届けられたアサルターバックコンテナに手をつけた流奈は、30秒持ちこたえろと巴に声をかける…。
巴は、善処はすると早口で軽く答えるとライフルのマガジンを投げ捨て流奈を背負って再び後退する…一隊と成って襲いかかるM6クルセイダーの一軍は、容易に崩せる物ではなかった。
撃ち続けていた巴は切迫感が凄まじいほどに襲いかかっていた…。
カメラ越しにユウキは巴の手が微かに震えていたのを見ると少しだけ、腕に伝える操縦レバーをライフルよりに動かすと、スムーズにマガジンがライフルに装填された…。
巴は自分の感覚が少し切迫してズレていたのをフォローされたことに気が付いたようだ
巴『ユウキ、助かる…!』
礼を言うとユウキは何食わぬ顔で軽く答えると流奈が巴の前に飛び出した。
スマートないでたちをしていたかと思うと一転、攻撃的な機体に様変わりしており
右腕には35mm8門ガトリング砲を積載し、背中から腕にかけて補助アームを取り付け反動に負けない大掛かりなブースターを背負っていた…。
左腕には女性には似つかない大型のチェーンソーが折りたたまれており補助アームを肩に掛けて取り付けられており同様に背中へ伝って取り付けられているさらに肩にミサイルポッドが組み付けられさながらフルアーマールーンナイツと言った所だ…。
ユウキは、そのアサルターバック88(エイティーエイト)を纏った流奈を見て言葉を失うと流奈は、フッと一つほくそ笑み、まばゆい閃光が一瞬、走ると…35mmの強烈な弾丸は高速回転する銃口から凄まじいスピードで飛び出しその先に捉えたクルセイダーは瞬く間に花火に変わって行く。
そして、巴を通して体の芯に伝わる流奈のガトリングのリコイルショックと耳に聞こえて離さない小気味良い感覚の銃声は、ユウキの心を踊らせた。
ユウキ『すげぇ…。』
一言漏らすと周辺の危機は、流奈のガトリングの斉射によって瞬く間に形勢は逆転…数々の敵機が流奈のアサルターバック仕様の前に次々に撃墜されて行く…。
流奈の担いだガトリングだけでそこまであっさりと敵機が片付いて行く…。
レインの狙撃とイーティルの砲撃、加えてアデリアの砲撃もある周辺の制圧はもう間もなくのようだ…。
そこにようやく、近隣をパトロールしていた日本軍艦隊が合流する形になる…すると我先にと武功を立てんやとばかりに進撃を開始するミョウコウ級航宙巡洋艦が4隻、前に出ると待っていましたとばかりに敵旗艦フェニックスは砲撃を始めた、ミョウコウ級4隻は、飛んでくる砲弾に合わせて回避運動を取りながら対艦魚雷を2発づつ向かって放つ…。
真っ直ぐに飛んで行った魚雷は突然、何かに遮られると爆発し次々に誘爆を起こし、もうもうと立ち込める爆煙の中には…高速で直進航行する魚雷や砲弾を受け止める為に傾斜の利いた分厚い装甲板を艦低に持ちその装甲の下にはエネルギー砲を打ち消す防御フィールド発生器を持ったケディスバーグ級防盾駆逐艦が4隻も煙の中から姿を見せる…今まではレーダーにも視界にもその姿を捉えていなかった…。
突如、姿を現した、ケディスバーグ級防盾駆逐艦の存在を確認すると…巴は又、頭をフル回転させた…。
巴(防盾艦…そんな…馬鹿な…今まで居なかったはずなのに…)
巴は、深く思考すると状況の悪化だけは避けねばと、とっさの判断で自然と口が回った…。
巴『先行するミョウコウ級は回避運動続けつつ後退!パトロール艦隊の防御艦は?居たら部隊の前衛に回して緊急防御!アデリア、イーティルは砲撃可能火砲で応射急げ!ケディスバーグへのエネルギー砲は無理!実包で奴の堅い盾をふっ飛ばせ!』
