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ダイヤモンド・ボーイ-メイド奮闘記-。【8】(ザンスク)

 

オレの一日はボスを起こす事から始まる。


(う゛お゛っ、やべ!もうこんな時間かよっ、)

寝る前に合わせた携帯電話の目覚ましの音は無く、耳にはめていたイヤホンも外れていた。今日で何回目だろう……主であるXANXUSと同じベッドで眠る為、寝る前に必ず耳にイヤホンを着けているのに、どうした事か毎朝外れてしまっている。寝相は悪くないはずなのに。
微かな吐息を溢した後、スクアーロはそうっと包まれていた腕の中から抜け出してベッド脇に立った。――ボスを早く起こさないと。

「ボスっ、おはよぉーだあ!朝だぜぇ、起きろぉ」
「……時間ならまだあるだろ」
「あっ、ボス……苦しいぞぉ、んっ……ボースーッ、潰れるっ」

「その割には楽しそうだな」
「……へへへっ」

顔を覗き込みながら元気良く声を掛けると、忽ち伸びてきた腕に捕まりベッドの中へと引き摺り込まれた。温かくて力強いその腕に包まれて弛みだしそうな頬を引き締めたが、効果の程は見込めなかった。もがくフリは最初だけ、直ぐに両手を回して抱き着いた。

「ボス、メシの時間だぞぉー?」
「腹減ったのか?」
「ちょっち」

「なら、着替えて行くぞ」

髪を撫でるXANXUSの手を心地良さそうに受け入れながら、スクアーロは微かに伏せた睫毛を震わせた。もう幾分かしたら仕事に出掛けてしまう主に目一杯甘えながら朝食を勧める。そんなスクアーロの事はお見通しとばかりにXANXUSは名残惜しさを感じながらも腕の中の小さな身体を解放してやる。言い付けられると素早くXANXUSの着替えを取って戻ったスクアーロは上質なシルクのシャツを広げて差し出した。
こうした些細な事でも、主の為に尽くしたい……そう改めて思う。

(毎朝、離れんのが辛いなんて言ったら笑われちまうよな。)


小さく頭を振るって緩やかに満ちてくる感傷を掻き消した。
考えるのは見送ってからにしよう。





「いってらっしゃい、ボス!今日も1日頑張ってきてくれぇ!!」
「ああ」
「あと、なぁ?出来たらでいいけどっその……早く帰ってきて欲しい」

「……わかってる」
「うん」

“行ってくる”の代わりに交わされる口付けを受け止めて、走り出した車へ手を振った。車が見えなくなった瞬間、急に寂しくなる。
夜まで帰って来ない。もしかしたら朝になるかもしれないし、時間が無くなったのなら帰宅せずに真っ直ぐ次の仕事へ向かうだろう。だが、スクアーロが一番心配な事は身体を壊さないかである。自分の為に無理をして家に帰って来てくれている事に気付かない程バカではない。

(ムリしないでって、なんで言えねーんだろ……オレってやなやつ。)

少しでも傍に居られたらと願い、XANXUSの帰りを待つ事しか出来ない自分の無力さに顔をしかめる。――ボスの為にもっと何かしたい。


「そうだ、今日の晩飯はオレが作ろう!」

この間ルッスーリアに教えて貰ったとっておきを作ろう。ルッスーリアみたいに上手くは出来ないかもしれないけど、きっとボスは喜んでくれる。優しく褒めてくれる……そう考えただけでワクワクして胸は高鳴った。
そうと決まればスクアーロは厨房まで駆けて行き、必要な食材を両手に抱えながら部屋に備え付けてある簡易キッチンへと向かった。先日のルッスーリアの手際を思い出し、慎重に料理を進めていく。

焦る事はない、時間なら沢山有る。





「――出来たッ!!」

最後の仕上げに味見を三回した後、完成の合図と共に小さく拳を握った。まずまずの味だ、初めて作った割にはなかなかだと思う。

「早く帰ってこねーかなぁ……ボス、」


風呂も沸いてるし、あったかい料理も出来てるぞ。
だから……早く帰って来て。




「ん゛ん、……ボス……」

重い瞼を持ち上げると時計の針は深夜2時を告げている。待っている間に眠ってしまったらしく、はっと首から吊るした携帯電話を覗く。
着信もメールもない。

「今日はもぉ帰ってこねーのかな」

その時、廊下を歩く足音が聴こえてきた。一定のリズムを刻む彼の――XANXUSの足音だ。聴くや否や転がるように走り出して扉を開けると、待ち焦がれた主の姿。スクアーロは言葉より早く飛び付いた。

