きみと一緒に。
「………。」
職員室の自分の席で、何やら難しい顔したニールがチラシをじっと見つめていた。そこへ、比較的席の近いライルがどうしたのかと、ニールの手元を覗き込む。
「何を見てるんだ。」
ニールの手元には、駅前によくあるファーストフードのクーポン券があった。どうやら、先程からそれをじっと見ていたらしい。
「………特選したきたあかりのまるごとポテト?」
クーポン券の名前を思わず口に出して読み上げてしまったライルには、ニールが急に顔をあげると。
「特選なんだぞ。特選きたあかりが丸ごとポテトになってるんだ。」
これは食べに行くしかないいだろと、いつになく熱い兄の姿に、そう言えば兄はジャガイモ料理が好きだったと思い出す。だったら、何故先程難しい顔をしていたのかと、ライルが不思議に思っていると、ニールが急に声のトーンを落とした。
「さすがに、1人でファーストフードはどうかなって思って………刹那を誘おうと思ったんだけどな。成長期の刹那にファーストフードは食べさせたくないんだよ。」
ニールの化学の授業を選択している刹那の名前が一番に上がったことに、ライルは少し不機嫌になる。自分ならいつだって一緒に行くというのに。
「兄さん。俺が一緒に行くよ。俺なら、成長期とか関係ないし。」
不機嫌を上手く隠しながらライルが、そう言うと。ニールが、小さくため息を吐いた。
「俺も、最初はそうしようと思ってたんだけどな………ライル、お前数学主任のクラウス先生に三学期の授業計画書提出したか?」
そう言えばそんな書類があったはずだと、思い出したライルに、ニールが再びため息を吐くと。
「それ提出するまで、外出禁止だってさ、ライル。」
「はぁー、マジかよ!?」
自業自得を棚に上げ、なんてタイミングの悪さだと、ライルが嘆いていると。職員室に一人の生徒が入って来る。
「ニール先生。」
その生徒は、よく図書室でニールと一緒にいるティエリアで、ニールとライルの前まで来ると、ニールにそっと何かを差し出した。
「良かったら、一緒に行きませんか。」
そう言って差し出されたものは、先程からニールが食べたいと言っていた丸ごとポテトの無料チケットだった。
「ティ、ティエリア。お前、これ………。」
友人に貰ったからと、ライルには見せたこともないような穏やかな表情でティエリアが、ニールにそのチケットを渡した。自分は、こっちが食べたいのだと、成長期にあまり関係しないような甘味のクーポン券を見せるあたりが。とても侮れない。
「サンキュー、ティエリア。よし、今から一緒に行くか。」
教師の就業時間も過ぎているため、今からどうだとニールが言うと、ティエリアは直ぐ様頷いた。
「ちょ、ちょっと待った。兄さん。」
納得いかずに、声を上げたライルに、ニールが兄の顔をして、ちゃんと書類作ったらお土産買って来てやるからと笑った。
違うのだと、ポテトが食べたいわけじゃないのだと。
兄と一緒に出かけたいだけなのだと言うライルの心の叫びに、ニールが気が付くことはなかった。
†††
ロッ○リアの例の商品が気になって仕方ないです(笑)絶対、ニール食べたがるよって思いながらいつも店の前を通り過ぎてしまう猫野です(笑)
今回は、ティエリアの一人勝ちでした。