俺はあの鉄の塊、嫌いなんだよねぇ…それを所持してるヤツも
キライなんだよねぇ〜…
イケ好かないヤツの捜索は色々と楽しいが、何故か退屈で…三条河原の橋の袂で溜め息をついてしまう
「おんしも暇よのぉ」
「…」
背後から目当てのヤツが現れた。軽く睨むが怯まない。怯むどころかヘラヘラと笑っている…
「アンタを捜してたんですよ…局長の命令でね」
「ほぉ…ワシに用でもあるがか?」
「…さぁ?居場所を確認しろとだけ、言われましてねぇ」
「ワシは神出鬼没じゃき。近藤さんをヤキモキさせてしもうとるんじゃろ」
イカンなぁ〜と癖毛を撫でる才谷さんを、冷めた眼で見つめていた
「とりあえずアンタを確認出来たんで、俺はこれで…」
「ちくっとまちぃや」
「…?」
視界から外した背後から肩を掴まれた。珍しくこの男から呼び止められて、些か眉を寄せながら振り返る。すると俺の好かない鉄の塊…リボルバー式の拳銃を握りながら、才谷さんはニッコリと微笑んでいた
何とも不気味で何とも楽しげな表情。一体何を考えているんだろう?ほんの少しだけ興味が湧いた。そんな俺の心を読んだのか、ヤツは懐から何かを取り出しながら話し始めた
「おんしみたいなヤツにはもってこいの遊びじゃと思うたが…」
一つの弾丸。それを六つ開いている回転式の弾倉の一カ所に埋め込む。そして
ジャキンッ…ジャキーーーッッ…
発砲可能にした後、掌で思いきり弾倉を回した。俺は回転するそれをただ黙って凝視していた
「これで準備完了じゃ。コレはの…『ろしあんるーれっと』ちゅうもんで交互に一発ずつ、自分のコメカミに銃口を向けて打つっちゅう…危険な遊びじゃ。どうじゃ?やってみとぉせ」
「……」
俺は差し出された拳銃を受け取った。刀とは違う鉄の塊の質量を右手で探る
味のナイ重さ。右手からは何も伝わってこない。予想通りの手応え…興醒めした
しかし、それだけで降りるのも癪にさわる。俺は何の躊躇もせずに、自分のコメカミに銃口を当て引き金をひいた
カチッ…
渇いた音が耳元に大きく響いた。その一部始終を才谷さんは口角を上げたまま眺めていた
「さっすが大石君じゃのぅ〜。全く怯まんぜよ」
納得の表情でパンパンッと拍手をした。次はワシじゃ!と俺の手元から拳銃をブン取り、素早い動きでコメカミに銃口を当てる
…カチッ
「ひゅ〜…命拾いしよったわっ。……ほれっ、次はおんしじゃ」
「…」
汗を拭うフリをする才谷さんを冷ややかに睨んだ。そんな俺に構わず鉄の塊を、面白そうに差し出してくる。俺は鼻から溜め息を吐き出した
「才谷さん…コレの何処が面白いんだい?」
「?」
「命のやり取りには違いないんだけどねぇ…」
「お気に召さんかったか…?」
「えぇ…実にツマラナかったですねぇ」
言葉とは裏腹な笑みを才谷さんに投げかけ、俺は背中を向けて歩き出す
「今度はもっと楽しめる遊びをしましょうよ…細長くて妖しい輝きを放つ鉄の塊で、ねぇ」
「………」
ふと振り向き思った事を口にする。才谷さんは俺と同じ顔をして、ジッと睨みつけてくる…俺は薄目で返しながら、その場を去った
やっぱりアンタの事キライだねぇ。いつかは俺の糧になってもらおうかなぁ……
後談↓
「まっこと堅物じゃのぅ〜」
微笑みながら拳銃を回し、大石を見送る
「剣に魅入られたモンは皆、あぁなんやか…」
哀れみを感じた才谷なのであった
終