「ボスっ、おかえり!」
「ああ」
「…………」
「どうした、寂しかったのか?」

「ん、」
「そうか」

ぐりぐりと額を擦り付けて小さく小さくスクアーロが頷くと、XANXUSが一層強くその身体を抱き締める。苦しいくらいの抱擁に感傷を溶かされて、追い出したはずの睡魔が再び顔を覗かせた。

「……眠いか」
「少しだけ、でも全然平気だぁ!!」
「無理をするな」

「あっ、」

言うが早いかXANXUSはスクアーロを抱え上げ、真っ直ぐに寝室へと運んでしまう。その間に自身が着ていたコートを椅子に預け、シャツのボタンを外しながらスクアーロをベッドに放って、続く様に自らも身を沈めた。

「ボス、メシ――」
「朝でいい」
「ん……ボス、マジでオレ……」

「いいから寝ろ」

恋しかった温もりに包まれてスクアーロは懸命に瞼を持ち上げ、首から外した携帯を枕元へ置いてイヤホンを片耳につけた。それから、あっという間に夢の世界へと落ちていく。


「おやす、み……ボス、」
「ああ」

それっきり眠り込んだスクアーロの寝顔を見詰めながらチョイと指先でイヤホンを摘まんで外してしまう。毎朝起きられないのが主のせいであると気付くには、後どれ程の時間を要するのか。
そう考えて、XANXUSはフッと小さく笑みを溢した。





『Buonanotte, squalo.』


-END-





とあるスクの1日。
イヤホンを毎晩ボスに外されているとも知らずに、毎日一生懸命です。

歳の差もあり妙な安定感があります。

恋愛食物連鎖。(ザンスク)

 

「悪いっ、遅くなった!」
「遅ぇ!!このオレを待たせるたァいい度胸だなあ、跳ね馬ディーノ!」

「そりゃないぜスクアーロ!」

待ち合わせのカフェ。いつもの時間にいつもの席で待ち合わせていた二人のこの会話さえも“いつも”の事であった。互いに忙しい身である為、どちらかが遅れるなんてのは当然で。ましてやマフィアのボスともなれば時間の都合も楽では無いはず。スクアーロはそれを理解していながらも顔を合わせればついつい昔からの調子で憎まれ口を叩いてしまうのだ。

「ごめんな、少し立て込んでてな」
「ん゛ん?ならなんで電話ん時ムリだって言わなかったんだよ」
「そ、それは……」

「?何だぁてめえ、はっきりしやがれ!!」

途端に歯切れの悪くなったディーノに、スクアーロは噛み付く様に言い返す。当のディーノはと言えば長年の秘めた恋心を遂に告白する時が来たのかと、打ち明けようか葛藤していた。そんなディーノに全く気付いていないスクアーロは興味を失った様に微かな吐息を溢した後、店員が運んで来たエスプレッソの香りを鼻腔に捉えた。

「あれ、今日もか?スクアーロが先に来てるといつも着いてすぐにエスプレッソが出てくるよな。何でオレが来るのわかるんだ?」
「さあな、ただの勘だろ。オレが早く飲みたかっただけだぁ」
「でも、嬉しいぜ」

「そーかよ、そいつは良かったなあ」

こんな気の無い返事にも一々嬉しそうに笑うディーノに気付くでも無く、スクアーロはカップを傾けて温かい珈琲を数口飲み下した。
それからカップを戻すと閉じたばかりの唇を開く。


「あの野郎っ、今度は何してきやがったかわかるかぁ!?」
「……やっぱりXANXUSの話か、」
「なんか言ったかぁ!」

「いや、いいよ何でもねえ。それで、今度は何をXANXUSにされたんだ?」
「実はよぉ――」

ディーノには初めからわかっていた。スクアーロが自身を呼び出す時、必ずXANXUSの話をしてくる事を。寧ろそれ以外の話題なんて彼と出会ってからのスクアーロには皆無になっていた。いくら口先で怒っていてもスクアーロが本当に彼を嫌う事が無いのもわかっていながら、些細な時間でも共に過ごしたいと思う自身の気持ちに抗う事が出来なかった。
マシンガン・トークで饒舌に主の愚痴と言う名の惚気を語っていたスクアーロの携帯が鳴り、ディーノはがっかりと肩を落とした。――もっと楽しそうな声を聴きながらその顔を見詰めて居られたら……。

