話題:秘密

私は箱入りのお嬢さんで、彼以外に男を知らなくて、大恋愛の末の失恋なんて経験したことがない、と大抵他人様からそう見られる。その後には、あなたの苦労なんてまだまだだよ、世の中にはもっと大変な人が云々、と続いてと延々と諭される。
ふん。余計なお世話だ。人間一人の人格を作り上げて楽しいか?自分の作った鋳型に当てはめて満足か?
私はその期待を裏切らないように慎重に慎重に無数の選択肢から正しい答えを引っ張り出してきて、そっと提示するのだ。これはどう?正解かしらね?

でも、ホントのことは全部内緒。私のことは全部秘密。誰にも教えてあげない。亮さんのこと、亮さんへの執着、亮さんへの依存、全部私だけが知っていればいい。

大人の男は「俺が君に人生を教えてあげたい」なんて言うけれど、それならあたしの絶望も全部喰らい尽くしてよね。地に足着けて生きてかれないんだ。絶望を喰らう覚悟もないのに、私に向かって知った風な口を利かないでくれ。

もう何もかもが予定調和。あれもこれもそれも、全て想定の範囲内。誰の唇から零れる言葉も、どこかで一度聞いたことのあるようなセリフ。まだ、だ。まだ私の想像を絶することは起きていない、そんな人にも出会っていない。

「こんなのって初めて!」そう言って胸の前で手を合わせれば男の人は嬉しいのでしょう?

啓蒙主義にとりつかれている。