巴は言えるだけの指示をありったけ口にすると火線を縫いつつボロボロになりはてた、烈月の鉄塊を拾って辺りを見回しながらアデリアの居る方向へ逃げる大分離れたのかその途中でこれまでに無い好転材料を見つけた…。
巴『ヒュ−ガ級戦載艦(航空戦艦)!?ありがたい…烈月…もうすぐだ…。』
大破し鉄塊の烈月を励ますように引っ張って戦載艦の着艦用甲板にたどり着くと烈月から強制通信が入り込む。
烈月『すまねぇ…てめぇに助けられるたぁな…借りができた…いつか返してやる…そいじゃあ…しばらくは休ませてもらうわぁ。』
痛覚の遮断…大破した各部へのエネルギー供給の遮断、ジェネレーターの負荷の軽減を同時にやった結果だと巴はユウキに話すと少し安心していた…。
巴は、状況を見計らってヒューガ級戦載艦以下全艦に指示を出す…。
巴『ヒューガ級戦載艦は艦載中のAGを発進…回避運動を続けつつミョウコウ級は、CE弾頭に切り換えた対艦魚雷で雷撃、ケディスバーグ級の距離3、4メートル手前で爆発するように信管をセット…フィールドジェネレータを焼く!。』
巴の指示で一斉に戦場が動くのが分かる、ヒューガ級から参式AG水月(スイゲツ)が飛び立つとフェニックスから再び続々とAGの反応が強く出た…レーダーの反応から察するにM6クルセイダーを小型化したM7コールセアだと巴は言うと流奈が大きな声で叫ぶ
流奈『コールセア!先手はもらった!手出しはするなっ!!』
多数のコールセアを前に、流奈は先行すると宣言すると先手として、ミサイルをばらまく…それから抜け出したコールセアに35mmのガトリングの弾丸を集中的にかつ威圧的に放つ。
遠巻きに見ていた巴は、彼女の下へ急いだ…いくら優秀な流奈でさえ、沢山のAGを相手にするのには無理がある…。
烈月のように墜落しては、戦力にも戦闘にも不利になる…。
とにかく急いでブースターを吹かす…。
しかしながら、水月の一群がそれでも援護はしている…いくらは持ちこたえるだろう…。
しばらくは、激しい射撃戦だったがついに距離の縮まった水月とコールセアが斬り結んだところで、流奈がコールセアの軍団を縫うように一直線に駆け抜けると通った後は花火が次々に見えそこだけ穴が空いた、流奈は左腕のチェーンソーを踊るように扱いながら敵を粉砕していた。
流奈『ぬるい…ヌルいッ!!ヌル過ぎる。』けたたましいチェーンソーの音と共に流奈は格闘を繰り返して大半を完膚なきまでに破壊する。
艦砲を蛇の様にすり抜け、狼のように敵を破壊し蜂のようにトドメを与え亡霊のごとく弾の当たらないその姿から死神の異名を持つ彼女に掛かれば大軍は、造作のないことだった。
巴は、遠巻きに状況を理解し流奈への不安を除こうとしたときだったユウキが、笑いながら声をかける。
ユウキ『烈月ほど無鉄砲じゃ無いんだ流奈は、すごく優秀だから落ちやしない…巴がそんなに不安がっても、さっきみたいに「ヌルい!!」って一言で片付けるだろう…。』
ユウキは、流奈の戦闘力の高さを知ってか楽観的に語ると巴は深く息を吐いてから笑った…。
巴『流奈姉!攻撃目標を変更!!ケディスバーグ級のウスラトンカチを攻撃!戦闘艦群はケディスバーグ級から後ろのふんぞり返ったデカブツに向けて長射程からの砲撃と雷撃、ミサイルもありったけ出し切るッ!!』
再び巴が指示を出すと…流奈は巴に合わせて行動する…粗方流奈が仕留めたコールセアは、数で言えばすでに半数弱…日本軍機水月でもよほどの事が無ければ全滅は無いと踏んだ巴は、流奈を呼んで一気にケディスバーグ級を潰しにかかった、ミサイルが流奈に向かって飛んでくるのをカバーしながら確実に距離を詰める…。
