話題:SS
【かつて、百貨店の屋上にあったものは何か?】
そんな問いがあるとして、君なら何と答えるだろう。
小さな遊園地、動物の乗物、植物園、ゲームコーナー……。いや、恐らく君はそういう具体的な答え方はしない。その洗練された精神は、もっと簡潔で、それでいて全てを象徴的に包含するようなスマートな答を導き出す筈だ。例えば、そう――『かつて百貨店の屋上には“夢”があった』――といった具合に。
そして僕は、概ねそれに同意するだろう。だから――と云う訳でもないのだが――これは、そんな“夢の欠片”のような話だと思って気楽に聴いて欲しいのだが……。
まだ幼い時分、東北の某県で行われた遠い親戚の何回忌だかの法要に家族揃って出席した折り、【M百貨店】という古いデパートに立ち寄った事がある。
君ぐらいの年齢ならば心に覚えもあると思うが、その昔、百貨店というのは、よそゆきの服を着ておめかしして出掛けるような少し特別な場所だった。
勿論、今でも百貨店の名を冠したデパートはある。けれども、昨今のデパートは、よりモール型の総合ショッピングセンターに近づいた形、つまり種々の独立テナントが寄り集まって存在する、云わば〈連邦共和国〉のような形態に変わりつつあると僕は考えている。もし、その喩えが有効ならば、昔の百貨店はさしずめ〈王国〉と云ったところだろうか。
百貨店にお出掛けするというのは、王国へ出向いて王様のいる城に登城する事であり、故に正装が必要だった。そんな風に考える事も出来る。言うまでもなく、そこに本物の王様など居はしない。居るのはシンボルとしての王様だ。
《続きは追記からどうぞ》
ところで、当時ちょっと気のきいた百貨店の屋上に必ずと云っていいほど存在していた展望鏡の事は覚えているだろうか?
そう、地面に固定された双眼式の大きな望遠鏡だ。正式には観光望遠鏡というらしい。十円玉とか百円玉といった硬貨を入れると接眼部のシャッターが電動で開き、一定時間、その先にある風景の展望が可能となる。そういったメカニズムの装置だ。
その頃は、昨今のような高層マンションの乱立もなく、百貨店は街で最も高い建物である事が多かった。当然、その屋上は街の最も高い場所となっていた。ああ、勿論それは、市街地において人間が気軽に立ち寄れる人工建造物、一般的な生活居住空間という意味でだ。単純な高さの比較でいえば電波塔などもあったからね。
まあ、それは兎も角。空と街が出逢う場所、その境界面、或いは接合面、それが百貨店の屋上だった訳だ。それはとても象徴的だと僕は思っている。空という〈自然界、天上界〉と街という〈人間界〉、そんな二つの異なる世界の“継ぎ目”は、やはり特別な場所であるように思えるからだ。こういう特異点とも云うべき場所では、日常の常識を超えた不思議な何かが起こりそうな気配がある。少なくとも僕の感覚はそう訴えかけてくる。
事実、百貨店の屋上には先にも云ったように小さな遊園地などメルヘンチックというかファンタジックというか、現実の世界からは少し遊離したような光景が広がっている事が多かった。
話を元に戻そう。件の【M百貨店】は地方都市のデパートであるから、大都会の百貨店――例えば、三越や高島屋など――に比べれば規模も小さく華やかさも少し足りていない印象だった。けれども、その垢抜けなさが逆に独特の落ち着いた雰囲気を生み出していたようにも思う。
そんな【M百貨店】の屋上にも、やはり、“小さな夢の世界”は存在していた。不自然にカラフルな緑色の敷物の上にオーバルな楕円を描くように線路がひかれ、その上を玩具のような蒸気機関車が走っている。線路の内側には積み木の城を中心とした子ども広場。動物のゴーカートや小さなゲーム場もあったように思う。
そして、屋上の外周を囲む無機質なフェンスの内側に三台の展望鏡がコンクリートの台座の上に横並びに置かれていた。先端のレンズ部がフェンスの上から少しだけ外にせり出している。風雨に晒され続けたせいか、ところどころ白いペンキが剥がれ落ち、赤茶けた鉄の錆がむき出しになっているのが判る。
その時、僕は独りで【M百貨店】の屋上にいた。何故、独りだったのか。それは、どうしても思い出せない。恐らく両親と弟は下の階で買い物をしていたのだと思う。買い物を終えた後は屋上で遊ぶ約束になっていたので、一足早く僕だけが先に屋上に来て皆を待っていた。そんなところだろう。
やけに明るい曇り空が広がっていた。僕以外の人間は誰も居ない。今にして思えば、いくら平日とは言え、百貨店の屋上に人っこひとり居ないというのは奇妙に思える。雨が降りそうな気配もなかったし、店内は人で賑わっていた。屋上だけが無人というのは、おかしな話だ。けれども、その時の僕はさほどその事を気には留めなかった。そして、僕の足は何故だか自然に展望鏡へと向かっていた。
