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最初は…






「じゃんけん…?」

「うん。簡単に勝敗を決めるならこれだよね」


スザクは顳の辺り、右手をぎゅっと握りしめた。


ロロはそんなスザクを訝し気に見つめると、不快そうに眉を寄せた。


例えるなら肉食動物と草食動物の様な、そんな線の二人がルルーシュを板に視線を交じらせる。

「じゃん…けん……」


ロロはルルーシュの腕に半分、顔を埋めながら呟いた。


「じゃあ行くよ?じゃーんけん…」


だがスザクの振り上げた拳は空で固定された。
それは意識では無く、故意である。

何故なら一向に反応を見せないロロを怪訝に感じたからだ。


悩んだ様に伏せた睫毛は微々に疑念を含ませている様子。

少し不安そうにルルーシュを見上げ、ロロは喉から言葉を押し出した。


「兄さん…じゃんけんって何?」


スザクの振り仰いだ拳は、だらし無く重力へと従った。






最初は…







ルルーシュとスザクの説明の元、ロロは不快だと言わんばかりの表情を張り付けたまま、利き手をくるくると動かした。


「これがグー…そしてパー。パーじゃないとグーには勝てないからね。それでパーに勝てるのがチョキで…」


「チョキに勝てるのがグーですね?」


「覚えが早いなロロ」


スザクから、三つの相性説明をロロはこくりと飲み込んだ。

物分かりの良い弟へ、ルルーシュは満足気に相槌を打つ。


こんな話になった発端は、問答を続けるスザクとロロにある。

何の変哲も無い、ルルーシュの買い物にどちらが付き合うか、と為るものだ。


当初はひとりでに行く筈だったものの、ロロが名乗り…スザクが名乗り…結果口論、勝敗を決めようとじゃんけんが提示されたが…ご覧の有様になった訳である。


「え…っ…こ、これくらいすぐに…」


ルルーシュの褒め言葉と共に、頭部へ降ってきた手の平にロロは照れた様に言葉を濁す。


「よし…覚えたなら早くじゃんけんしようか?」


改めてロロを見据え、スザクは腕を回した。

そんなスザクをロロも見据え、溜息混じりに話し出す。


「…でもこんな幼稚な勝負、僕はしたくありません…なんですか?じゃんけん?…馬鹿馬鹿しい」


はん、と聞こえ兼ねない侮蔑を兄の前にも憚らず言い連ていく。

「グーとかチョキとか…に…兄さんなら未だしも、枢木卿とは…」


鋭い視線が、解っていますよね?なんて言うようにスザクを射抜いた。


「こんな子供騙しな手遊びに、兄さんとの時間を賭けたくありません。どうせならナイトメアとかで勝負を…」


「おい、ロロ少し…」


行き過ぎた発言するロロへ、ルルーシュは制止を入れようと声を荒げた。


「だって…でも…」


上目に似た、ロロの仕草にルルーシュも言葉を呑みこむを止むなく、そして深く息をつくと呆れた様にスザクを睨む。


「スザク大人げ無いぞ…夕食の買い出し、弟と行くくらいだ。我慢しろ」


スザクは返す言葉無く、僅かに顔を顰た。


「た…たまにはルルーシュとゆっくり過ごしたくて…さ」


「たまにも何も、話すくらいは学校で事足りるだろ?」


そして庇うが如くロロを腕にすっぽりと抱き抱えて見せる。


羨ましい、と憤怒と羨望の眼差しをスザクは抱き留められたロロへと向けた。

瞬間、僅かに諦めを思案していた脳内は刹那として塗り潰された。

言うならば、自尊心にだ。


今頃静かにしているだろうロロは、ルルーシュの腕の中…勝ち誇った様に幼い瞳を歪め、そして意地悪く唇の端を吊り上げていた。


「なっ…!?」


スザクに再び闘志が宿る。

人が黙っていればいいものを…。

そんなスザクを他所に、ロロはさも悲しそうに兄へ縋って見せた。


「ね…僕は兄さんと一緒に行っても良いの?」


不安を眉に滲ませ見上げれば、ルルーシュの心地良い二つ返事が帰ってくる。


「勿論、早く行こうか」


「うんっ!!」


目の前で繰り広げられる兄弟の嬉々とした会話。


僕はわかったよ、ロロ。

ルルーシュが、弟のお願いは断れないと知っていて。

上目使いに可愛いらしく縋ってみせて…実に策略臭さがある。

無駄を好まない君らしい考えだ。
いいじゃないか、たまには僕だってルルーシュと買い物もしたい。


こんな不戦勝は認めない。

意地でも幼稚なじゃんけんをさせてやる。


「またなスザク」


ルルーシュが片手をひらりと翳し背を向けた。

ロロもそれに続いて歩きだす。


「ちょっとまって」


「お、わ…っ!?」


スザクの腕がロロの左肩に伸びた。

手の平で掴み力の限り自身へ寄せる。

一連の動作に迷いも無く、ロロは流れるままスザクの腕に閉じ込められた。


「逃げるなんて、らしくないよね」


ロロの撥ねた柔らかい髪筋を指に搦めながらスザクは微笑する。

すっぽりと抱き留められ、ロロは不快そうに舌を打つ。


「逃げるなんて、何をあなたは」


ルルーシュに見せる表情とは全く違う、嫌悪をあらわにした眼差し。


スザクの中の嗜虐心が擽られる。
解りやすいなぁ…。

内で呟いて苦笑する。


黙った二人を半ば疎ましくも、ルルーシュは声をあげた。


「あんまり煩わせるなら置いてくからな…」


怠そうに告げたルルーシュへ、ロロは焦ったように腕を振り回した。


「あ…まっ…待って兄さん…っ」


戒められた痩躯を必死に動かしながら、脱出を試みる。

しかし腹部へ回された力は想像以上に強く、苦しい呼気に併せた声しかでない。


「…枢木、卿……は、離して」


「嫌だ、じゃんけんするまで離さない」


「そ、んな…子供みたいな駄々、言わないで下さ…」


「駄々で構わないよ」


「………っ」


拉致の開かない問答、その間にもルルーシュの眉間は険しくなるばかり。



兄さん、怒ってる…嫌だ…僕は兄さんと行きたいのに…!!



