話題:有栖川有栖先生

ようやく昨日読了。
8/2のサイン会から実に1月以上が経過しちゃったよ。
忙しかったし。なんだか読み終わるのが勿体なくて、ぐずぐずしてたし。

久しぶりの作家シリーズ、楽しかった。
有栖川さんの2種類の論理展開の両方が楽しめた。

決定的な証拠や手がかりが無い中、様々な仮説が出されては打ち消され、手詰まりのように思われた時に、ふっ、と飛躍する論理。
または、幾つかの証拠や状況を組み合わせ、ひとつずつ組み上げることで導き出される結論。

個人的には後者のような展開が好き。例えばスイス時計とか。
飛躍する論理には、たまに付いて行けないというか、飛躍の仕方が不自然に思えてしまうことがある。
モロッコとか。
なんで"そこ"に到達するのか。
飛躍の方向が予め匂わされていないと、もしくは嗅ぎ取れないと、びっくりしちゃう。
でも、今回(猿の左手)の飛躍は面白かった。
事件の核となるロジックと火村の『猿の手』の解釈が重なっていて、事件の真相が明らかになると同時に火村の(つまり有栖川さんの)解釈も解説されるという。
火村の現実主義なところとか合理的思考は、私にも近い部分があるからなのか、すんなりと納得できた。
願わくば、有栖川さんと北村先生の「猿の手論議」を拝聴してみたいっす。
絶対無理!(笑)

今回の有栖川さんの解釈からふと、有栖川さんは根っからのミステリ好きなんだなと思った。
ミステリ映画だと思っていたら心霊現象が出て来て、(絶対にトリックだ!誰かが主人公を精神的に追いつめて罠にはめるつもりなんだ!!)って思ってたら本当に幽霊だった…、なんてこともあったりして。
なんの映画かは言いませんが。


「残酷な揺り籠」は、タイトルがとても素敵だと思った。
言葉の響きも面白いし、いつもの「火村節」なのかとも思ったけど、最後に思い返すと…。
いくつかの証拠や状況を組み合わせていって犯人に辿り着く、オーソドックスな解決。
シンプルで一見地味だけど、とても気持ちが良い。

でも、なんで火村は最後に躊躇したの?
彼女に思い入れがあっての躊躇では無いし、自信が無かったわけでも、もちろん無い。
なんで???
本人も分からないようだったから、これを考えてもしようがないな。
つまり、こう言い換えねば。
「なんで有栖川さん(作者)は火村を迷わせたのか?」
なんだか、思い出したように傷を見せたり見せなかったり、(過去に関連して)悩んだりするからか、未だに火村像が一貫しないような…。
基本的にはテンション高い人なんだろうけど。
たまに暗いよね。この人。


ところで、助手(役)がきっかけで真相に思い至ったり、迷推理を披露しては片っ端からつぶされるというのは、やっぱり定番なんですね。(笑)