曽根田のばあちゃんの見舞い代行に行った多田は、騒ぎに巻き込まれそうだと言われる。
いつもバスの間引き運行を監視依頼してくる岡が持つ畑で、無農薬野菜を作り売るHHFAという団体がまほろ駅前で幅を効かせているとルルから聞いた多田は、キッチンまほろのオーナー・柏木亜沙子からも、無農薬野菜の押し売りが酷いのだと相談を受ける。
同じ頃、星からもHHFAを調べろと依頼があり、かつて星からサトウ売りのバイトを引き受けていた由良公の友人・背後霊が、HHFAにはまる母を持つ息子で、朝から無賃で畑を手伝い、販売までしていると助けを求めてきた。
無農薬と唱いながらも、農薬を散布しているところを見つけた多田達だったが、HHFAはそれだけではないようで…。
『まほろ駅前狂騒曲』
著者
三浦しをん
発行社 文藝春秋
ISBN 978-4-16-382580-9
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
一方、行天の元妻・三峰凪子から娘・はるをアメリカに行く1ヶ月半預かってほしいと言われ、断りきれない多田。
行天は幼少期、自分の母が宗教にはまり、教主から行天が特別な子供だと言われた為、宗教で神格化された一方で、常に両親の思う通りにしないと虐待されて育った経験があり、自分も子供に手をあげてしまうのではないかと考え、はるを避け続けてきた。そんな行天を見た多田は、亜沙子とデートだと嘘をつき、はるを任せる。多田は、行天は虐待を連鎖したりしないと信じていたのだ。
無事にはるの子守りに成功した行天に、背後霊を任せた多田は、亡くなった息子の墓参りに行く。畑に背後霊を迎えに行った行天は、間引き運行を抗議する為に岡達老人が貸し切ったバスに乗り込む。
背後霊が心配で多田の事務所に来た由良公は、多田に依頼をしようと来ていた星に捕まる。行天と背後霊の乗る貸し切りバスを軽トラで追いかけていた多田だったが、星から由良公と事務所にいると連絡を受けやむなく戻る。
星は駅前で行うHHFAの集まりの邪魔をしろと言い、亜沙子を人質にとられてしまい、受けるしかなくなった多田。
一方貸し切りバスの中では珍しく行天が背後霊に説教していた。
「大事なのはさ、正気でいる事だ。おかしいと思ったら引き摺られず、期待しすぎず、常に自分の正気を疑うって事だ。正しいと感じる事をする。でも正しいと感じる自分が本当に正しいのか疑う」そうやって生きていけ。
背後霊が母を見に行きたいと言い出し、南口ロータリーへ向かうバスジャック老人と行天達。南口ロータリーではHHFAの活動をさせまいと星が依頼した看板持ち(多田含む)と、HHFA、そしてバスジャック老人が三者入り交じって喧嘩をし、警察が来るまでに怒りが爆発したHHFAの一人が、はる目掛けて持っていた鎌を降り降ろす。咄嗟にはるを庇った行天は、また小指を切られる。
“普段はだらだらするばかりで、人の感情の機微に疎いフリをしている。だが、本当はそうじゃない。黙って観察し、時に大胆な言動をし、危機に瀕した人を決して放っておかない。自分の身の安全すらそっちのけで、いざという時には誰かを守ってみせる。行天春彦とは、そういう男だ”
“相手の求めるものが何なのか想像し、聞き、知り、応えようとする事。「普通に愛する」とは、そういう事ではないか”
行天は入院先から出て行き、多田の元から居なくなった。そして…行天は多田便利軒の隣で、星に金を借り、探偵事務所を開いたのだった。
多田と亜沙子が付き合い始め、行天も多田も過去と決別し、新しい一歩を踏み出した。
行天は今後も、自分の正気を疑い、虐待の連鎖と戦い続けるんだろうなと見えました。行天出てく度寂しがるくらいなら、邪険にしなきゃいいのにね。