そう思案に続いてロロの右目が色を変える。

支配した時の中、スザクの腕を強引に自分から引き剥がした。


「…あんまりベタベタするな!!」


ロロの右足がスザクの鳩尾へと送られる。

今は固体となったスザクは、揺らいだ自分を支える事も出来ずに地へと背を倒した。


「お返しです、よ!!」


いーっと、普段なら出来ない表情をロロはスザクへ見せてみる

そして蹴りを見舞わせた右足を何事も無かったように正し、時を返した。

動き出した情景、スザクにルルーシュは目を瞬く。先程と違う。


「ロロ…ギアスは使うなって言ったろう?」


「兄さん、置いてったら嫌だ」


いつの間にか傍らに居たロロは、ぎゅうとルルーシュの手を握る。


「はいはい…甘えん坊だな」


「ん…その言い方…嫌、だよ…」


「嫌なものが多いんだな?」


「兄さんが嫌な事言うから…っ」


「…はいはい、わかったよ」


「絶対わかってないっ」


痛む鳩尾に骨抜かれたのか、スザクは目の前の会話をただ耳に受け入れた。


「駄々っ子は君じゃないか…」


まるで恋人の如く拗ねるロロに、苦笑しながらも無下にしないルルーシュ。


「ふ……そうか…そうなのか…」


覚束ない足取りで立ち上がり、スザクは皮肉を込めて声をあげた。


「ロロ…君は負けるのが怖いんだね?」


「……え?」


瞳をぱちりと開閉させ、ロロはルルーシュからスザクへと移り見る。


「君のいう【幼稚なじゃんけん】、ルルーシュの前で、僕に、負けるのが怖いんだろう?」


端々を強く言いあげ、スザクは「ごめんごめん」と軽い調子に呟いた。


「そうと言ってくれれば無理強いしなかったのに…」


思考が追い付かないのか、ロロは顔色変えずに首を揺らす。


「負け戦には手を出さないなんて、兄弟揃って賢いというか…卑屈というか……」


「卑屈だと……?」


スザクの悪態に眉を潜めたのは、ロロよりもルルーシュだった。

ロロを馬鹿にされるのも、勿論この上ない不快となるのだが…ましてや今。

一緒くたに負け戦、卑屈などと侮蔑されるのは想像以上の屈辱。

兄弟、ということはつまり、ルルーシュも含まれる。

だからこそ、異論を唱えたのは誰よりもプライドの高いルルーシュであった。


「負け戦?笑わせるな…俺のロロがスザク、お前に負けるなんてありえない」


「本当かな?負ける賭け事にわざわざ手をだしたかなルルーシュは?……二人して白々しい嘘ついて」


「………っ」


あまりにないスザクからの悪態に、ルルーシュの理念が決壊寸でに張り詰める。


「まぁいいや…買い物行ってきなよ二人とも」


悠長に笑みを浮かべたスザク。紛れも無い、人を見下げた笑み。


遅れて意図を組んだロロが声を荒げようと息を吸った矢先、ルルーシュの両手が降り懸かった。

肩を痛い位に捕まれて小さく唸る。


「……兄さん?」

「ふ…ふはは…スザクに馬鹿にされるとは…ロロ」


完全に臨戦状態となったルルーシュが低く微笑した。


「え…えと…」


「やってやれ、ロロ」





「………」

スザクと互いに顔を突き合わせ、漸くじゃんけんを開始しようと向かい合う。


「逃げられなくて、残念だったね」


ルルーシュへ聞こえないように、スザクからの耳打ち。

ロロは嫌味を言うで無く肩を竦めた。


実際は、こんな下らない事したくなかったし…なにより兄さんで賭け事なんか快くなかった。

それに枢木卿のいう【じゃんけん】を知らないという僕自身が嫌なのもそれを加速させている。

この人達とは違う世界で生きて来たんだって、如実に感じさせられる気がして。


だが現状に背に腹を変えられない。

あの兄さんが自分に期待をしている。

グーとかチョキとか知ったことでは無い。

今は早急に枢木卿を打ちのめす、この任務のみ。


「じゃあ…お手柔らかにお願いします…」


「準備は大丈夫みたいだね」



ちらりと兄を見遣れば、端正な微笑みを返してくれた。

ロロの、胸中に燻っていた不安が無かったかのように軽くなる。
兄さんの為なら…!!




「「じゃーんけん…」」





「僕の圧勝だね!!」


3回に渡るじゃんけん勝負は、スザクの全勝と落ち着いた。


まるで仕組まれたかの如く、ロロはスザクへ負の対を繰り出し続け。

よって、問答を拡げたじゃんけん勝負は幕を閉じた。



「やっぱり負けるのが嫌だったんだね」


誇らしげにスザクは声を発する。
ルルーシュに至っては「運が無かっただけだろう」と結論を独り付けた。


「じゃあ僕はルルーシュと買い物に行ってくるよ…ね、ロロ」


白々とロロの二文字を強調する。

なんて反抗するかな?

内心、ルルーシュに限らず、スザクはランペルージ兄弟を構うのが好きだった。

今にしては、ルルーシュを餌にロロを弄るのが愉快で為らない始末。


「い………」


負けた衝動か、俯いたままのロロが口を開いた。


「い?」


スザクは挑発じみた反復をする。小動物を虐めるのはとても愉しい。


嫌だ、とでも言うのかな?


ロロは震える怒号をスザクへ剥けた。


「枢木卿のい…意地悪…!!」


「………」


剥けられた言葉の突飛にスザクは吃る。

意地悪?僕が?


「ロロ…どうしたんだ?」


珍しく激しい弟を見、ルルーシュは声を掛ける。


「……だって」


「怒らないから言ってみろ?」


兄の優しい視線に見守られ、ロロは瞳を滲ませた。


「僕…じゃんけんなんて産まれて初めてしてみたし…遊ぶ事とかしたこと…無い」


静まり返るクラブハウスまでの石畳、緩やかな夕陽が射す。


「新しい事を知るのは嬉しい…でも、でも…っ」


多寡を切った様に、涙腺からの滴がロロの頬を流れて言った。

この場には重過ぎる、言葉。


「せっかく兄さんが期待してるのに…僕はこんな些細な事すら満足に出来ない……暗殺しか出来ないのかなって…」


こんな形で初めてなんてしたくない。


そこまで言うと潜もった嗚咽が冷たく響いた。


ぱくぱくと口を開閉、スザクは傷付けてしまったという事に所在を無くす。

些か憔悴した表情で、ルルーシュは浅はかだった自分に羞恥しロロを包むように抱きしめた。


ごめんな


低く小さく囁いて、ロロの後頭を撫で慈しむ。


数秒。

柔らかな癖毛が、左右に散らされ怒ってはいないと弱々しい返答が返される。



思わぬイレギュラーに不安を掻き乱されたが、泡立つ事も無く良かったと…取り敢えずルルーシュは安堵に息を吐いた。


流石のスザクも、事を軽んじたと反省の色を滲ませる。

微動しない二人と自分。
一層溝は深くなる気がした。


次に動けず硬直するスザクに、ルルーシュは脈拍の無い、淡々とした声を投げかける。

スザクはそれにとてつもない怒りを感じた。


「スザク」


「なに?…ルルーシュ」


冷々した凍てつく視線に、仕出かした重大性に今更ながら痛感。
誰だって負の過去を思い出したくない。

生意気にしろ、なんにしろ、申し訳無いことをした。


様々を思案。

怒られるかな……。


「今回は俺も非がある……しかしスザク、事の元凶はお前だな?」


「う…」


「お前だな?」


「……はい」


少し位、解ってくれてもいいのに。

煮え切らない感情に蓋をしつつ、スザクは肯定する。


そんなスザクに満足したのか、ルルーシュは卑しく笑みを浮かべ言葉を続けた。


「なら買い出し、スザクだけで行ってくれるよな?」


行かないなんて言わせないぞ…と念じられた一言。


「ロロを一人にしたくないからな…今メモを渡して…」


「ちょっと待って…っ、それは違うよルルーシュ!!」


此処まで来たなら、この期に及んでまで共にしたいと我を張るほど子供地味てはいない。

ましてや一人。なんだそれは。


「普通はさ…ルルーシュとロロで行くんじゃないかい?」


「はっ…駆け引き上手かと思えばお得意の天然だったのか?」


ロロを隙間無く抱き、ルルーシュはまたも満足そうに眉を寄せる。


「俺が、泣き顔の、ロロと、むざむざ下賎な民衆蔓延る下等な場所に連れていくかっ…馬鹿め」


「ば…馬鹿…っ」


ゼロとルルーシュの仮面を使い分けしない友人を目の当たりに、スザクは頭を悩ませた。

せめて、方向を統一して欲しいものだ。

極度の弟溺愛か、プライドか。

いや、前者かな?



