第02話←
扉を乱暴に開く音と共に、彼の声が飛んできた。
いつも通り殴られたりするのだろう。
堪えて、堪えて、明日彼が出勤するまで堪えるしかない。
そう思っていた。
そして、部屋の扉が乱暴に開いた瞬間、私の目は彼に釘付けになった。
いや、正確には『彼ら』に、だ。
きっとまだ、私は考えが甘かったのかもしれない。
殴られ蹴られている時は彼は私だけを見ている。
暴力は愛情の裏返しなのだ、と。
しかし現実は違った。
もうお前は飽きた、こいつと暮らす。
そんな声が聞こえた気がしたが、私の頭はもうその言葉の意味を認識していなかった。
ガラスの割れるような音が頭に響いた。
体もその場に崩れ落ちた。
私の世界から
完全に色が消えた瞬間だった。
ある日、列車待ちをしているとき。
長い行列を作ってるのに横からスルリと入ってくる奴がいた。
いけない!
これはもう注意しなくては!
なのでその人にこう言ってやったのさ!
『すみません、靴ヒモほどけてますよ』