大学の学生オケで出会った指揮者・茂実は、身近にいたどんな男性よりも美しく、そして大人に見えた。
元タカラジェンヌの美人な娘・蘭花は、タカラジェンヌの娘というブランドに寄ってきた茂実に惹かれ、熱に浮かされるような恋をする。

それまで女子高生で蝶よ花よと育ってきた蘭花にとって、茂実は人生の全てだった。しかし、茂実と付き合っていく内に、茂実の師匠である指揮者の妻・菜々子と、ただならぬ関係である事が分かる。それでも茂実を諦めきれず、蘭花は20以上も年上の菜々子と別れてくれるようすがるが、蘭花と付き合うよりもずっと前から関係していた菜々子との関係は切れない。

菜々子との関係が師匠にバレた茂実は、当然、師弟関係を解消され、食いぶちを失う。その時蘭花は、茂実が職を失う事より、菜々子との関係が切れる事を喜んだのだ。
やがて茂実は働きもせず蘭花に金をたかるようになる。蘭花も心を病んでいくが、菜々子に言われて撮ったという、茂実との情事の動画を盾に揺すられていく。学生オケ時代から仲良くしていた親友・美波は、茂実に菜々子の影があった時から別れろと言い続けていたが、蘭花は聞く耳を持たない。オケの友達・留利絵は、肌が汚い事からコンプレックスを抱えており、蘭花の友達でいられる事がステータスなのだった。そんな留利絵を見込んだ蘭花の母は、実家の父の仕事が上手くいっていない事もあり、留利絵に蘭花と共に暮らしてくれるよう頼む。

茂実により弱っていく蘭花の姿を、誰よりも側で見ていた留利絵は、茂実から何とかして蘭花を離さねばならないと思っていた。しかし、蘭花はそんな留利絵を、本気の恋をした事がないからそんな風に考えているんだろうなと思っている。
茂実と待ち合わせをしていた蘭花は、茂実を突き落としたのだ。そして留利絵はそれを目撃し、蘭花のあられもない姿を記録してあるスマホを盗った。

茂実の傷が癒え、茂実のような熱に浮かされる恋ではない、単調な恋をし、寿退社し夫の海外赴任へ着いていく事に決めた蘭花。当然のように留利絵を後回しに考える蘭花に苛ついた留利絵は、蘭花の犯行を隠した証拠である茂実のスマホを、蘭花の結婚式前日に、警察に送った。

そして蘭花の結婚式の友人代表のスピーチ前に、待ちに待った警察が来たのだ。私から離れようとした蘭花と私を逮捕しに。

怖かった。辻村深月、こんな小説も書けるんだとビックリした。
女友達の、男より密に連絡を取り合っているのに、男に負けてしまう関係性。なんか分かると思った。

『盲目的な恋と友情』
著者 辻村深月
発行元 株式会社新潮社
ISBN 978-4-10-328322-5