仕方ない、行ってくるよ、と口を開こうとした時。


ルルーシュの御腕の中、弱々しい声が浸透した。


「兄さん…勝負は枢木卿の勝ちだよ……二人で行かなきゃ」


「ロロ?」


「僕は…もう大丈夫、だから」


手の甲で乱雑に目元を拭うと、定まらない表情でロロはふにゃりと微笑んだ。


唐突な申し出に、ルルーシュは拍子に僅かながら乗り遅れる。


「いや…しかしスザクには…」


ルルーシュの言葉を遮るように、ロロは首をありったけ左右に振った。


「勝負は勝負…受けたからにはちゃんと守らなきゃ」


「それ…は……」


筋の通された信念、だろうか。

着実に人間味を帯びている弟に感嘆が迫り上げると同時に、寂しさも感じられる。



「もう暗くなって来てるから、気をつけていってらっしゃい……それと」


ルルーシュの腕の戒めから抜けたロロは、胸の前、手を宛がい送りの挨拶を囁いた。

そしてスザクを見、小さく歯がみをしながら次の宣誓布告。


「枢木卿…っ!!次は絶対負けませんからね……じゃんけんっ!」


荒げた声音は直ぐに霧散、次の約束を取り繕り終えロロは一目散にクラブハウスへと踵を返した。



ロロから…次の約束。

次…。


ロロからの約束に、スザクへと予想以上の喜びをもたらした。


「次……か…」



例え数歩だろうと、ロロと近付けた事にスザクの暗かった感情が晴れていく。


しかしつかの間、絶望に苛まれたルルーシュの瞳と相対した。
嫌な予感。


「さあ…スザク、一緒に買い出し行こうか…?」


様々な怒りが汲み取ってとれる紫色。


「あ、うん…そうだね」


そそくさと先陣を行くルルーシュを追い掛ける。



「スザク…お前には荷物持ちの大役を任せよう。調度良かった、備蓄品を買い溜めておきたくてな」


スザクへ振り返りもせず、口早にどうやら頼み事を告げられる。

「え…でも今日は早く買って早く帰る方が……買い溜めなんて、今度ロロと…」


ロロの為にも早く帰るのが、と言いかけたと同時に罵声が飛んできた。


「愚か者っ!!ロロの華奢な両手に重い物を持たせられるか!!!…こうなったのも何かの縁、せいぜい手伝って貰うぞスザク」


「愚か者……」


「何か言ったか?」


「いや…別に…」



過度にロロに手を出すのは控えようかな…お兄さん、鬼の様だし…。


スザクはこれから持たされるだろう重量に肩を落としつつ、短く溜息をついた。




絶対無言パーティー





温ーいエロ注意!

せっかくなので引っ張ってきてみました。









「絶対無言パーティーよっ!!!」


ミレイは声も高々、宣言する。



アッシュフォード学園の名物、会長の言うところモラトリアム。


生徒会の一同は、否応なしに参加させられるのであった。








絶対無言パーティー







絶対無言パーティー開催日。



「いーい?私達は絶対に、どんな手を使っても、笑っちゃダメよ?」


「どんな手って……パーティーじゃないんですか会長?」


「なにを言ってるの副会長っ!!パーティーだからこそじゃない!!」



ルルーシュは頭を悩ませる。

会長には会長の計算があるのだろうがな…しかしそれとこれは違う。

赤の他人に、身体を触られ、擽れるなんて。


百歩譲って自分自身が受けるのなら良いとしよう。




問題はロロだ。


俺のロロが惰弱な輩に身体を蹂躙されるなんて、以っての外だ。

ロロ自身は自覚無いのだろうが、俺…兄は知ってるぞ。


一部の集団から人気があると…。


ルルーシュの穏和には程遠い表情。

肝心の本人は、ぼんやりとロケットを見つめている。

パーティーに関して、興味が無いのだろう。




「ロロ、ちょっといいか?」


「兄さん、どうかしたの?」



ロケットをぎゅっ、と握り締めルルーシュを見上げるロロ。

僅かに首を傾げ、ふんわりと笑う。

柔らかそうな栗色が、緩やかに傾きへ流れた。

線の細い、華奢な体躯は中性的な魅力を醸し出す。



こんな儚い存在を、絶対無言パーティーなんぞに晒す訳にはいかない。

全力で阻止だ…!!



「パーティー、抜け出さないか?」


「パーティーを?」


「どうせまた無理難題を押し付けられるんだ、今日位避けたって罰は無いだろう?」


兄の言葉を、ロロは特に疑問視する事なく、こくりと首を下に下げた。


「兄さんがそう言うなら、僕は構わないよ」


「そうか、なら屋上にでも…」


しかし、その行動も敢なく断念される。


「ふーくーかーいーちょぉーう?」


「……会長、なんですか?」


会長、ミレイは妙に間延びする声を発しながら、ルルーシュの肩を拘束する。


「……会長、なんですか?、じゃないわよっ!!!生徒会主催なのに役員が出ないなんて許される?許されないわよね、早くロロを連れてクラブハウスに行きなさぁーいっ!!!!他の皆はもう行ってるのよ!!!!」


