書こう書こうと思っていたけれど、どうも言葉に成らず…
でも哀しい話は日付が変わる前に致しましょう。



先月23日、大蔵流狂言師、山本則直さん(71)が肝不全で他界されたそうです。

恐らく一般的な知名度はそこまで高くは無いでしょうから(狂言師という職業自体が)、インターネット上では小さく掲載されているのみでしたが、私はガツンと殴られたようなショックを受けました。
私は学生で全くの素人ながら、和泉流の狂言の自演をしていることもあり、流派は違えど、山本家の狂言の質実剛健な芸風が大好きで、よく拝見しています。
なので、則直さんのことも度々拝見していました。今年に入ってからも何度か。その中で、昨年の秋のとある公演のことが忘れられません。『萩大名』のシテ大名を則直さんは演じられていましたが、公演の後、いつものように東次郎さんがお話をされた中で、「今回はちょっと則直の体調が悪かったから、(萩)大名をやってもらった」と仰有っていました。私はその時は「体調悪いから萩てwwさすが山本家…」と驚いたのですが(だって大名めっちゃチャーミングで素敵だったんです)、あれから時たま則直さんの体調が優れないという話をどこかで耳にする度、この話のことを思い出しました。
能舞台は、見る席にもよりますが、演者がより近くに見える空間です。舞台も客席もさして広くはないから、空間を共有する密度が上がる。だから、写真や文章ではなく、目の前で、ついこの前まで、身体を動かし声を発して、狂言を演じていた方が亡くなるのは、愕然とする喪失感です。