「よぉボス!!……ん、それは……ああ、わかった。今?当然だぁ!」
「…………」
「30分もあれば着く。――う゛お゛ぉいっ、そりゃ……切りやがった」
「行くんだろ?」
「ああ」

「払っとくから行けよ」
「理由がねえ」

そう言って自分の分の料金をテーブルへと置いて背中を向けたスクアーロを見送る。いつだって思い通りにはならない、高潔な麗人。
ディーノは何度目かわからない溜息を溢した。





「う゛お゛ぉいっ、ボス!今来――ぐっ、……なん……ッ、ア……」
「オレを待たせるほど偉くなったのか、ドカスが」
「すま、ね……もうしねえ、」

「触るな」

駆け込んだ室内で瞬く間に引き倒されて、ブーツの先がめり込むほど何度も蹴られているスクアーロが脚に触れ様とした途端、今までの猛攻が止んだ。伸ばされた手を避けて、スクアーロを踏み付けていた足を戻す。

「1分で頭に入れろ」
「……新しい任務かぁ……これはオレ1人でいいのか?」
「泣き言か?」
「違うっ、オレは何でもする……出来る!出来るんだぁ!!」

「だったらさっさと出て行け目障りだ」
「――Si.」

音も無く身を起こすと任務の内容が書かれた紙をXANXUSへと手渡し、スクアーロは踵を返して部屋を後にした。残されたXANXUSは手にした紙を掌から燃え立つ炎で焼き尽くし、さらさらと零れ落ちる灰を苛立たし気に睨み付けた。――握る拳の中には一欠片の残骸が残っている。

「……カスが」






「今回は無傷とはいかねーだろうなぁ……」

あいつに捧げたこの身体が傷付くか、何処かしら欠いちまうか、……いずれにせよ任務が成功するなら何だって構わねえ。負けなけりゃあいい、死に損なう必要がオレには有るのだから。

「やっぱり死ぬならあいつの手でじゃねえとピンとこねーよなあ」



あいつの、XANXUSの手でなければ。
そうでなければきっとオレは死なねえ……死ぬはずがねえ。



「――っしゃあ、今日も暴れてやるぜぇえ!!」

自らに渇を入れてからスクアーロは闇の中を走った。息を殺し、気配を殺し――内に秘めた想いだけを抱えて、研ぎ澄まされた獣の牙を剥き出しにした。先刻からズクズクと痛む鳩尾だけが色濃く生と主を結び付ける。

(これだけでいい。)








強い者だけが生き残るのは当然で。
その他大勢はそれに属して尽くせば良い、それだけだ。

ただ一つ願うなら。



その中の、ほんの少し特別な存在になれたらいい……オレはあいつの顔を思い浮かべながらそんな事を考えていた。


-END-





一方通行ネタです。ただ、表向きにはスク→ボスだけど、ボスもまたスクに……って感じです。
恋愛に優位と劣位が生じるのは仕方無いですよね。
ここからどうやって2人が想いを繋ぐのか考えるだけでほっこりします。

最後の台詞はそれぞれの胸の内だったりします。

嘘から出た真、――春。(ザンスク)

 

「オレと結婚しろ」

あいつが言ったこの一言が、全ての始まりだった。






「……はああぁ゛?」
「何だそれは」
「なんだはこっちの台詞だぁ、まだ寝ぼけてんのか?」

同じベッドで寝起きしているオレとこいつ――XANXUSは、別に恋人同士だとかそういう事では無くて。昔からの習慣的に身体を重ねて欲を満たして眠るってだけの、ただの上司と部下。それに以上も以下も無い。
今朝も遅くまで絡み合って眠り、目覚めて一言目がこれだ。
まさしく、理解不能。これに尽きる。

「ムチャ言うなぁ!何なんだよてめえは!!」
「朝っぱらから喚くな煩ぇ」
「う゛お゛っ」

ベッドから蹴落とされて、上質な絨毯の上に投げ出された。それからあいつは『同じ事を二度言わせるな』と言わんばかりに睨んでから、浴室に姿を消した。取り残されたオレは絨毯の上で正座をしながら考えた。そもそも何故あいつは「結婚しろ」と言ったのか……嘘?ウソ……ん゛ん!?