早口にまくし立て、ミレイはルルーシュを突き飛ばす。


「それとルルーシュ、もしもパーティーに参加しなかったら…」


生徒会室を後にしようとする二人に向かって、ミレイは本当に綺麗に悪人顔で、言葉を投げた。

「次の愉しーい企画…ロロを主役にしてあげるからね?」



「ロロ、クラブハウスまで急ぐか」


「え…兄さん屋上は…」


「いいから行くぞ」


「うん……わかった…」



廊下へと姿を消した二人。

準備に忙しい役員達は早々と会場に居るはずだ。


ミレイは独り残された生徒会室で、端正に作られた顔を幸せそうに綻ばせる。


「これ…これなのよね…企画前の昂揚感…もう最高っ!!」


誰も居ない空間で、拳を上へ突き上げた。


「さぁーってさて、生徒会諸君らは笑わないかしらね…絶対無言で居られるかしら…ふふふっ……ミレイさんは楽しみですよーってね!!」


軽い足取りでミレイ・アッシュフォードはクラブハウスを目指した。







渡り廊下。


ルルーシュは呆れたというか疲れたというか、複雑な溜息を零して肩を落とす。

会長のイベントに掛ける労力には称賛に当たるよ。


まぁ、パーティー自体は長くないだろうし…それにロロを取り巻く輩はリヴァルに追っ掛け回させれば事足りるだろう。

何よりもロロには釘を刺しておかなきゃな。



「ロロ、絶対無言パーティーでは絶対に平静を保つんだぞ?」


「大丈夫、僕は笑わないから…ね?」


上目使いにロロはルルーシュを見上げる。


「そうか、約束だからな?」


「うんっ、約束…っ」



気張ら無くても大丈夫だろう。

ルルーシュはそう結論を出す。



その結論が見事に打ち砕かれるのに時間は掛からなかった。








「きゃーっロロ君の髪の毛ふわふわぁ〜っ!!」


「ひゃっ…はっ……ふふっ…や、だめっ…!!」


「ロロ君はどこが弱いのかなぁ〜?お姉さんが見付けてあげるっ!!」


「ロロくんって耳とか弱い?」


「…やだっ……っ…あははっ…あっ…い、いけないっ…!!」







ルルーシュは傍からでも解るほどに機嫌が悪かった。

それ故、群がりにくる女子生徒は居ない。

触らぬ神に祟り無し、よく言ったものだ。





「ロロって…意外と人気だったんだね」


「…………」


人波から逃れたシャーリーは、柱の影で身を潜めていたルルーシュの横にやって来た。


「しかも…年上のお姉さんとかばっかり」




会長の話だと、このパーティーは任意参加らしいのだ。

生徒会役員と一般生徒の交流が目的らしい。


つまり、純粋に企画参加した人もいれば、疚しい感情を抱いて参加した人もいる訳だ。



「シャーリー…教えてくれ……」


「…………ルル?」


額を押さえ、理性をぎりぎりで保ってるだろうルルーシュの表情。


シャーリーは苦笑気味に眉を寄せる。



「何故ロロがあんなに囲まれている…?」


「あー……」




ロロの周辺。


男子生徒が羨む、そんな女子生徒達が取り囲み、ロロを撫で回す様に悪戯する。


パーティーに飽きた面々は、クラブハウスを後にするがロロの辺りは今だ黄色い声に満ちている。


平静を保つと約束を口にしたロロも、控えめに笑い声を零し、艶を帯びた瞳を揺らしながら悪戯を受け続けていた。



「ロロって、箱入りって感じがするのよね…ルルが大事そうにしてるし…なによりロロがルルの後をくっついてるから、交流しづらいのよ」


恋する乙女シャーリー・フィネット。

つらつらと憶測を吐露していく。


「結構ロロ狙ってる人って多いのよ?麗しのランペルージ兄弟とかって。守ってあげたくなる弟に甘えたくなる兄、みたいな?」



「なんだそれは……」


シャーリーの言葉にルルーシュの眉間はシワを増す。



「えぇー……だって事実だもん仕方ないよー」




柱に頭を凭れ、シャーリーはつまらなさそうに口を尖らせる。



「あっ!!シャーリーさんっ絶対無言ですよーっ!!!!」


「うわっ!!見付かった!!!そしたらまたあとでねルルっ!!」


シャーリー狙いの数人が、指を差しながら走り寄る。


長い髪を振り乱しながら、速度もそこそこに恋する乙女は去っていった。




「ねーロロ君?触って欲しいところはあるー?」


「な…ないです…っ……ぁ…」


「涙目が可愛いーっ!!」


「ひぇっ………ぅ…あはははっ…もう…やめて…くらっ…さ」


「いーやーよーぅ!!まだまだ遊びましょ?」





「身の程知らずの愚か者共…俺のロロに…」


ルルーシュの我慢が頂点に達した。

その目は獲物を狩る肉食獣を見違う。


いかにしてロロを解放するか、それが最重要項目だ。



「連れて逃げるんじゃパーティーを失敗に終わらせてしまう…かと言ってロロにギアスを…駄目だ、コンタクトが取れない…やはりパーティー自体を潰さなくては…」


ルルーシュは自慢の思考回路から、最善を選び抜く。



待ってろ、今助けてやる…!!!





「ほん、とに…やっ…めて……ぅ」


「だーめ!!滅多にないんだからロロ君に触れる機会!!」


瞬間。

クラブハウス内に警報が鳴り響いた。




甲高く伸びる音。

急な情報に総毛立った人々は、驚きを悲鳴に変え慌てふためく。



「皆、落ち着いてっ!!!!速やかに避難してっ」


ミレイは声を張り上げる。流石、というべきか。


「なにっ?いやっちょっと待って!!」


「……痛っ」


ロロを取り巻く集団は、警報に導かれる如く我先にと逃げていった。

その拍子に体躯を投げ出される。

やっと自由を得たロロ。

しかし現状が現状なだけに、戸惑う。

軽く突き飛ばされ痛む肩を抱きながら、今や取り残されたクラブハウス内をぐるりと見渡す。

立ち込める紫煙。


不安に困惑した脳に、耳からの伝達が届いた。

よく馴染んだ、兄の声。



「ロロっ!!」


「兄さ…ん?」


「良かった、ロロ…無事か?」


「うん…!!それより兄さん…警報…」


ルルーシュはロロの身体を抱きしめながら、あぁ、と相槌。


「着色ガスだよ。化学室から持ってきた。クラブハウスのセキュリティは最新型だからな…ちょっとした事でも作動するのを逆手にとったんだ」


これが最善。

被害者は出ない、後腐れも無い、パーティーは中止。


「やっぱり…僕の兄さんは凄いや」


ロロの笑顔。


しかしルルーシュは行き場の無い独占欲を持て余す。笑顔一つでは満たされない。


「ロロ…ちょっとついて来てくれないか?」






言われる侭、連れて来られた場所。


「お風呂…?」


ロロは疑問を口に出す。


「此処には煙が入ってくる事も無いからな」


そう話ながらルルーシュは、ロロを半ば強引に風呂場のタイルに座らせた。


「ロロ…お前は笑わないって言ったよな…約束しただろう?」


「…っ」


きゅっと眉が下がるロロ。


「あんな女達に身体を触られて…俺がどんな気持ちだったか解るか?」


するり、と手が伸びる。

這う様に流れるルルーシュの指先。

それはロロの首を捕えた。


「に…さん?」


不慣れな感触に目を細め、身体を強張らせる。


「ロロがあんなに敏感なんてな」


妖しく笑うルルーシュ。

さぁ、どうお仕置きしようか?




