0cmの距離 10 (絶チル)
2017/06/02 16:16
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皆本の視線の先をたどると自分の手を握りこんで眠っている##name_1##がいた。動揺していたとはいえ、触れられていることに最初に気付かなかったなんて、よほど彼女の体温が馴染んでいたからに違いない。##name_1##が身じろぎをする前に賢木は、あ、目が覚めるな、と思った。静かに目を開けて、握りしめていた手から段々と視線をあげていく。賢木と目があった瞬間には、すでに目には涙が浮かんでいた。

「修ちゃん!」

ためらいもなく胸元に飛び込んできた彼女から目が覚めてよかったと安堵する声が流れてくる。いっしょに眠っている間の記憶も流れてきた。念動力を生体コントロールという形でしか発現できない合成能力者の賢木と違い超度5の念動力者でしかない複合能力者の##name_1##では賢木ほど完璧に生体コントロールができるわけではない。サイコメトリーと透視能力で体の状態を診て、把握し、それに従って念動力を応用することは可能であるが、こと生体コントロールに限るとその正確差は賢木の方が上だ。賢木が寝ている間中、不慣れなことをした結果が、無防備な先ほどの寝姿だった。


はっと我に返った彼女が素早い身のこなしで離れる。身体に残った体温を名残惜しく思いながら##name_1##を眺めていると彼女はさっと病室に置かれた簡素な椅子から立ち上がり肩に鞄をかけた。

「それじゃあ、午前診療がありますので私はこれで。賢木先生の患者さんも私が見ておきますから先生はどうぞゆっくり休んでください」

早口にまくしたて扉から出て行く。呼び方と口調をいくら仕事モードに切り替えて取り繕ったって、そそくさと出て行く後姿を見ればそれが照れ隠しであることは明白だった。透視しなくたって、みんなに見られて恥ずかしいと##name_1##が思っていることは確実である。目覚めたときが二人きりであったならば珍しく甘い雰囲気を味わえたのにと思うと惜しむ気持ちがないとは言えない。

「##name_1##さんって、賢木センセイの前だとああなるのね」

「意外やな〜」

「センセイいいな〜。ギャップ萌えだよ!か〜、羨ましいね、このこの!」

まるで昼休憩中のOLのような紫穂と葵、まるっきり親父のように絡んでくる薫。いつも通りのチルドレンに迷惑をかけてしまったという暗い気持ちはいくぶん晴れていた。

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