「……ははーん、そぉ言うことかあ!!」

そうだ、今日はエイプリルフールだ。だから恋人でも無いオレに結婚しろだなんて言ったのだ。どうせオレが騙されて狼狽える所が見たかっただけなのだ。全く、何て男だろう。これが女相手の嘘だったなら皆尻尾振って飛び付いたろうに……まあ、その辺りを考慮した上で無害なオレを選んだに違い無い。――ならばきちんと騙された振りをしなければ。

……ん゛ん??でも待てよ、そもそもどう答えれば良いものなのだろうか。オレってあいつとしか付き合ったこと……いやっ、ちょっと待て!それじゃあオレが可哀想過ぎるだろ!!違うっ、あれはオレのせいじゃ……だって……他の奴に触るとか触られるとか有り得ねーし無理だし、キモいしうざいし無理だっただけで、別に……。
そうだっ、オレってやっぱり潔癖症なんだ!そうだそうだ。ウンウン。

「……きっと、そうだ」
「カス、いつまでンなとこに居やがる。さっさとシャワー浴びろ」
「ん、今行く」

シャワーの音に混じって聴こえた声に促されて浴室へと向かう。いつもの調子で無遠慮に中へ入ると並んで降り注ぐシャワーの雨に打たれた。

「う゛お゛ぉい、洗い終わってんなら退けよ。まだ時間あるから湯船にでも浸かってろぉ、……あっ、てめっ!」
「オレに指図すんな」
「ん゛ん……ア、やめろって……XANXUS、」

「聞こえねえ」








「聞きそびれた!!」

ダンッ、とテーブルに掌を叩き付けた。いつもの様に奴に流されて綺麗さっぱり忘れていたのだ。何たる不覚とばかりに肩を震わせて居ると、腕を回された。それに連なる様に数人の気配。

「なーにやってんのかなー?カスザメセンパイは」
「うるせぇっ!!」
「私はどうでもいいんだけどそのテーブル、壊さないでよ?」

「なかなかの品だね、オーダーメイドかい?」
「そうなのよマーモンちゃん!」

嬉しそうに声を上げたルッスーリアを尻目に、肩に絡んでいた細い腕をやんわり外す。ただからかいに来ただけのベルフェゴールは興味を無くしてマーモン達へ歩み寄り、レヴィはレヴィで相変わらず暑苦しい嫉妬の眼差しを此方へ投げて寄越していた。


「――あら、ボス。早かったわね」
「XANXUSっ!!」

幹部達に続く様にXANXUSが姿を現し、皆で出迎えたが、オレだけXANXUSへと詰め寄った。正面から向き合うとXANXUSは何も言わずに、ただただオレを見詰めている。向けられた双紅を覗きながら口を開いた。

「今朝の話……オレ、あれから色々考えたんだけどよぉ……」
「何だ」
「なんでオレなんだ?」
「てめえしか居ねえからてめーなんだろ」

「オレしか……」
「何々?何の話なの〜っ?」

他のメンバーも気になるのか視線を送って来る。中でも一番強烈な視線を送って来るレヴィからの眼差しに後頭部がいよいよ焦げ付きそうな錯覚を起こしながら、今言われたばかりの言葉を胸の内にて反芻してみた。オレしか居ない……やっぱりこいつの右腕はオレしか居ないのだ。当然にも程がある、いくらあいつ――レヴィが頑張ったって、オレに敵いっこない。
段々と気分も良くなって来て、最早嘘とかどうでも良くなっていた。

「わかったぜぇXANXUSっ、オレ……おまえと結婚する!!」

例え嘘でも、選ばれて嬉しくない訳が無い。




「ああ、そっか!今日ってエイプリルフールだったっけ。ビビったー」
「でも、例え嘘でも素敵っ!」
「嘘じゃねえ」

「何言ってんだぁXANXUS、もういいんだぜぇ?」
「嘘じゃねえ」
「…………」
「…………」

ベルフェゴール、ルッスーリアに続きXANXUSが口を開いたがその一言を皮切りに室内を妙な空気が包み込む。問題発言をした当の本人はしれっと事も無げに言い張ったが、言われた当人――もといオレは沸々と焦燥が胸に疼き始めていた。まさか、そんな。