「ひぁ…っ!?」


「耳」


耳に生暖かい、ぬめりを帯びた刺激。


「額」


「ふ……ぁっ」


ルルーシュの指先が短い前髪を搦め捕る。そのむず痒さに加え、額を唇に独占される。


ちゅ、と音をたてる柔らかなキスは額から目尻へかけて移動。


涙を含ませたロロの瞳。


目尻へ触れるだけのキスを何度も降らす。


「にい…さ、ん……擽ったい…よ…っ」


ルルーシュの胸に手を沿え、ロロは顔に与えられる愛情を一心に受け留める。


「この俺を蔑ろにしたんだ、我慢出来るだろ?」


綺麗に不敵に微笑し、ルルーシュの愛撫は速度を増す。



ロロの弱い部分も、儚い部分も、美しい部分も。

知っているのは俺だけだ。




顔から首筋、胸元と段々とルルーシュの頭が下へ動く。


「あっ……にいさ……ん…っ」




お前は、ロロは俺のモノだ。

幼い意地に似た独占欲。

伝われと言わんばかりに印を施していく。



「ひっ……ああぅ…んん…」


身体中を口付けられ、ロロは力無く震える。


首筋に浮かぶ赤い印。

ルルーシュは印を舌先でなぞった。


自分が付けた証。

その事実にどうしようない悦で心を満たす。


幾度とない愛撫を、ロロの弱点に攻め立てる。


「大丈夫かロロ?」


「…な、に……っ?」


意地悪く尋ねれば、快楽に弱り切った表情をルルーシュへ向け、吐息混じりに言葉を吐く。


「お前のそんな顔…誰にも見せたくないな…」


涙で濡れ、頬は赤に染まる。

控えめに繰り返される呼吸は、中性的では表せない淫靡を感じさせる。


「にいさっ……も…苦し…」


制服の下の白い肌を惜しみ無くちらつかせ、ロロは懇願を称えた眼差しでルルーシュ見る。


「ロロはもう限界か?まだ触ってもいないんだがな」


「そん、な…いじわる…するから…っ」


「いじわる?…じゃあロロはいじわるされて感じてるんだな?」


「…ひゃあ!!」


ルルーシュは器用にロロのベルトを緩め、ファスナーを下げた。

「こんなにして、ロロにはお仕置きが必要だな」


ロロの勃ち上がりを根本から握り緩やかに刺激を与える。

染み出す液が潤滑に、ルルーシュは手の平は上下させた。


「あぁっ、や……にいさっ……はっ…んんっ!!」


身体の軸に突き刺さる快楽。

ロロは肩を震わせ、恥ずかし気に声を漏らす。


「やぅっ…ああんっ…も…でる…っ…でちゃ…」


「もう限界か?」


先端を指の腹で擦り、快感に蝕まれた最愛の弟を見つめる。


ロロの昂ぶりをルルーシュは絶妙な手つきで弄ぶ。

とまらなく溢れる液は淫猥な音を大きくさせた。


「…にいさっ…も…挿れて、欲し…い」


腕を広げるロロ。ルルーシュを求める合図。

熱っぽい視線を向けて。


「おね…がい…っ」



「…ロロはおねだり上手だな」


ルルーシュを受け入れる為、ロロは白いシャツ一枚の姿になる。


「にい…さ…」



兄をじっと見つめるロロ。


「あんまり見つめられると照れるんだがな…」



やはりロロは可愛い、と思う。

可愛いという言葉よりも美しいが妥当か。


あんな低俗に与える訳にはいかないな。

ロロは俺の腕の中で…。




「やっぱり…兄さんは……かっこいいね…」



不意に伸びたロロの指先。

それは漆黒に艶めいた髪に触れる。


「はやく兄さんが欲しい…よ」


細い黒い髪束がふわりと乱れた。


「…ロロは我が儘だな」



慈愛に満ちたルルーシュの表情。

あぁ、愛しいな。



「お前はずるい…」

「ふ……んぅ………っ」


深いキス。


舌を絡め、お互いを感じる様に口付けあう。


このまま呼吸まで奪えたら、なんて幸せなんだろうな。

脳裏に過ぎる独占欲。

自分こそ我が儘だな。




唇を離し、軽くロロの頬を撫でる。


「少し我慢してくれ…」


自身の指先を舐め、行為の準備をする。

痛い思いをさせたくないから。



「ひぁっ!!」


ルルーシュの指が、ロロの内側へ侵入する。


解す為に、奥へ潜り進めた。


「指、増やすぞ…」


熱を持ったその場所は、指を逃がさないと言わんばかりに締め付ける。


ある一点を掠めた時、ロロの肩がビクリとはねた。


「やあっ!!やだ、そこ…やぁっ!!」


「ここ、か…」


にやりと妖しく微笑。

指の腹で、執拗にロロの敏感な内側を攻め立てる。



「あ、あぅっ!……にいさっ…もう…」


「ギブアップかロロ?」


「うーっ…」



そろそろ俺も限界だな…。

ルルーシュはロロから指を引き抜いた。


荒く息を吐き出すロロを横目にルルーシュは自身を押し当てる。

「ロロ…入れるぞ?」


「う、ん……早く…っ」


瞼にキスを一つ、それを合図、一気に突き上げた。


「あっああ!!…ひぁ、にいさっ…ん!!」


「ロロ…っ」


互いの脈が溶け合うような感覚。

背徳的なこの瞬間に目が眩む。



「あっ、だめ…ぅ…はっ…ああっ」


締め付ける内部を何度も、執拗に掻き乱す。


胸の突起を甘噛みすれば、反応は一層高くなる。


「にい…さ……気持ち、い?」


涙と快楽に侵された、ロロの表情。

僅かに微笑む瞳。


「そんな顔、他の奴に見せるな…ロロ?」


約束だ。

ロロの耳元で囁く。



「ひぁぁっ!!あぁ…うぁ」


ぐっ、深く繋がろうと突き上げる。


腹部に存在する絶対的な質量に浮かされ、ロロの声は段々と跳ね上がった。



「あ、やだ……に、いさん…ふっ!?」


「絶対無言パーティーだろ…?」



ルルーシュの手の平が、ロロの口を塞ぎ、嬌声を制す。


「ん…んんっ………うぅっ…」


手の平の下では、必死に声を押し止めるロロの姿。



その妖しさに、ルルーシュは更に渇望する。




「ふぅっ……んっ…ぅうっん」

ビクビクと、強張る身体。

そそり勃つモノが、ロロを限界だと告げる。


そっと手の平を外せば、熱っぽい吐息が帰ってくる。


「…愛してるロロ」


「僕…も、兄さん…」


絡み合う視線、感情。


「ひぁっ…にいさっあ、あぁっ…あっああぁぁ!!」


離れない様に、指先を合わせきつく握り締め合う。


腰を奥まで打ち付けた拍子に、掠めた秘部がロロを吐精に導く。

同時に収縮する内部。


「ロロ…っ


極度の締め付けに、ルルーシュも内側へ吐き出した。





俺は嫉妬深いんだ。

あんな、好奇心で集まった女にまで醜い感情を抱いて。


絶対無言…か。


普段表せない感情を、今日のパーティーに状じて皆ぶつけて居たのかもな。


俺も、この狂いそうになる胸の内は、誰に対しても絶対無言なのだろう。




求めて止まない、この感情は。







「…僕、兄さんが大好きだからね?」


白いシャツ姿のロロは、目を幸せそうに細め、ルルーシュにもたれ掛かる。


「ありがとう…ロロ」


質感の良い栗色の髪を指で抄いてやる。


「愛してるからな?」


ルルーシュの言葉。


ロロは浮かべた。屈託の無い笑顔を。


「うん…!!!」






なんて絶対無言パーティー捏造話。

卑猥としか聞こえ無くて書いた代物。

最初で最後の温ーいエロでした…



こっち向いてよ!












高く結み上げた桃色の髪や、常に怠そうな表情が特徴の少女、アーニャ。

身体の一部と言っても過言ではない、今日もそんな携帯と時を過ごす。






こっち向いてよ!







