アダムへ、お姉ちゃんは君をいつまでも愛してます。




大脱走を体験したアダムは、その後一つの結論に至ったらしい。“やっぱり我が家が1番”
何故分かるのか。その理由は、アダムがおしっこをしたいと玄関でばあちゃんを見詰めていたらしく、ばあちゃんは庭だけよと庭に出していたらしい。
洗濯物をついでに取り入れ、ばあちゃんは部屋に入ったという。しばらくして、ばあちゃんは気が付いた。「あ!アダム入れてない!」
急いで玄関を開けると、アダムは叱られて玄関先に出された子供の様に玄関に背を向け、少し寂しそうに座っていた。私はこの時、二階で勉強をしていたのだがアダムが急いで私のところに泣き付いて着たのを覚えている。

この頃、私の家は躾が厳しかった。と言っても、じいちゃんとばあちゃんが怖い人達だった。
じいちゃんは、気の短い人で更に酒が入ると手を上げたり、物が飛んできたりしていた。ばあちゃんもまた、気が短い。下手すると、刃物を持ち出す事もあった。
それ故に、私は良く泣いていた。二階に上がる階段の下で、声を殺して泣いていた。すると、アダムは必ず私の横に座っていた。たまに、ちらっと横目で私を確認しながら。リビングから誰が呼ぼうと、私の側にピッタリ寄り添っていてくれた。私が怒られてる時も、アダムは必死に吠えて止めようとする。振り上げられた手に、自分も恐怖しているのにそれでも必死に止めようとする。

アダムは、私の頼りない騎士といつの間にか呼ばれていた。






つづく