愛 憎

「オレさ、ズゲズゲ言い過ぎちゃってんのかね?
なんでこうも人に嫌われんのかね?」

職場の上司がそう尋ねてきた。





他のヤツは知らないけど、オレが嫌ってる理由なら教えてあげれますよ。

まず、その質問自体、デリカシーないにも程ありますよね…

とは言わず、

「そうすか? 考え過ぎじゃないっすか」

と軽く流した。





「そう思う?」





まさか……思わねえよ。





「まあ…いいんだけどさ、ガミガミ言って嫌われんのがオレの仕事みたいなもんだしさ」





いや…アンタの仕事は営業で、ガミガミ言われんのが仕事だろ。

得意先にイビられた腹いせに、横でグダグダ言われんのは邪魔なんすけど……





「キミなんか外面いいからなあ」





おい……外面いいは誉めてねえだろ。

オレどんだけ腹黒いヤツって思われてんだよ。





「ほんとはさ、キミみたいに口にも顔にも出さないタイプのほうが、叩かれ強いんだよなあ。オレなんか、こう見えて結構小さいこと気にすんのよ」





………なんだ?

その決めつけ。

言いたいことバンバン吐き出しちまったほうが、ストレス溜まらねえに決まってるだろ。

それよかうるさい。

マジ邪魔。

お願いだから、どっか行って。





「キミさ、あんま気にするほうじゃないでしょ?
最近の人は皆そうだけど、周りとか気にせず我が道を行くタイプだよね?」





もお〜…仕方ねえな。


「そんなことないっすよ。でも、人に嫌われてもそんな気にならないかもです。
オレ、嫌いな人間はとことんダメなんで、だから相手に嫌われても仕方ないですよ」





「キミが?!」

上司はわざとらしく驚いて言った。

「やっぱり嫌いな人間とかいるの?

そりゃいるよなあ。

でもさ、若いうちはいいよ。

オレみたいにさ、後数年もすりゃ退職って時になって、周りは敵だらけ、鬱陶しいから早くどっかに消えてくれって思われてんのはツラいぜ」





コイツ……怖ぇなってゾクッと感じた途端、

ちょっぴりだが……この狸オヤジ、それほど嫌いじゃないかもって思った。

思ったけど……早くどっか消えてくれ←