「ロロ…」

パシャ、と携帯独特のシャッター音鳴った。


それを発した現代文化は、机に座った少年に向けられている。


被写体となった少年の、表情がみるみる変化していくのは明らかに感じ取れた。怒ってる。


「……っ、いい加減に」


「その顔、記録」


パシャ、と鳴り響く。


「…………」


「どうしたの?」


可愛らしく小首を傾げ、無邪気に携帯を両手にしている。

そしてこれまた無邪気に話し出す。


僕は兄さんを待ってただけなのに!!

宿題教わりたくて、教室を待ち合わせ場所にしてて…それで。


「もういいです…っ!!」


アーニャに向かって吐き捨てる。
これ以上、記録されない為、腕をバリケードに机へ突っ伏した。


両腕に埋もれたロロ。

傍目には栗色の撥ねっ毛しか目に入らない。


「……ねぇ、ロロ?」


不可思議な行動をするロロへ、アーニャは瞳の色を変えずに喋り掛ける。


「シカト?」


少し面白く無い。

反応を示さないロロへ、舌打ち。



舌打ちが聞こえた。

写真なんて好きじゃないし、そもそもに、兄さん以外なんかと交流したくない。

ロロは閉鎖された空間、腕に包まれた暗闇で思案する。


このアーニャとかいう女…。
ラウンズか知らないが執拗に僕へ絡んでくる。

迷惑窮まりない訳で、おかげで兄さんとの時間を邪魔されて。

今日だって、わざわざ僕を捜しに来た様な空気が伺える。







ロロ、兄さん兄さんってつまらない…。

アーニャは訝し気に目を細める。
可愛いもの、不思議なものは全部記録。

だから不思議で可愛いロロは最近のお気に入り。

なのにロロは…つまらない。

ふうっ、と息を吐き、どうしたものかと考える。

すぐに行き着く結論。

なんだ…ロロって単純。



「ねぇ、ロロ」


「…………」


「…ロロつまんない、ルルーシュのとこ行く」


「えっ!?」



ほら、やっぱりね。

にやり、と不適に笑み、アーニャは教室から退散しようと歩きだす。



瞬間的に起こされたロロの上半身。

身体はわなわなと震えている。

あの女……僕の兄さんに…!!!!



机を全身で押し出し駆け足、ロロは力強くアーニャの手を握る。

「アールストレイム卿…っ、い…一緒にいたいです…」


勝った。

アーニャは口の端を吊り上げた。

「何故?ロロは私をシカトした…」


「なんでもしますから!!」


「ふーん…」


屈辱だけど…兄さんを撮られる位なら、僕は兄さんを護る!!



アーニャは握られた手をそのままに、ロロの座って居た席へ舞い戻る。

必然的に引きずられ、ロロも連れていかれる形


「アールストレイム卿…?」


「アーニャ」


至近距離。

緩急に欠けるアーニャの瞳がロロを捕らえる。


「アーニャって呼ばなきゃルルーシュ…」


「あ…アーニャ…これでいいでしょ!?」


「うん」


短い笑い。

ふわりと揺れる髪束。

アーニャはそのままロロへともたれ掛かる。


「疲れた、膝に座らせて」


「うん…って、え?」


ロロは耳を疑った。

なんて言った?

膝に座ら…せ、て?



再びアーニャを見てみれば、相も変わらず無表情。

そして決定打を口にする。


「早く、膝…座りたい」


「待ってアーニャ…それは……」


待て待て待て、頭の中で反復。


本来、今の現状にも納得していない訳で…。

兄さん、どうしよう…。


思考と涙腺が一致したのか、情けなくも眉が下がっていく。

しかしそんな猶予は認められないのか。


「ロロ、記録」


本日何度目かのシャッター音。


「…っ」


ロロの下がった眉が急速に吊り上がる。


胸に渦巻く、行き場の無い憤り。
早く解放されたい。

そう願った時だった。



「…電話」

アーニャはそう呟き、携帯を耳に押し当てる。


「ジノなに…………今から……うん、わかった」


短絡なやり取り。

アーニャは早々、通話を終了する。

そしてロロを見上げ言う。


「仕事…あるから」


「…………」


微妙な沈黙。

解放される、ロロは確実になったその単語をぼんやり片隅で消化する。



「ロロ、また明日」


沈黙を破ったのは最年少のラウンズ、アーニャ・アールストレイム。


また明日、そう言いながらロロの腰元に抱き縋る。


「………」


唐突に絶句。

予測不能、予想外な行動にロロは身体を強張らせる。読めない。



ふっと離れる人肌。


「またね」


そのままアーニャは振り向かず教室を後にした。



残されたロロは力無く膝を落とす。


もう嫌だよ、兄さん…!!









「あれっ…アーニャなんか良い事あった?」


「別に」


「なんだよ素っ気ないなー」


ジノはくるくると表情を変え、アーニャに話掛ける。

人懐っこさを感じさせる声音から、3の数字を背負ったラウンズだと、誰が信じられるか。



アーニャは黙々と今日の記録を整理、保存、そしてバックアップとせわしなく指を動かした。


記録とは良いもの。

曖昧なんて皆無、そして思い出よりも鮮明なのは確か。


「出来た」


決定キーに親指を押し付け、動作を終える。

満足。



横に振り返れば、ジノとスザク。
安易に想像のつくやり取りを繰り広げている。


「だからさ、アーニャの機嫌がいいなーって思って、頭を撫でようとしただけだってばスザク!!」


「年頃の女の子にそれはいけないよジノ」


「スザクだって撫でたいだろーアーニャをもふもふって!猫みたいに柔らかいんだぞきっと!!」


「猫!?」


同時に振り向く二つの顔。

あぁ、単純だなぁ。


「…二人に触られるのは、絶対イヤ」


「じゃ、誰ならいーんだよアーニャ?」


ジノはスザクの肩に腕を回し、当然の質問を投げかける。


「……内緒」


一言。


「うっ……ジノ苦し…」


「スザクっ、内緒だってさ!!」


歴然とした身長差にも関わらず、ジノはスザクへと体重をかけていく。








盛り上がる二人をそのまま、アーニャは携帯の画像フォルダを眺め始めた。


明日もまた、会いに行こう。

そしたらきっと、色んな記録が出来る。


ほんの少し、会うのが楽しみだ。

アーニャはゆっくり微笑んだ。








「ごめんロロ、遅くなった」


時間的に遅い為、薄暗い教室へ足を踏み入れる。


「兄さん!!!」


「…待たせたな」


ルルーシュへ飛び付く影。

優しく抱き留める。


「どうした…宿題が先だろ?」


ふわりと緩むルルーシュの瞳。

ロロは上目使いに見上げ、甘える。


「今は兄さんを補給したい…っ」


密着する互いの身体。


「全く…10分だけだからな?」


「うん!!」


首筋に触れるロロの頬。

ルルーシュは困った様に溜息。

幸せの溜息。


ロロは全身で感じる愛しい暖かさに目を伏せる。


「やっぱり…兄さんじゃなきゃ嫌だ…」


呟き。



「…なにか言ったか?」


「兄さんが好きだよって…言った」


表情見せずにロロの発言。

更に緩むルルーシュの瞳、感情。


「今更…俺も好きだ、愛してるロロ」


額に落とされた、触れるだけのキス。


その威力は絶大で、まるで蕩けてしまうんじゃないかと錯覚。

ロロからも、ルルーシュの頬へお返しにとキス。

大好きなんだ、本当に。



ふっと込み上げる愛しさと暖かさ、そして幸福感に二人は苦笑する。


「宿題はどの教科だ?」


「現代社会……」


「現代…だから新聞を見ろとあれほど」


「僕は兄さん以外の状況に興味無いの!!」


「お前って奴は…」




アーニャには困らされたけど、改めて兄さんが好きって認識出来たから良しとしよう。


きっと彼女も、誰かに甘えたいだけなんだ。


次に会ったら膝位、貸してあげよう。


ねぇ兄さん、僕も少しずつ人間らしくなれてるかな?




