三日坊主の恋(前編)
5時間目となると眠い。ぴっかりくんの現代社会は、とくにあたしの子守唄。眠たくなる。
一番後ろの窓側の席があたしの席。
日あたりよし。風あたりよし。先生の視覚に入りやすい席って言われたけど、一番前よりは全然マシ。生ぬるい風があたって、ぽかぽかお日様は布団みたいですぐに寝られる。
あまりにも眠たかったから、机の引き出しの中に隠していたiPhon●をぴっかりくんに見えないようにタッチする。カバーは、キテ●ちゃん。昨日、ロフ●で買ったばかり。だからまだ新しくてお気に入り。…まあ、飽きたら、すぐに変えちゃうんだろうけどなぁ。
あたしは、眠さを紛れさせるため、LIN●を開き女友達の海美にメッセージを送信。
『授業つまんない(。-_-。)』
『遊ぶ?』
『遊ぶってなにするのw?』
海美の返信はいつも早い。
短文で、絵文字がないからかな?
笑いをかみしめ迷わず送信。
『あのオンラインゲーム』
『いや(。-_-。)』
『えーなんで?』
『そんな気分じゃない(´Д` )』
『ぉk。気が向いたら来てよ』
そんなやりとりをして海美とのLIN●終了。あのオンラインゲーム。無料版のアプリ。ただモンスターを狩って仲間作ってチャットするゲームなんだけど、ハマったら面白いんだって。あたしの場合3日で飽きちゃったけど。
授業終了まで後30分。窓の外をみる。葉桜の下で、3組の男子と4組の男子がサッカーしている。いいな。体育。一番体育が好き。
格好いい子いないかな。高校一年生になったんだから恋人作りたいな。
ずっと見てると、体育座りして順番を待っている仲の良い5人組を発見。
あっ。あいつら同中だ。あいつら知ってる。すると、黒縁眼鏡をかけている質戯くんと目があう。質戯くんは、中学の時成績トップで運動神経いいからクラスの注目の的だった。だけど質戯くんの隣にいる、ふわふわ美人の桜花さんと付き合ってるから除外と。
桜花さんのとなりで、11番ユニフォーム着ている真嶋は、茶髪でいかにも高校デビューしました!って感じでないな。ノリ男ってやつ。あんま好きじゃない。
真嶋の右隣にいる総賀は 、無口でよくわからないけど、中学三年間ずっと同じクラスだった。顏いいけど除外除外。よく分からない奴はあんまり好きじゃない。
渚さんは、桜花さんとはまた違った気の強いボム美人。あたしみたいなギャルとは違い高嶺の花的な…。
そういえば、中学生時代。質戯くん、真嶋、総賀、渚さん、桜花さんの他に山口くんが仲良かった。あのグループは、中学生の時、確か変な部活を作っていたな。…児童文学童話愛好研究会だっけ。いかにも大学の文学部ノリでよくイジメられなかったなと思ってたけど、性格良し、頭良しの5人組はイジメられることがなかった。高校でもあの変な部活を作るのかな?
あいつらの番がやってきた。渚さん桜花さんは体育座りで見学中。おいおい。あの2人サボりかよ。
さすが、同中組。サッカーボールを仲間チームで回していく。まだ慣れていないチームと比べると一目瞭然。同中チームがサッカーボールをゴールに入れて目立っていた。ナイスシュート。叫んだ男子。シュートをした質戯くんを真嶋は、太陽のような笑顏で肩を抱いてる。
真嶋と質戯くんか。いつも隣にいたのは山口くんだったはず。
…山口くん。この2クラスにいないのかな?
授業終了のチャイムが流れた。多分勝ったのは、同中チームがいるクラスだ。授業は後2時間。10分休憩開始とともになんとなくあたしは、フラフラと靴箱へむかった。山口…山口…。山口。
「羽亜さん」「美雨ちゃん」
靴箱を見ていると、質戯くんと桜花さんに同時に声をかけられた。あたしは、靴箱から目線を2人に向けた。
「ナイスシュート。質戯くん。」
「ありがとう」
「うん!!だよね!涼ちゃん格好良かった!!あれ?美雨ちゃん見てたん?」
「うん。桜花さんは、渚さんとサボってたね。真嶋はなんかウザかった」
「ちょ。羽亜ひどすぎ。」
ウザ真嶋と無口総賀が来た。
「 羽亜さん。
ところで4組の靴箱来てどうしたんだ?」
「あんたら全員4組なの?」
4人は、にやっと笑って頷く。
「うわ、ムカつく羨ましい。となると、山口くんは1組か、3組でしょ」
4人は、一瞬顔を曇らせた。
「あっ、ビンゴ?」
「…いや。山口は、東京の高校行ったんだよ。」
「え…はあ?なんで?東京の学校に行くなんて一言も聞いてないよ」
「まあ、あいつ湿っぽいお別れとか嫌いやからな。俺も聞いてへんで。」
「真嶋…」
キーンコーンカーンコーン
「あっ、やば。予鈴なった。」
「ごめん!早く着替えないといけなかったね!じゃあね」
とあたしは、手を振り行く。
「あっ、美雨ちゃん…」
5組に戻ってきて、あたしは席に座る。次の授業は現国だ。授業の準備をして。起立礼着席をして。あたしは、キテ●ちゃん柄の筆箱から、キーホルダーつきのシャーペンを出した。
あたしは、先生が書いてある黒板を見て板書する。最初のうちは、ちゃんと写していたけど、手が止まった。ノートに現国には関係のない名前を書いた。
山口 優次。
山口くんは、あたしが初めて付き合った人で三日で別れた人だった。