になって…それでも、笑ってた。
「…帰るぞ八千代」
2度とこの店来れないな、と思いながら、八千代の手を引いて寒い夜道を歩く。

「タクシー、呼ぶか?」
「まだ、佐藤くんと一緒に歩いて居たいわ。だめ?」
まるでふわふわした真綿みたいな空気で、俺の理性をギリギリと締め付ける。
「…良いけど、寒くなったら言えよ」
「ドキドキして、暑い位だもの。大丈夫よ」
汗ばんだ手をどちらからともなく、ぎゅっと握り直した。
「佐藤くん、大好き」
「……俺のが、長い」


(翌日、ムカツク顔で相馬に赤飯を渡されたので顔面に投げ返した)

ちょっと強くなった

ようやくガディアンナが10まで鍛えられた!

またグラインダー500無くした上にメセタ不足で強化しきれなかったのが今日やっと!

しかし本当にタリス落ちない。今までほぼ買ってきた。大剣は☆10落ちる事が稀にあるのになんで?私フォースなのに(;´д`)
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