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譲渡は人間の特権





ライバルだもん









「…シャーリーさん、問題の本はどれですか?特徴とかなんでもいいですから」


シャーリーは可愛らしく小首を傾げる。


「うーん…料理の本は確かなのよね…、表紙がケーキなのっ」


ロロはもどかしさに苛々を膨らませた。


「ケーキが表紙じゃ解りません!!そんな表紙が何冊あると思ってるんですか!?」


「ま…待ってよロロっ、今思い出すから」


現在地、放課後の図書室。

地下に行こうと向かった先で、ロロはシャーリーに捕まった。否、捕まるしか無かった。

シャーリーが図書室で何かをしていたからだ。






ライバルだもん







5分前。


「あっ…ロロ!!ちょうどよかった、手伝って欲しいの!!」


「すみません、用事思い出しました」


足早にシャーリーから距離をとるロロ。


「待ってよロロっ!!ほんのちょっとだけだから!!ねっ?」


「…手を握らないで下さい」


搦め捕られた手の平。よっぽどの事なのか、加えられる力は強い。


「じゃあ離したら手伝ってくれる?」


「…………」


はい、って言わなきゃ面倒になりそうだな。

それにシャーリーさんが居なくならない限り地下には……。


ロロは一人結論をだし、今だ手を握る相手に言う。


「解りました…手短にお願いします」


その一言にシャーリーの表情が明るくなる。


「ありがとう!!」






そして今に至る。

シャーリーの話に寄れば、借りてきた料理本に、ルルーシュの隠し撮り写真を挟んだまま返却したのだという。

また面倒な事を…。

呆れに肩を落とすロロ。

しかし隠し撮り写真を放置しておく訳にもいかないし、なによりシャーリーをこの場から退けなければいけない。


唸り悩むシャーリーを横目に、ロロは手頃な本を引っ掻き回し該当しそうな本を探す。


「ケーキ…確かチョコレートなのよ」


「確かってなんですか」


ぱらぱらと書物のページをめくれば、現れるのは甘ったるさに溢れたスイーツの数々。


女の子だな…お菓子だなんて。


ロロはぼんやり考えて、手に収まった本を棚に戻す。


「で、シャーリーさん思い出しましたか…」


「きゃあああっ!!ロロ危ない!!!」


「わっ!?」


上空から落ちてくるシャーリー。

脚立を使って、上に手を掛けたらしい。

だがバランスでも崩したのか。

重力に逆らう事も無くロロへ華麗にダイブした。


「痛ったぁい…」


「シャ…リ…さ……苦しい…」


おまけにと言わんばかりに本も落ちてきた模様。

半ば惨事に見舞われた、放課後の図書室。


息苦しさに眉を寄せたロロの視線と、シャーリーの視線が至近距離で交わった。


「…あの、離れてください」


吐息が感じられる、お互いの距離。

ロロは僅かに顔を反らした。どうしていいか解らないから。


「ねぇ…ロロ」


シャーリーの鮮やかな髪筋が、ロロの首へ流れる様に落ちていく。

尋ねる様な声色。


「ホントは本も写真もとっくに見付かってるのって言ったらどうする?」


「へ…?」


「ロロと一緒に居たいから…嘘ついたの、なんて」


至近距離にある、表情。


「聞いてる?……ロロ」


「や…やめてください…っ」


ロロは反射的にシャーリーを突き飛ばす。

嘘?何を言ってる?僕と居たい…か、ら?


言葉の意味を理解し、じわじわと羞恥と驚きに頬を染めていく。


その様子をシャーリーは愉しそうに笑った。


「ロロ照れてるっ」


「なっ……なにが…」


「焦ってるロロ、可愛いっ!!」


再びロロを押し倒す。

そしてシャーリーはにっこりと微笑んだ。


「私、ロロってもっと冷たいと思ってたの。他人なんか、ルル以外に興味無いのかなって」


「そんな事…僕が誰にどう接しようが貴女には関係ない」


「関係無くは無いわ。私、ロロに冷たくされるなんて淋しい」


ロロは不思議そうに、そう話すシャーリーの顔を見上げた。


「シャーリーさん……」


シャーリーの指先が、ロロの頬に触れる。

しかし瞬間、その指先がぐにっと頬を摘みあげた。


「なーんて、どきっとした?少しはきゅーんときた?」



にっこり笑うシャーリー。

事態を把握したロロは、眉を吊り上げ涙目になる。


「ぼっ…ぼくれあひょばないれくらさいっ!!」


「何言ってるのかなぁ〜ロロ君は?」


「ひゃーりぃーひゃんなんかきやいです!!」


「ロぉ〜ロ?」


指先に力を込めれば、ロロは痛さに目を潤ませる。


その仕草が可愛いあまり、シャーリーの悪戯は止まらない。


「いいひゃれんに…しれっ…くらは…」


「ロロ?止めてほしいのならお願いしますは?」


にたり、と笑み。


「ひゃんれっれすかぁっ!?」


ただでさえ意味も解らない現状。


ロロは謝るものか、とギアスを使って脱走を謀る。


「やめてください、お姉ちゃん!!とか言ってほしいなぁ…」


「ぜっひゃっい言わないれすからね…!!」


それが最後。


ロロはギアスを使って逃げ出した。


あれ以上、屈辱を受けてたまるか!!