「今日はエイプリルフールだろ?だから言ったんだろっ?」
「何でエイプリルフールに嘘をつかなきゃならねえ?オレは誰の、何の指図も受けねえ。まあ、たまたま今日言っただけの話だ、気にすんな」
「気にするだろ普通に!」

「それともてめー……オレに“嘘”を吐きやがったのか?」
「な゛っ……」








4月1日、エイプリルフール。それがオレ達の結婚記念日。
嘘のようなホントの話。


-END-





今回はぷち賢いスクと、その斜め上を行く自由人ボスのお話。
あんなに2人の生活が密接にも関わらず恋人では無いと言い張るスクはやっぱり鈍いです。そんな鈍感スクアーロに対し、交際一段飛びの結婚に至るボスも大概変わり者です。

やる事やってるのに妙なところでプラトニックとか良いです。

純情ラプソディー。(ザンスク)

 

「ん゛ん……ぁ、XAN……XUS、」
「手を退けろ」
「待っ……ん、ン――……う、そこは……」

「何だよ」

呼び出された屋上で、顔を合わせるなり唇を奪われたスクアーロは驚きながらも嬉しそうにXANXUSへ身を預けた――が。XANXUSの手が腰から滑り、尻を鷲掴みにしながら服の中に手を忍ばせてきた為、咄嗟に手で押さえ付けた。それでも留まる気配を見せないXANXUSに押し切られるままに身体はタイルの上へ倒されて、その合間も止まない口付けに判断力を奪われていく。スクアーロが気付いた時には既に半裸にされ、敏感な場所を人質に取られた後であった。

「はぁっ、……ハァ……ぐっ、ぅ……」
「だらしねえカスだな」

本来ならば視界を埋め尽くすはずの空さえ目に入らず、時折風に靡く艶やかな濡羽の髪と燃える様な紅蓮の瞳に翻弄されていた。


「――ッ!!ざっ、XANXUS!?何して……」
「るせぇ、黙ってろ」
「やめ、ろ……やめろぉ!!」

「ッ、……てめえ、」

最愛の主に求められ、遂に契りを交わすのだと快楽に溺れながら感傷に浸って居たスクアーロだが、XANXUSの気配が宙を示す分身よりも下へ移動した瞬間、身体を強張らせた。抵抗の色を見せたスクアーロに一言返してXANXUSは、慎ましく口を閉じている小さな蕾へ唇を寄せた。途端にスクアーロはXANXUSを蹴り飛ばさんばかりに脚を振るった。人並み外れた直感を持つXANXUSは間一髪でそれを避けると、その声音に憤怒を乗せて拳を握った。

「ダメだぁ!それだけはダメだあ!!」
「……興醒めだ」
「XANXUSっ、ちが……待てよ、話を……」
「やっぱり野郎なんざ無理だ」

「XANXUS!XANXUS!!……XAN、XUS……違うんだぁ……」

スクアーロは必死に呼び掛けて説明をしようとするが、XANXUSはそれを拒絶した。忌々しいとばかりに捨て吐くと、スクアーロを残して屋上から姿を消した。取り残されたスクアーロは誤解させてしまった事と二人の関係の終わりを示唆する彼の言葉に、込み上げてくる涙を堪えて歯を食いしばった。……自分の中の特別な存在である彼――XANXUSの唇が其処に触れるのが耐えられなかったのである。誰よりも強く想っているからこそ、そんな彼を汚すみたいでどうしようもない気持ちになってしまったのだ。セックスに対してもそんな抵抗感があったのに自らあんな事をするなんて……スクアーロは驚きながらも切ない胸の痛みを誤魔化す事は出来なかった。

「……もう、飽きられちまった、かなぁ……」

はだけたシャツの前を合わせながら小さく小さく呟いた。彼を汚したくないと、まるで聖人の様に彼を扱ってしまった自分に酷く落胆していた。“綺麗綺麗”と大切に箱に入れて、彼の嫌う勝手な価値観を押し付けてしまった自分を斬り刻んでやりたかった。一発でも殴られたなら気持ちも晴れただろうに、XANXUSは制裁を加えたりしなかった。

