AD.20XX年…某月
日本帝国が建国され過去の日本は遠い昔になっていた頃…。
ネオトーキョーシティの街は大きな戦いで大半の家屋が壊されそのほとんどが軍需設備に成り変わり金属とコンクリートの世界となったネオトーキョーシティは物々しそうな雰囲気を見せつけると軍港には一隻の航宙艦が停泊していた…。
名は【エスアリア】
日本帝国、特殊部隊の旗艦である。
そして、この艦の直下、乗降ハッチ前で巴に似た姿の女性が士官と何やら話をしている…そこに突然、大男が斬馬刀を振り下ろし襲いかかった。
?『もらったぁぁあっ!!』
凄まじい一撃は爆音と共に地面を砕きもうもうと土煙を上げる明らかに当たれば人間など跡形も無くなるほどの威力だ…。
その強烈な一撃をかわして体勢を整えるとともヱは大きな声で大男に聞こえる位の声を出す。
ともヱ『何者だ貴様はッ!誰に向かって攻撃しているのか分かって居るのか!!』
一撃で立った土埃が晴れて大男はゆらりと立ち上がってともヱに言葉を返す…。
?『オレは烈月っつうんだ…テメエを良く知っている者だ…そしてやってる事も良くわかってやってる…。』
ともヱ『はぁ?あたしはあんたを知らない…そしてやってる事が分かるなら…即刻排除する!。』
この烈月と言う人物が何のために攻撃したのかは分からないが…少なくとも敵意半分とそれ以外の何か別の意志が半分混じっているのがともヱでも分かった…。
烈月『そうかい…そうなら…テメエをぶっ飛ばしてでもッ…!』
ともヱ『ちぃっ…仕方ない相手をしてやる…こいっ!』
先に、間合いを詰めて鋭い攻撃を繰り出したのは烈月だった…。
縦に横にと空を切る斬馬刀がはらんだ風切り音は不気味な音をたてる…。
もちろん当たれば凄まじい一撃を持つ斬馬刀だ…それをいとも軽々とまるでナイフを振り回すかのように刃渡り150cmの大刀を片手で振り回す…。
ともヱは、ギリギリの所で斬馬刀をよけると間合いを開く…それを放さず、間合いひとつ、ひとつを的確に計り容赦なく振り下ろす烈月だった。
烈月『どうした!テメエはそんなもんじゃねぇだろ!!』
烈月は、殺意を容赦なく向けて襲いかかり筋書き通りの作戦によってともヱはエスアリアの舷を背負うように追いつめた。
ともヱ『くそっ!やられる!』
ダメもとで防御をしようと腕を上げ、目をつむった瞬間だった…斬馬刀がギリギリの所でピタリと止まり烈月は一笑すると斬馬刀を収めた。
烈月『興が醒めた…今のテメエじゃ役不足だ…。』
明らかに戦闘力では自分が勝っていた…しかし、手にもった長槍が全く役に立たなかった訳だ…ともヱは、心内に惨めな敗北感が渦巻いていた…。
ともヱ『あいつ…っ!』
ギリギリと歯を食いしばり握り拳に力が入る、悔しさと怒りがこみ上げてその力がともヱの何かを突き動かしだした。
明くる日、エスアリアのトレーニングルームではともヱが猛特訓をしている姿があった…息も荒く、汗だくになったその姿を偶然、見かけたルナが急に飛び出して、ともヱを止めた。
ルナ『オーバーワークだ止めておけ…。』
ともヱ『うるさい…!あたしの好きにさせろ!』
荒れているともヱの姿にルナが感ずかないはずがない…その言動からすぐに察した。
ルナ『ともヱ…何か有ったのか話せ…。』
ともヱ『それはーーー。』
その下りで話しを始める、烈月と名乗った男の言動とまるで自分らを良く知っているかのように攻撃してくる、しかしながら…ともヱには今なすすべがない事もはなす…。
ルナ『なるほど…烈月と名乗る男が襲撃してきたと…再び襲撃されそうな予感がする…な…。』
とにかく、状況がヤバい事であるため、ある程度の対策をとルナはともヱにGPS緊急発信機を渡した…。
ルナ『とにかく…その烈月とやらが…戦闘力が高いなら出くわした時は、圧倒的に不利…だからそれを使えば私に連絡がつくから…持っておけ…。』
手渡した緊急発信機は、ルナの顔をかわいくデフォルメされたシールが貼り付けられた特別製の発信機のようだ。
