LB。ライ+アンナ。
「こちらA!今そっちに向かってるよ。ターゲットは……うん、うん。了解!」
移動するターゲットに気づかれぬよう、後を追いかけている。
──この時。私はターゲットとの距離が開いている為、見失わないよう少し慌て気味だった…。
そう気がついたのは、ターゲットが曲がった先にある路地に入ろうとしたところで、前からやって来た人とぶつかってしまってからだった。
ドンッ…!!
「なっ!?」
「きゃっ!?」
「っ…」
「いたた…」
ぶつかった衝撃でその場に尻餅をついた私は、相手に向かって『ごめんなさいっ!』と謝る。
「…いや。俺も余所見をしていたからな。だが、気をつけた方が良い……お前こそ…大丈夫か?」
「は、はい。大丈ぶっ!!?」
いつまでも立ち上がらない私に、そっと手を差し出してくれた相手を見て……私は目を見開いた。
だって…今私の目の前にいるのって…
(は、ハニーバザードYの…)
ライ!!?
「…?やはりどこか怪我でもしたのか?」
「いいいいえ!大丈夫です、本当に!」
変装している私に気づかないのか、向けられる視線は敵対する者への憎悪を含んだ冷たいものではなかった。
(それだけでも印象って変わるんだなあ…)
私は戸惑いながらもライの手を借り立ち上がり、彼から視線を外すと…(…万が一にでも私がLBのAってバレたらまずいよね)
視界の端に見えたライの手に擦り傷が出来ているのを見つけた。
(あ…これって私がぶつかった時に?)
「あの…ごめんなさい」
「何だ?謝罪ならもう必要ないが」
「違うんです。その…手、怪我しています」
「…別に、この位何ともない」
傷など気にせず、立ち去ろうとする彼の腕を私はとっさに掴む。
「ま、待って!」
敵だと言っても、今回ライはまだ何もしてきていない。
(M達には甘いって言われるかもしれないけど…私のせいで負った怪我なら尚更放っては置けないよ)
「まだ何か…っな、お前!?何をしている!!そんな事する必要はないだろう?!」
私は彼の手にそっとハンカチを巻いて結ぶ。
「いいえ、必要あります!でも、これ位しか出来る事が無くてごめんなさい…。帰ったら直ぐに傷を洗って消毒をして下さいね」
そう言って彼の手を離した瞬間。
「……礼は、言わないからな」
彼は目元をうっすら赤くし、どこか困ったような表情を浮かべていた。
「はい、構いません。私がしたくてやった事なので」
にこりと笑い掛けると、ライは困ったような照れたような表情を見せ…
「フン、おかしな女だ…」
そう呟いた。
──2人の間に沈黙が流れた瞬間。
『ちょーっとぉ!!A、A!!聞いてるのかい!!ターゲット、例の店に到着したのを確認したよ!!』
「……」
「……」
つい忘れていたけど、インカム…繋がったまま…だった。
そこから聞こえたのはQの声。
プツ!っと慌てて電源を切って、恐る恐るライに尋ねる。
「い、今の聞こえてました…?」
「……。ターゲット、とか。…Aとか、聞こえて来たな」
聞こえていたよーっ!!?
「…お前、LBのストラ…」
「っあああの!ぶつかってしまってすみませんでした!怪我お大事に!!…それじゃ!」
「っ、おい!!」
ライが言い切る前に私は逃げるように(と言うか逃げたんだけど)この場を後にした。
それから何とか任務が無事完了した夜。
ベッドに寝転び、昼間の事を思い出していた。
(どうしたんだろう…私。彼は敵なのに…。何だか、気になって仕方がない、だなんて…)
敵としてしか対峙した事の無かった彼。
その彼の戦って居る時には見た事の無かった、困ったような照れたような感情を乗せた表情が忘れられない。
(どうして…こんなに思い出すんだろう?それに思い出す度、少し…胸が痛い)
この気持ちが一体何なのか、この時の私は到底知る由も無かったのだった──…。
思い出すのは(君を想う5題
ドラマティック様よりお借りしました。)
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またまたキャラ嘘臭くてすみませんf^_^;