「ただいまー!」

ガラッと
玄関の戸を開けた途端
二郎が
勢いよく飛び出してきた


「なんでこんな大事な時に
携帯切ってるんですか?!
あなたは!!」


いつにない二郎の剣幕に
さすがの一郎も
押され気味だ

「ごめん
釣りの最中は切ってた」

『釣り?』

四郎があれ?と
戸のかげから
ひょっこり顔を出した


「あっ!」

「しろー!」

「ごろー!!
おかえりーーーっ!」


にっこり笑った四郎を
おもいっきりハグッ!

四郎と五郎
もうずいぶん長いこと
会えなかったみたいに
背中をポンポンたたきあった


「よかったなぁ〜!
みんな無事で」

ホッとおだやかな瞳で
二郎が見つめてる

元気な五郎の姿を見て
怒りはスッとひいたようだ

まぁ
二郎から一郎へのおこごとが
そんな長く
続いたためしがない


「それにしても
三郎くんにはビックリしたよ
村の人呼びに行くって
今来た道逆方向に
走ってくんだもん!」

「ははははっ」

頭をかきながら三郎が笑った


その日の晩ごはんには
もう一品おかずが増えた

ヤマメの塩焼き
一郎が釣ってきたものだ

「釣りはやらないって
言ってなかったっけ?」

二郎が聞くと

「お隣りの
山田さんに誘われて
行ってみたら楽しくてさぁ」

それから
ひまわり畑の草取りの帰りに
ちょくちょく

ごはんのあと

もらってきた冷えたすいかを
食べながらつぶやいた


「今度は海で釣りてぇなぁ」





次の日

村の人たちに
お礼を行ってまわって
その帰り

みんなで
ひまわり畑を見に行った


「うわっすげーーーーっ!」


三郎が叫んだ
見渡す限りの黄色い花!!

四郎が小さく
「わあ・・・」と
つぶやいたまま立ちつくす


「いこーぜっ!」

五郎に引っぱられ
畑の中を走ってく

そのあとを歩く二郎が

「これかあっ!」


これが一郎が話してた
ひまわり畑

想像したより
ずっと広くて綺麗で


見事だなぁ


これを見せたかったんだ


会ったことのない
その人に思いを巡らせる

遠目にはしゃぐ弟たちの
楽しそうな姿を
眺めながら・・・


あっ
三郎が振り返った


「なんでっおれにも
話してくれなかったのさぁーーーーーーっっ?!」


でけぇ声だな!おいっ!


「だってお前に言ったら
うっかり
しゃべってしまうかも
しれねぇだろーーーっ!!」

「言わねーーーーよっ!!」


でけぇ声で返しあう


一郎が「ふふっ」と笑った


ひと夏かぎりの
黄色い花が
空を仰いで咲いている