16/08/15 13:30 (:小説)
  俺と昼食とマネージャーと
今日は久し振りの朝から夜までの完全のオフ。
最近休みがなかった訳じゃなかったけど一日オフがもらえるのは久し振りのことだった。
もともとインドア派な俺だからタマのように出掛けたいとかそんなアウトドア発言はほぼ出てこない。俺の行動の中でアウトドアと言えるのは近くの公園に散歩に行くくらいだろうか。まあそれがアウトドアと言えるか怪しいが。
ごろごろとお昼までベッドの上で過ごすと言う予定通りの過ごし方をして腹が減ったので部屋を出る。
今日のオフは俺だけだから昼食は作るか買うか。作るのは面倒だからやっぱ買ってくるかなー、なんて引き続きインドア思考でいると。
「…ん、誰からだ?」
ぴこん、と部屋にラビチャが入った音が響く。携帯はベッドからほんの少し離れたテーブルに置いてある。ゆるゆると起き上がって手に取る。新着メッセージ一件、の下に表示された名前は…小鳥遊紡。
「マネージャー?」
彼女は我らIDOLiSH7のマネージャー。そういや彼女もオフの日だったっけ。
パッと表示されたメッセージに目を通す。
『お疲れさまです!大和さん寮にいらっしゃいますか?』
俺は画面をタップしてキーボードを開く。あまり早くは打てないが取り敢えず自分で出せる最大のスピードで打つ。
『おーいるぞー。何かあった?』
返信にはすぐに既読が付き、何分とも経たずに返信が返ってきた。
『お昼ご飯を今から作る材料を買いに行くんですけど、大和さんはお昼ご飯食べました?』
タイミングが良くて何だか笑ってしまう。恐らく俺がオフの日は極力寮から出ない上にお昼も朝と兼用で食べることを知っているから聞いてくれたのだろう。
『いや、丁度腹減って自分の部屋出たとこ。何、マネージャーなんか作ってくれんの?』
期待半分、冗談半分でそんな返信を返すとまたすぐに既読が付いて返信が返ってきた。
『簡単なもので良かったらお作りしますよ!』
『マジで?じゃあ頼もうかな。お兄さん動きたくなくて(笑)』
『もう、相変わらずですね!笑』
笑っているうさぎのスタンプ付きの返信がやってきた。それと同じスタンプを返す。
『何か希望はありますか?』
『そうだなー、どれもマネージャーが作る料理は旨いからなー』
『ありがとうございます!でしたらお買い物に行ってたから決めますね。少しだけ待っててもらえますか?』
了解、と打ってから送信ボタンを押す…前に俺は少し考えが変わり、その二文字を消した。
『いや、俺もついていってもいい?荷物持ちくらいお兄さんに任せなさい』
…インドア思考から急にアウトドア思考になったのは二人で会えるからというかなり乙女っぽい理由だというのは自分の胸の内に隠しておくことにした。
〜〜〜
「いいんですか?大和さんいつもお休みの日はお部屋から出ないって言ってたのに」
「折角マネージャーとデートできるっていうのにこのチャンス逃すわけにはいかないでしょ」
「で、デートって…」
つい苛めたくなるんだよなあ、マネージャーって。弄りがいがあるっていうかつい手が出るって言うか。
「バレないように変装してるから平気だって。寂しいお兄さんの相手してくれる?」
真っ赤な顔しながらマネージャーは小さく頷いた。俺はわしゃっと彼女の頭を撫でて買い物かごを手に持つ。
「で、結局何にするんだ?」
「秘密です!でももしかしたら材料で分かるかもしれません!」
「お、なら当ててみるかな」
既にメニューを決めてやってきたからかスムーズに材料を俺の持つかごに入れていく。
かごの中に入ってきたものはベーコン、プチトマト、それからチーズ。最後に飛び込んできたのは食パンだ。
「…サンドウィッチか?」
「正解です!ホットサンドを作ろうと思って!」
こないだ美味しそうなレシピがパソコンのサイトに載ってたんです!と嬉しそうに伝えてくれる。
「へえ、それは旨そうだな」
さっきから腹の虫がうるさくて仕方ない。マネージャーとのデートが終わるのはちょっと惜しい気もするがとっととこの虫を納めてもらおう。
「楽しみにしていてくださいね!」
キラキラと輝く笑う彼女に思わず俺の口の端も上がっていた。
〜〜〜
寮の共有スペースキッチンから香ばしいパンの香りが漂ってくる。
最初はソファに座って大人しくしてた俺だが香りにつられてマネージャーの立つキッチンへと足を運ぶ。
「なんかこういうのって特別な調理器具使うとかと思った」
フライパンの上に乗っているホットサンドはカリカリに焼いたベーコンとトロトロに溶けたチーズ、みずみずしさを丁度良く残したプチトマトを挟んで湯気を立てている。
「最近はフライパンでお手軽にできるレシピがたくさん載ってるんですよ、一度試してみたくて」
お皿に移されたホットサンドは形を崩さずに鎮座した。
「こんな洒落た昼食食べるの久々かもしれないわ」
「そうなんですね!味は大丈夫か分からないですけど」
はにかみながら微笑むマネージャー。
「不味くたって可愛いお嬢さんが作ってくれたんだから全部食べますよ」
「もう、最初から不味いって言いますか?」
からからと笑うとむう、と膨れっ面マネージャーに。
「冗談だよ。お兄さん、マネージャーの作る料理好きだから」
膨れた頬に一つキスを落としてやるとぷしゅー、と空気が抜けていつも通りの可愛い顔に戻る。
でも、
「〜っ、大和さんの馬鹿っ」
彼女は捨て台詞のようなものを残してホットサンドが乗ったお皿をパッと持ち、テーブルへと逃げ出した。走り去る時に見えた耳は真っ赤で照れ隠しなのがバレバレだ。
「…料理も好きだけど、俺はお前さんのこと自体好きだよ」
そんな仕草されて大人しくしているお兄さんに感謝してもらいたい、本当は頬にキスだけなんて…足りない。
「何か言いましたか?」
拗ねているのは拗ねているんだろうけどそれでも声を聞き取って立ち止まり、こちらを伺う彼女はまた可愛かった。
「いんや何も。そんじゃ飯にしますかね」
いつかはちゃんと聞いてもらいますかね。俺は彼女をこれ以上待たせないように歩き出した。

俺と昼食とマネージャーと。

(大和さん、フォークとナイフ持ってきてもらってもいいですか?)
(女の子は丁寧だなー、かぶりついたりしないの?)
(大和さんの前では恥ずかしいから見せられないです…)
(っ、このお嬢さんは…俺早めに伝えないと色々保たないわ…)
(?)
〜End〜


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