Silhouette of wonderland

ナントカ教の教主である小学五年生の彩乃は、次々と色々な人の元に預けられる。そこは好意的な時もあったし、そうじゃない事もあったけれど共通しているのは数週間で鞍替えする事だった。

最初に預けられたのはナントカ教の信者ではない智佳子。突然舞い込んださほど仲も良くない大学時代の友人の頼みと言う事もあり、中々気が進まない智佳子であったが、わりと面倒見の良い彼女はそれなりに彩乃ちゃんと楽しく暮らす。
彩乃ちゃんが死人が見える事が分かっても、特に気味悪く思う事もなかった。
彩乃ちゃんは迎えの時期や先が見えるらしく、智佳子の彼氏から次誘われた時は絶対断るな。彼氏から貰った髪飾りをしていけと助言された。

次に彩乃ちゃんと出会ったのは地元のNPOのボランティアに参加していた受験生の辻村だった。友達に誘われて始めたにも関わらず、その友達はすぐに来なくなり、辻村の気になっていた女の子と抜け駆けしているのを見て、言わばやけくそでボランティアに邁進していた。
お昼になるとお握りを持ってきてくれる彩乃ちゃんと仲良くなると、彩乃ちゃんは辻村の気になっていた人を連れて来たのだ。
彩乃ちゃんは去り際、辻村に「続けると、きっといいことがあるから」と言い残した。

次に預けられたのは同い年の女の子・佳奈の家で、佳奈は同室にされた彩乃が気に入らない。ある日、佳奈は彩乃の鞄の中に入っていた、智佳子から貰ったマニキュアを勝手に使い、溢してしまう。彩乃が怒っても、佳奈は謝るどころか彩乃への不満を一方的にぶちまけてしまう。
佳奈は彩乃と近所のお祭りに行くと、彩乃から預かったマニキュアや辻村が彩乃にくれたペンダントのお陰で、クラスの女の子達と仲良くなる事が出来た。

“こんな風に、人に幸せを振り撒いて彼女は生きていくのかな。
凄い事かもしれないけど、彩乃の幸せはどこにあるのだろう”

佳奈は彩乃の事をそんな風に考え、彩乃に辛くないのかと問うてしまう。すると彩乃はこの運命を受け入れていると言う。

“誰かの人生に関わって、ほんのちょっとだけ方向を変える。
それで皆、少し幸せになる”

それが彩乃の考える教主であったおばあちゃんに準えた生き方であると言うのだ。


彩乃ちゃんみたいに特別な力を持たない人でも、規模が小さなものなら皆出来る事だと思いました。普段、それをしようとする事が中々無いから特別な事の様に感じるけれど、皆も誰か大切な人の為なら頑張れる事の様な気がして、そんな風に期待できる終わり方が凄く好きでした。