対空砲が手厳しく砲撃する…。
目の前で炸裂しドンパチと花火をあげる…ユウキは、空間と砲弾に目を凝らす…巴が回避しきれない物に関してスラスターをふかして巴の回避をサポートする…。
流奈に関しては、砲弾が炸裂した手前でバックブーストをかけるて完全に敵弾に余裕もって避ける…。
それでも肩に当たり、金属のはじける音がけたたましかった…。
対空砲火を避けケディスバーグ級防盾艦に張りつくと流奈は、砲に向かってガトリングとミサイルをばらまいて艦砲機能を喪失させると巴がトドメとばかりにガンズスピアーを凪いで艦橋を吹き飛ばしてケディスバーグ級、防盾艦一隻が完全に沈黙する…。
防御面では凄まじい力を発揮する防盾艦も懐に入られてしまえば艦砲力に乏しいためにあまりにも脆弱であると巴や流奈は理解していたために単騎でしか成せない技である。
巴『あまり、この技って披露したくは無いのよねぇ…危ないし。』
やれやれと少しばかり息を吐くと二隻目もあっさりと潰してしまった二人のコンビネーションは洗練されていたのを見てユウキがチラッと三隻目を見るとみるみる形が変わる…。
ユウキ『巴、流奈姉…気をつけて三隻目ッ!見てッ!。』
流奈・巴『はぁッ!?』
流奈『何ッ!?』
巴『冗談ッ…!!』
口々に驚きの声をあげると三隻目のケディスバーグ級防盾艦は、特徴ある分厚い盾で弾き飛ばそうと…加速してきた…それも単なるケディスバーグ級防盾艦を凌ぐ加速だ…。
巴と流奈は、この防盾艦の加速に驚きつつも適切にかつギリギリで避ける…巴の肩アーマーのスタビライザーがガリガリ言っている…。
それでもギリギリ避けた事に良しとして凄まじいスピードのケディスバーグ級防盾艦を流奈は、追うが…前線に出てきたところで防盾艦は砲撃力に乏しいのは先ほども巴が言った通りだからと追うを止めた…。
すると、前線に出たケディスバーグ級防盾艦は、瞬く間に手の空いた駆逐艦とAG水月に取り囲まれてエンジンを袋叩きにされ宇宙に浮く的になってしまった…。
巴は、それを見て笑うと残る一隻を無視して流奈を連れて真っ直ぐフェニックスに向かった…。
巨大な艦体に再び近づいてまじまじと見る、巨砲主義の現れと言わんばかりに林立する戦艦砲は戦載艦ヒューガのそれを凌ぐデカさであった…。
戦艦砲が二機を捉えさらに牽制として防対空機銃が再び、雨のように彼女等を捉え集中する…。
攻撃の手を緩めないことで近づいた者を引き離す不死鳥は、遠巻きには威圧感のように見える…そのため巴と流奈苛立ちを見せ始めた。
しかしながら…不死鳥に対して伏兵がいきなりの攻撃を見せる…RAレインあらばその影にRA飛鳥、RAレイジランサー有りとばかりに対空機銃は伏兵たるレイジランサーが次々と破壊していく。
レイジ『ウチの出番なしは有り得んやろ!!』
レイジランサー…最も前衛的な機体であり…主力の近接格闘機ランに次ぐ高いポテンシャルを見せる古参のRAである、今までレインの影に隠れ姿が見えないと思っていたがどうやら…この機を伺い回り込んでいた…。
巴『レイジ!こちらが陽動する!そのまま、対空機銃を!!』
レイジ『おぉ!任された!機銃はもろうたで!』
巴の指示に動くレイジはランのようにひらりひらりと機銃伝いに艦体を進む…。
火力にむらが出来始めると流奈が先んじて前進する…。
図体のでかい艦の土手っ腹に流奈が足を付けるとアサルターバックのガトリングに火を付けた…。