「もう触ってもらえねぇかも、……いや、まだだぁっまだ終われねえ!」

後ろ向きになる自分を必死に奮い立たせて、スクアーロは乱れ放題な服を直して一目散に彼の家へと向かった。もう既に彼が学校には居ないと、自分の中の直感が告げていたからである。





「XANXUS……」
「何しに来やがった、勝手に入って来んじゃねえ」
「話を聞いてくれぇっ、XANXUS!!オレ……おまえに謝りたくて。セッ、……セックス、が嫌だったわけじゃねえ!ただおまえにあんなことさせられなかっただけで……オレがおまえにするならいいんだぁ、でも……オレ、おまえの為に何でもしてえ。上手く出来るように頑張るから、その……もう一度チャンスが欲しい、」
「…………」

突然部屋へと飛び込んで来たスクアーロの真摯な告白に眉一つ動かすでも無くXANXUSは、ただただスクアーロを眺めていた。普段とは違い、自信も消え失せ震える様に儚げな瞳に浮かぶ確かな熱意。制止の声が上がらなかったのを良い事に、スクアーロはXANXUSへ近付いて震える指先で彼のシャツを乱していく。それから、不器用ながらも懸命な口付けを送った。いつもは彼任せの行為を思い返して今、自分に出来る全てを最愛に捧げる。

「ん、……ん゛んっ、はぁ……」
「早くしろカス」
「うん、」

急かされるままに下肢を被う衣服を全て脱ぎ捨てた。椅子に座ったままのXANXUSに跨がり、腕置きの上にしゃがみ込んだ。その真下には熱くたぎる楔が備えられている。スラックスの前を開いて欲の証を取り出すと、その上に腰を落とした。慣らす事も知らず、悲鳴を上げる身体を抑え込みグリグリと体内へ捩じ込んでいく。

「ぐあ゛ぁあ……ア、XAN――」
「ッ、てめえはよっぽどのマゾだな、」
「ハァ……はぁっ、入んね……ボス、ボス……助け、て、」

「……後悔すんなよカス」

無理矢理に開かれた其処は張り詰めて、これ以上は無理だと判断したスクアーロはすがり着いた首筋で苦し気に囁いた。それを聴いて今まで大人しく身を任せていたXANXUSはスクアーロの腰を掴み、一気に根元まで自身を埋め込んだ。スクアーロを気遣うでも無く衝動のままに荒々しく揺さぶり何度も貫いた。

「――あ゛あ゛ァア!!っ、……ぐっ、……あっ、ア゛、」
「はっ!カス……痛いか」
「う゛ぁ……これで、い……これが、……XANXUS、」

「……わかった」

首を横に振って漏れそうになる呻き声を堪え、懸命に言葉にする。其処に込められた真意を悟り、XANXUSは抱えた体躯を一層激しく所有した。
次第に苦痛を知らせるばかりだったスクアーロの声に色が浮かび、行為が熱を増していく……互いの欲を満たし合うまで遊戯は続いた。





「……痛くていいんだぁ、おまえなら……何でも」
「…………」
「でもまあ、毎回これは困るからよぉ、オレも頑張るなあ!!」

「そうだな、確かにてめーは下手過ぎる」
「う゛お゛ぉい!!」


-END-





女の扱いしか知らなかったボスと、ボスのそれに驚いたスク……そんな2人の初めてのお話。
箱入りが嫌なボスと、女のように扱われたくないスク。
何だかんだ似た者同士。

この一件からDVが公認になり、2人の愛のメモリーが始まりました。

Buon compleanno! S.SQUALO 〜Genetliaco 2010〜。

スク誕小説第一段、『サードニクス-夫婦の幸福-』。
よもや何故にこんなに遅くなってしまったのやら……不思議なものです。

このお話の個人的なポイントはまずボスのエスコートぶり。スクが気付いていないのも承知で色々してあげてます。気付いていないから色々してあげようって思って居るのかもしれないです。続いて手荷物が1つ、これが密かに私の萌えポイントであります。(笑)
そして極め付けの、ボスの浴衣姿。ボスの浴衣を乱させたかったというか、その後の奉仕は予定外だとか、まあ色々ありましたが幸せ夫婦的なお話を書きたかったので良かったかなと思います。引き続き、日付は無視しながらスク誕小説をぽちぽちしていきます。

誤字や読み辛い所は随時直しますので軽く読み流して頂けると幸いです。
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