同級生の杉山が死んだ。
杉山の遺体と一緒に焼いたという詩集から出てきたらしい金属製のしおりには、“S.FUCHITA”と彫ってあり、それを見た杉山の父親が淵田に届けに来るのだが、そのしおりに見覚えは無かった。
たいそう気持ちが悪かったのだが、父親に頼まれそのしおりを貰った淵田は、少しずつ杉山の事件の真相に迫りつつあって…。
著者
森博嗣
発行者 株式会社角川グループパブリッシング
ISBN 978-4-04-873816-3
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
貰った事すらすっかり忘れていた杉山からの手紙の話を、同じ物象部仲間の関根と姫野が思い出し、淵田は家へ帰るとすぐに杉山から貰った手紙を姫野と開封する。
山岸小夜子と姫野が関わらないように忠告してほしいという内容の手紙を読んだ二人は、姫野の元彼女の小夜子が死んでいる事を知る。
姫野が調べたところ、小夜子には妹が居る事が分かり、二人で会いに行く。
妹の証言で、杉山と小夜子がピアノ教室で一緒だった事を突き止めた。
物象部OB会に行く三人は、そこでピアノが上手くて東京の音大に通っていたという白木先輩から、杉山の話を聞く。
杉山はやはり自殺で、杉山の父親が高校の卒業生らしく、高校で音楽の講師をしていたピアノ教室の先生と知り合いだったという情報しか聞き出せなかった。
姫野の彼女に会わせられた淵田は、彼女が淵田が転校する前の小学校で同じクラスだったと聞くが、全く思い出せなかった淵田は、アルバムをめくる。
するとそこには、杉山が写っていたのだ。
テスト期間で学校が早く終わるのを利用して、二人はピアノ教室を探す。個人経営らしく、温室付きの立派な屋敷に通された淵田達は、温室でしおりと似た金属板を見つけた。
しおり―――もといプレートの事を直接ピアノ教師に聞いてみようと考えた淵田は、一人でピアノ教室へ向かうが、主人は居らず、奥さんと杉山の事を話す。
温室にあるプレートの写真を撮っていた淵田は、その隙に奥さんが殺された事を知る。
幼い頃に誘拐されていた淵田は、あの温室で一緒に誘拐されたクラスメートが殺された事を思い出す。
犯人はピアノ教師と杉山の父親だ。
“全部燃えてしまわないってのは、どうしてだろう。わざわざ残るように出来ている”
“結局、残るのは名前だけって事。人間が死んでも、名前は残る”
“名前が残ったら、思い出してもらえるもんね”
“そう、名前は燃えない”
本格派ミステリーで、ドキドキ感を煽られて面白かったです。姫野君がしっかり者で、のんきな淵田と良いコンビでした。
一人でピアノ教室に乗り込もうとしている事を電話で知った姫野が、何かあったら俺が此処に行ったって証言してくれよ。と言う淵田に対して、そこまで考えてんならいいけど。と言う辺りが、男の子同士の友達関係を上手く表していたと思います。まずまずでした。