バラまく弾丸は凄まじい勢いでレイジの後を追うように掃除が始まる…。
機銃、対艦ミサイルベイ、副砲、次々に爆煙があがっていく…不死鳥に取り付いたRAは凄まじい勢いである…。
しかしながら…不死鳥はそれでも堕ちない…。
艦体を動かし主砲が傾く、照準がレイジを捉えるとそのまま火を噴いた。
レイジ『あかんっ!かすった!』
砲弾は…レイジのつま先をかすりその先に、居た戦艦を一撃のもとに轟沈させた…。
レイジ『ぐっ…なんちゅう威力やっ!』
巴『戦艦を一撃…。』
流奈『まさか…っ!』
口々に再び驚きを隠せない…。
ユウキですら何も言えず開いた口がふさがらなかった…。
ユウキ『巴…あの高精度な主砲を破壊した方がこっちの艦隊にとって前進しやすいと思う。』
驚きを交えながらのユウキの提案を聞くと、それがいいと満場一致の結果が出る…。
レイジ『先に、主砲やな…あの主砲はあかん…!』
一気にトップスピードに加速できるレイジは…主砲を破壊しに前進…それを追うように流奈が出るとミサイルを次々に打ち込む…。
流奈『クソ、堅い…砕けろ!!』
流奈のアサルターバックで破壊できないほど堅固な主砲は依然として砲撃を続ける…。
流奈『クソがっ砲塔の装甲が厚すぎて話にならん!』
弾丸がダメならとチェーンソーが唸りを上げて砲身をぶった切る…それでも精度はなんぼか落ちたようで放たれた砲弾は、あさっての方向へ飛んでいった…。
レイジ『ナイスやっ流奈姉!』
巴『ほぉ…なかなかの妙案ね〜!』
砲身の破壊は、意外だった切り落とした砲身は斜め…できれある程度の精度低下につながりその後から砲塔を料理してやる…。
その先に待つ艦橋まで遡る…。
巴は、その大きな艦橋をしばらく眺めたあと思いっきりガンズスピアーを突き刺した。
深々と刺さるとスピアーを引き抜くそして、再び突き刺しけたたましい爆破音が聞こえた。
カッティングトリガーを引いたようだ…艦橋は、破壊力の増したガンズスピアーで粉々に吹き飛んだのだ。
そして…ついに、大半の主砲も破壊された不死鳥には残る火砲は少なく…出せるAGもつきたようだ…もはや死に体になった不死鳥は…艦隊の前になすすべ無く集中放火を受けることになった…。
集中放火に晒された不死鳥は、バイタルパートを撃ち貫かれたようで、大きな船体は至る所が風船のように膨らみ破裂し…胴体は分断、粉みじんになり長かった戦闘にようやく終止符がうたれた…。
戦いが終わり帰還する中ぼやきをレイジが巴にいろいろと質問をなげる…。
レイジ『いつものバカ相棒はどうしたん?』
巴『ア〜あいつはバカだからまんまと被弾しから戦載艦に置いてきた…。』
流奈『自分の火器の連射性と自分の火器管制を見くびってましたわね。』
口々に笑いがこぼれる…バカと言う肝心烈月は、戦載艦に置いてけぼりにされ…帰って来るまでに数ヶ月を要したのは言うまでもない…。
この戦いでの戦死者は3000人以上の小さくも大きな激戦になった…。
しかしながら…それだけ巨大な戦艦を建造するアメリカ軍は、衰退するにはまだまだであるが大打撃を受けたに違いないと巴は思った…。
世界は未だに先進国群の侵略、発展国群の侵略に終始圧倒され続けるであろう…。
不死鳥艦隊攻略戦 END
しばらく…して…
再び巴達に新しい任務が急遽舞い込む…。
巴の寝ぼけまなこに柿崎中将が笑顔で通信をながす…。
中将『はっはっは…先日の作戦は、ご苦労さん…巴…急ってわけなんだが、折り入って…。』
言いかけたところで巴は、通信を強制的に切り再び床についた…。