「そんなこんなで滝壺から落ちてこの河原まで流されたみたいだね。どれくらいの距離かはちょっとわかんないけど」

少年は昨晩の顛末を掻い摘み語った。
セレネは一言、

「よく生きていたな……」

呆れとも感嘆ともつかない様子である。

「滝壺は大きな岩を爆砕して、あとは斥力を発生させてなんとかしたんだ」

「そういうことではない!!」

そろそろ昼前に近い。空は高く澄み渡り、ゆっくりと雲が流れて行く。
少年の衣類は既に乾いていた。
セレネは立ち上がる。

「よし、では行くか」

「どこへ?」

あっさりと何気ない返答が来た。

「貴様の荷物を取り返しに行くんだ」

少年は呆気に取られて少女を見上げる。

(なんだ、それ)

セレネは当たり前の事を言っただけの様で、少年の反応に却って疑問符を浮かべている。

「何だ貴様。荷物が惜しくないのか?」

「惜しいけど、もう処分されていると思う……って違う! 君がそんな事してどんな益あるんだ!?」

「益、か。確かに私には利益も得も無いだろうな」

「だったら……」