住民が監視し合い通報する安全地区が回ってきた仙台。首都から派遣されてきた平和警察は、四ヶ月に一度市民の前で、危険だと判断した住民を処刑する。

この世には正義などない。市民の安全を守るはずの警察は、人の恨み妬みを元手に暴行を繰り返し、やってもいない罪をでっち上げ、殺していくのだから。
この状況で生き抜くか、もしくは火星にでも住むつもりかい?

警察官の、そして市民の感覚が麻痺する世界で、自分の顧客だけは守ろうと決めた理容師は、顧客の一人が盗んだ強力な磁石を武器に、平和警察と戦う。

『火星に住むつもりかい?』
著者伊坂幸太郎
発行元 光文社
ISBN 978-4-334-92989-3

まるでないとは言えない世界。ホント、伊坂幸太郎は上手いですね。きっとこんな世界にはならないだろうに、必ずそうとは言いきれない。
昆虫の話が好きな頭のキレる捜査員・真壁鴻一郎の、警察官というより探偵のような立ち居振舞いと、理容師のお父さん、お祖父さんの正義に対する考え方から学ぶ理容師の姿勢。立場は違うけれど、考え方は同じような気がしました。

正義とはなんなのか?考えろ!
きっと伊坂幸太郎は常に、それを発信してるんでしょうね。
面白いというよりは、危機感を覚えた作品でした。