潤んだ目を袖で拭いながら、兄を探しにクラブハウスまで掛けていった。







「あれれ?…ロロ?」


体感時間を操作され、数瞬シャーリーは時から隔離された。



「もう………ロロったらぁ」


一人ぶつぶつ呟きながらシャーリーは落ちた書物の整頓に取り掛かる。


「ロロばっかりルルと一緒でずるいんだから…もうもうっ!!」


落ちた本を棚に戻し入れ、嘆息。


「ロロも意外と…男の子なんだよね」


そう口から零す。だがぷるぷると首を振り、気を立たす。


「私はルル一筋だもんっ!!だからロロはある意味ライバルっ!!!」


そんな放課後に終りを告げる如く、空は赤くなり、鐘が鳴った。



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あぁもう、気が狂う。





無知は道化で、貴方を想って









あぁ、そっか。

単純な事だったんだ。

兄さんにとって僕は所詮、駒だった訳で。


ナナリーが帰ってくれば僕は…ロロ・ランペルージは不要になる訳で。


そっかそっか、あぁそっか。

解ってたよ、僕はどうせ偽りだしね。






無知は道化で、貴方を想って







「兄さん」


沈黙。


「兄さんってば」


沈黙。


「ねぇ、兄さん聞こえてる?」


瞬間。ルルーシュの視線が、指先が、ロロの首筋に爪を立てた。


「なぁ…教えてくれ……何故お前が此処に居る?」


ぐっ、と息苦しくなるにつれ指先の力が増していく。

憎しみの力って、こんなのなんだ。

ロロはひゅっと喉を鳴らす。


「に…さんの…おと…と…だから」


「そんなことを聞いてるんじゃない!!!」


首筋が解放されたと思ったら、次は顔面を叩かれた。

そんなことって言ったって、事実だもの。変な兄さん。


「じゃあ、何が聞きたいの?」


ロロは無機質に叩かれた部分を撫でる。

痛さ故に、というよりは、何故叩かれたのだろう、という仕草。


ルルーシュは望んでいないロロの態度に苛々を沸々とさせていた。


「じゃあ解りやすく言ってやろう…何故ナナリーが居ない?何故お前が居る?解らない訳じゃないよな?」


部屋にはただ静寂が漂う。


ロロはうーんと悩んだ揚句、当たり前の返答をする。


「ナナリーはフレイヤに巻き込まれて死んじゃった。だから居ない。僕は兄さんを助ける為にナイトメアに乗っていた、だから助かった。それだけだよ、兄さん」


「それだけとは何だっ!!」


ロロの胸倉を掴み、床に投げ飛ばす。

飛ばされた本人は衝撃に顔を歪ませた。


ルルーシュは嫌がる素振りを見せないロロに対して、携帯、宝物であろうロケットの付属した物を顔面目掛けて投げ付けた。


「うぁ…っ」


ガチャン、と携帯が床に着地。

ロケットは二つに開かれ、場に不似合いなオルゴールを流す。

ロロはギアスを使う瞳、右目を押さえていた。

ルルーシュの投げた携帯が直撃したからだ。


「何故お前が生きている!?ナナリーはどうした!?この役立たずが…貴様なんか死んでしまえばいい!!シャーリーも殺し、ナナリーをも見捨て、自分は悠々と生還だ!?ふざけるのも大概にしろ!!!」


吐き捨てる様に紡ぎだされるルルーシュの言葉。


もはや彼にロロに対する情は、ない。


「で…も、兄さん…僕はこれからも力になるよ…それにシャーリーやナナリーよりも僕の方が役に立つし…」


その発言に、ルルーシュは怒りを更に加速する。


「役に立つだと…?ナナリーすら取り返せない愚図が?笑わせるな」


ナナリー、ナナリー、ナナリー、ナナリー


そればっかりだね。兄さん。


「返せ…ナナリーを返してくれ!!!この空白の1年、話すらしていないんだぞ!!!何故…何故だぁぁぁっ!!!!」


発狂したように、苦悩に表情を歪ませて叫ぶルルーシュ。


ロロはぼんやりと、冷えた感情と覚めた視線で愛しい兄を見る。


ナナリーなんだね、シャーリーなんだね。

もう、僕の名前すら読んでくれ無いんだね。


赤が滴る右目。出血しているらしい。

押さえていた右手は自身の赤に濡れている。


ロロはぼんやり考え込む。


なんか…もう面倒になっちゃったな。

どれだけ僕が思っても、頑張っても、結局は偽りでしかないのだから。


「どうして…ナナリーっ!!!」


ねぇ兄さん。僕、思うんだ。

兄さんがブリタニア相手に喧嘩なんかしなかったら、誰も悲しまなかったと。

スザクだって親友のままだった。

平穏な毎日だって過ごせた。

ナナリーだって死ななかった。

何より僕だって、切なさを知る事も無かった。


全部ぜーんぶ兄さんの招いた事なんだよ?知ってた?




ロロはブリタニアの装甲服から、ナイフを取り出した。

慣れた手つきで刃先を取り出す。

重たい装甲服も脱衣する。


「兄さん……いや、ルルーシュ…」


悲痛に苦しむルルーシュへ向かってロロは歩む。


「今までありがとうございました。家族ごっこ、とても楽しかったです」


そう吐露するロロの表情は、迷子の子供の様だった。

瞳から流れる赤は、涙の如く滴った。


「お前…なにを…」


「なにもしませんよ、ルルーシュには」


今やロロとルルーシュの距離は、お互いの暖かさを感じる程。


「僕は任務を失敗しました、C.C.すら確保出来ず、ルルーシュの記憶の復活有無も曖昧に、そして兄さんから受けた任務さえこなせなかった」


これは失態だ。ロロは苦笑する。


「だから僕はこの辺で終りにしようと思います」


振りかざすナイフ。腕いっぱい高くあげた。


「僕が殺しちゃった人、シャーリーさん、ごめんなさい。ナナリー助けられなくてごめんね。兄さんありがとう、ごめんね、さようなら」


「お前…っ……!!」


ルルーシュの呼び声。



「バイバイ…っ」


肉を突き刔る音。吹き飛ぶ赤。

ロロは躊躇う事なく、自身の心臓にナイフを立てた。



これで良いんだ。全部解決。

シャーリーさんやナナリーへの贖罪。

朝比奈さんにも怪しまれてたし。

何より、僕が生きていたらまた、兄さんを悲しませてしまいそう。


噴き出す血潮。床に溜まりを作っていく。


僕は欠陥品。

僕は今ここで命が尽きるのを待つ。


まぁ、それもすぐかな?こんなに痛いし苦しいし。


ルルーシュ…兄さんがなんか叫んでる。

あぁ、聞こえないや。

姿も見えないし。

「生まれ…て……ごめ…ん…なさ…」


水滴に潤むロロの瞳。

右目は赤みも帯びて、痛々しい。



誰かに記憶されて死ねるなら本望。


兄さん、大好きだよ。

この感情に偽りは無い。

少しは兄さん、後悔してくれるかな?


僕が死んじゃう事を。


まぁ、それも叶わないのかな?


偽りだから、さ。






ロロだった者。


ルルーシュはそれを見て、笑い声をあげた。泣きながら。


「ははっ…はっ…ロロまでも……僕は傍に居る…そう言ったなのにな…」


お兄様!!

兄さん!!


ナナリーとロロ。

実の妹、偽りの弟。

この二つの存在がいとも簡単に奪われた。


馬鹿だな、ロロの奴。

死んで償うなんて、逃げ出して。


なぁ、教えてくれよ家族達。


俺は…兄は………どうしたらいい?


兄不孝だお前達は。

迷惑ばかりかけて…そして死んでいって。


ルルーシュは息づく事を忘れたロロの亡き殻を抱きしめた。


「なんて俺は弱いんだろうな…ロロ。…ナナリーにも謝っといてくれないか?すまなかったって」



いつも、いつも遅いんだ、俺は。





兄さん、兄さん。

僕には愛が足りなかったんだ。

貰うだけに甘えて、与える事を知らなくて。

貪欲で、子供で。


生まれ変わったらまた兄さんの弟になりたいな。

今度は貰うだけに甘えないで、淋しがり屋の兄さんに与えるんだ。いっぱいの愛情を。


だから神様?居るのだったらお願いします。


僕がまた、ロロ・ランペルージになれるように。





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知っていたから残酷になれた。

兄さんが愛しいから、僕は何もかも貴方に身を染めた。


失ってから気付いた、慟哭にも似た、この…。


僕は貴方を想って逝ってやる。








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