ありがたくその発信機を頂戴すると一息をついて汗を拭いた…。
ともヱ『結局、やつが何者なのかは分からない…動機も分からない…。』
ルナ『現状が不明確、ならそいつに直接聞くしか無い、でしょう?むしろそっちの方が手っ取り早い…ここで動機云々を推し量っても…変わらない…。』
最もな事を話し、携帯水筒から暖かな紅茶を用意したルナはそれを差し出して笑うと対峙した場合の対策を改めて話し出した…。
ルナ『烈月とやらは役不足とともヱに言ったならしばらくは無いだろう…が…今回も来ないとは限らない…ともヱには悪いが…戦闘装具をつけて夜中警護のフリを…してもらう…そこに現れれば…。』
ともヱ『現れれば?』
ルナ『標的の目的が何かを知る事ができる…私が横からはっ倒せれば勝ったも同然…。』
自信満々に言い切ったルナの顔はニコニコしていた…よほどの対策なんだろう…。講じた対策に則ってともヱはエスアリアの昇降ハッチの前で哨戒をすると暗い物陰から長いコートに身を包んだロングヘアーの女が気配を殺し近づいてきた。
ともヱ『誰だ!そこで止まれ!』
ともヱは、銃を女に突きつけて威嚇をすると、その指示に従って女はピタッと止まりボソッと語り始めた。
如月『私は、如月…あなたを知る者…女神隊の榊原…巴…思い出して…私達を思い出して!』
如月と名乗る女は手を差し伸べて懇願するように語ると、ともヱは銃を突きつけたまましばらくじっとその女を睨みつけて沈黙を決め込む…。
如月『何も…思い出せないのですか…巴…あの日、あの時の事を…。』
ともヱ『あたしは…知らない!知らないんだ!お前は何者なんだ!昨日の烈月と言い、あんたと言い…あたしの何を知っている!』
如月『忘れてしまったのです…あの日から…【あなた達】は…【ユウキ】の事も…。』
沈痛な面もちで語るとともヱが突然、頭を抱えのたうち回る…激痛が脳裏を走り出し、ともヱは悲鳴を上げる…それを心配して如月は走り寄ろうとした瞬間だった…銃声が轟き如月の足元に風穴が空く!
ともヱ『ウグッ!…来るなぁ…あたしに寄るなぁっ!』
叫ひ激痛で半狂乱になったともヱは…銃を乱射する…。
如月は…それ以上は自分に被弾するとわかり、距離を取った瞬間だった…。
フッと、如月の横を何者かがすり抜けて行くと、ともヱに向かって行き、斬撃を加えようとする…。
それに合わせてもう一人の人影が飛び出してともヱの乱射する銃を蹴り飛ばし何者かの剣を受け止めた。
鉄のすれる金属の音がギリギリと音を発てともヱの前で刃が止まっている…。
そして、その剣を受け止めているのは先日、襲撃してきた烈月の後ろ姿だった…。
烈月『けっ…パーティーに間に合った…巴!コイツァ貸しだからな!てめぇにはいい加減戻ってもらいてぇんだ!』
ともヱ『あ…あ…れ…烈月!』
ともヱは、ルナからもらった発信機を取り出してそのスイッチを押そうとしたが烈月が横に首を振る…。
烈月『オイ、ともヱ!増援なんざ呼んだところでこのニンジャ野郎は一振りでシメんだろ…必要ねぇよ!』
烈月は、まだ余裕の表情でそのスイッチを押すことを拒むと…ともヱは、分からないがどこかこの男の言葉を信用するに足ると思いそれを押すことを止める…。
烈月『オイ…ニンジャ野郎…ウチの身内が話してるところに茶々を入れるのは無粋じゃねえか全く…てめぇのその仮面の下が拝みてぇよクソ野郎!』
烈月は、ニンジャの剣を払いのけ、斬馬刀を構えて臨戦態勢を作るとそれに合わせた如月も態勢を取る…。
烈月『如月ッ!併せは任せた…先手はオレがもらう!』
麗香『了解ッ任されました!』
ニンジャに烈月が一気に近づいて左のパンチを繰り出すとニンジャはひらりと後ろに飛び退いたかと思うと如月が鉄爪で挟み込むように切り裂くが素早く反応したのか上に飛んだ…。
それを予想していたのか如月は両手を組んで走り込み、飛び上がった烈月の土台となりニンジャのいる空に放りあげる。
