話題:読書



田辺聖子は多分初めて読む様な…

これ三部作なんですね
そしてこれが第三部…。ということはもしや、この本の感想を書くと必然的に一部二部のネタバレになったりして

一応ネタバレ嫌いな人は注意した方がいいかもです






結婚という刑務所から「出所」した乃里子はピッカピカの35歳。仕事も軌道に乗り、改めて一人暮らしの楽しさを知り、幸せな日々を送っています。

…というわりに、何かにつけて元夫の剛の名が出てきます。こんな事は剛といた時には出来なかったとかこれを見たら剛はきっとこう言うとか、そんなの。

本当に幸せなら、剛なんか引き合いに出さずに幸せにどっぷり浸かり込めばいいのでは?と思いながら読みました。

ほんとは剛と別れて一人になったのが寂しいのではないかな?などと思ったり。

でも単純に寂しいというのとは違うみたいですね。

乃里子と剛は夫婦だと距離が近すぎる、友達くらいが丁度良いといった関係。

相手とそんな距離感であること、私だったら乃里子の様にはすんなり認められないかもしれません。あちこち粗を探してむりくりに嫌な奴だった事にして、嫌い嫌いと心の中で憎みまくる…というか、憎みごっこをするかも。

乃里子と剛が偶然再会して、夫婦漫才みたいにする会話。あの雰囲気。お互い表面的には昔の良かった頃の様に軽口叩いているのに、どうしてもあるラインを踏み越える事が出来ないでいる、という雰囲気が、ちょっぴり切なくて良かったです。

あとこの本には素敵な比喩が多くありました。

特に芽利の老け方を「象牙が静かに曇りを帯びて飴色になるように」という。それがお気に入りです

登場人物が皆とても魅力的です。特に剛は、言うことや考え方がすごく古いタイプの亭主関白ぶりですが、乃里子との掛け合いの場面では実にいい男に見えました。

三部作の残り二つも読みたいです