烈月『くたばれ!ニンジャ野郎!』
確実に捉えた烈月の一撃がニンジャを地面に叩き落とすがダメージを見せないニンジャは、如月に襲いかかろうとしたが烈月が真後ろで横に薙り、土煙が上がる…。
かなり高速で振り抜いたはずだが煙りの向こうにニンジャの姿はなく如月と烈月は、辺りを伺う。
如月『艦長ッ!上です!』
如月が気づいて上を指すと飛んだニンジャがフッと矢のごとく空中から飛び込んでくる…そして、次の瞬間…。
ニンジャは、いきなり何かがぶつかり向こうの闇に吸い込まれていった…。
方向は、ともヱの方向からだった…。
二人は、ともヱを見るとスローイングをした態勢を取る彼女の姿があった…。
ともヱ『借りは…返したぞ…。』
烈月の借りを返したと告げるともヱは、地べたに座り込む、その姿を見て烈月は歩み寄り笑うと立つように手を差し伸べた。
烈月『ほらよ、そんな姿、ユウキが見てたら笑われっちまうぞ。』
巴『そうね…死んだ【ユウキ】に笑われてしまうわね…。』
互いに笑いながら烈月の手を引いて立ち上がると不意に烈月は暑苦しい、包容をすると巴は烈月を押しのけようと必死になると烈月は、包容を解いてあれこれ質問をする。
烈月『ユウキが撃たれた場所は?どこで何時、死んだ?』
巴『今が20XX年だと十数年前…クジュウクリ砂丘の米軍包囲戦で狙撃手に撃たれて…搬送先の国立病院で数日後に容体悪化で死んだ…でもあれは烈月は悪くないのよ。』
烈月の質問に正しくフォローを加えて答えると、感極まったのか普段泣かない烈月は、ポロポロと涙を流し出した。
烈月『よ…ようやく…戻って来やがった…このクソアマ!どれだけ…探したと思ってんだよ…!バカ…野郎!大バカ野郎…ッ!大大大ッ!おお…バカ野郎ッ!』泣き崩れる烈月を見て探し出すまでに時間がかかっていたようだ…。
ユウキが死んだあの日以来…巴は、まるで抜け殻のように日本中を巡り、各地を転戦して行った…。
加えて過去の日本がクーデターで転覆し今の日本帝国として先進国群や発展国群と火花を散らしている中で、巴達はユウキの存在や烈月の存在…ましてや、ユウキや烈月と共に過ごした日々を忘れ去っていた…記憶の中から消し去っていた…。
烈月は、その間にも影で思い出さすために小さな事から彼女達へアプローチをしていたが、しかしながら、それらは全てむなしく振り払われていくだけで効果は微々たるものだった、そして、しびれを切らして烈月は直接、巴の下に姿を現してようやく実った結果だった…。
記憶が戻った巴は、少し烈月に申し訳ない顔をすると如月も近くに寄った所を捕まえて烈月と一緒に抱き込んだ…。
巴『二人共…ありがと…ごめん…苦労をかけた…。』
烈月『うる…せえよ…うるせえよ!辛気…臭せぇよ…いつも通りにして居ろよ…巴…。』
如月『巴さん…お疲れ様…です…おかえりなさい。』
少しだけ…そこの空気は優しい雰囲気に包まれるとしばらくして…巴が話を切り出した…。
もちろん、これからの事でもある…。
巴『いくらあたしが戻ったからと言っても…みんなが戻った訳じゃない…。』
烈月『確かにな…どうすんだよ…。』
如月『作戦立案があると?』
巴『…無い!』
きっぱりと作戦が無いことを言うと巴は…後日みっちりと考えると言って烈月に連絡先を渡した…。
彼女の事だ数日後には変わった作戦を考えるだろうと烈月と如月は思い…深夜のトーキョーポートを後にする…。
如月と二人…幸を奏した事に今は充実感を得ながら…住処へと後にするのだった…。
エボルヴプラン1 END
そして…
二週間ばかりして…巴から烈月に電話が入る…。
慌ててその電話を受けると電話越しから一方的にかつ早口で巴がしゃべっている…。
巴『気をつけろ!流奈姉が…流奈ねッ…!』
主文も無いまま突然の電話にそして、ぶっつりと再び切れてしまい…後は…ツーツーツー…と音が続くだけで烈月は…ただならぬ不安感を巨大に巡らせるのだった。