まず僕は、ズボンのポケットから小さな財布を取り出して、中に小銭が幾らか入っているのを確かめた。十円玉と百円玉で三百四十円ほどあった。展望鏡は十円で一分間なので十分な金額だ。展望鏡のレンズは睨下に広がる街の遥か先に青青として連なる山の斜面と、その手前の広大な花畑へと向けられていた。ラベンダーの花畑だ。そこは、つい先程(法事の催事場からの帰りに)タクシーで通ったばかりだった。
そこで僕は、ある違和感を覚えた。
それは三台並んだ展望鏡の一つが、やけにピカピカして綺麗な事だった。他の二台は塗装が剥げて鉄の赤錆が見えているのに、右端の一台だけが妙に真新しい。無論、実際にその一台だけが新品だという可能性もある。しかし…それは、ただ真新しいというだけでなく、何と言うか…他の二台とは異質な匂いを放っているように見えた。
僕は、その真新しい展望鏡で風景を眺めてみようと思った。近くに置いてあった踏み台を持ってきて、その上に登る。展望鏡の硬貨投入ボックスに財布から出した十円玉を一枚入れ、ランプの表示色が赤から緑に変わったのを確かめてから、接眼部に両目をあて、中を覗き込んだ……。
***
ええと、本来は前後編に分けるような話ではないのですが…文字数がやや多くなってしまったので、読みやすさという点だけで、敢えて前後編に分けてお届けしようと思います。まあ、大した話ではないので、気軽に読み飛ばして頂ければ幸いにて御座ります。後編は明日にでも、と考えております。
おっ、シンクロしたねー!(〃ω〃)
昭和の百貨店の食堂って、色んなものが詰まってたよね♪食品サンプルも本物にはない作り物ならではの魅力があって、ずっと眺めていたくなる。
で、時計盤の針みたいなので階数を表示するレトロなエレベーター!( 〃▽〃)なんか、もう堪りませんな♪家に一機欲しいぐらいだ(笑)昭和の百貨店がその当時から既にもっていたレトロ感って、格式とか格調(の高さ)に通じているんだろうな、きっと♪(〃ω〃)食堂の三種の神器も判る♪同じお子さまランチでも百貨店によってけっこう変わってくるしね♪
プリン・ア・ラ・モードなんて、ほとんどアリス・イン・ワンダーランドみたいなものですわ。異国的でお洒落で(//∇//)
高速のSAとかPAも或る意味確かに異世界かも知れない(笑)特に食べたい訳じゃないのに、ついつい、ソフトクリームとかフランクフルトとか買っちゃうもの(笑)(/▽\)♪ その、キツネうどんってのも気になるな〜♪
鉄の赤錆が剥き出しになってる機械がちょっと怖いっていうのも判る気がする…。なんか、生きてるというか妖怪的というか…錆びまくりでボロボロの状態で置かれている中古車とかもやっぱりちょっと怖い(((・・;)
そしてそして…
『この物語は音が無い世界のように感じた♪正確 に言うと音自体は存在しているんだけど、水中 や夢の中の世界のように、耳に入ってこなく て・・想念だけが頭の中にある、みたいな』
思わずハッとしてしまった(☆o☆)
そう言えば確かに、何となくそういうイメージ持ちながらこの話を書いたような気がする…。実に鋭い感覚だ!(〃ω〃)
白い服の男は…羽生君のCOOLな王子のイメージでOK(笑)d(⌒ー⌒)!
数日前に、マルカンデパート(花巻)に現存する昭和さながらの大食堂の話や、阪急百貨店にある時計の盤のように階数を指すレトロなエレベーターの話を読んだとこだったから♪♪
そうそう自分も何故か、花やしきや浅草十二階を思い出したとですよ!V(☆o★)V屋上の遊園地は年中直射日光に晒されているから当時でも色褪せていた☆だけど不思議と色鮮やかに見えていたんだ・・
ガラスの向こうにある食品レプリカ☆クリームソーダ、プリンアラモード、お子様ランチが子どもにとっての三種の神器だったな・・(^_-)-☆テイスト変わるけど、高速のパーキングエリアで家族揃って食べたきつねうどんも美味しかったなァ・・♪(゜レ゜)
赤錆びのついた展望鏡、怖かった思い出がある(笑)ラピュタに出てくるロボットの頭部に似ていたから・・錆びも怖いものだった、焼けただれた皮膚を連想したから・・今思い返せば怖がりの子どもだったな(笑)
この物語は音が無い世界のように感じた♪正確に言うと音自体は存在しているんだけど、水中や夢の中の世界のように、耳に入ってこなくて・・想念だけが頭の中にある、みたいな。
だから白い人に声をかけられた時少しびっくりした(笑)白い人はNONSTYLE石田が真っ先に思い浮かんだけど、ここは羽生結弦くんが適役だろうなー(笑)
ああ、そのノリ…と言うか気持ち、判ります(笑)♪(/▽\)
それなら私も参りましょう♪怪盗キッドばりの服装で。
…手品グッズコーナーの実演販売の人に思われそうですが(笑)
で、焼きそばに入っているキャベツの芯。ソースの辛みのせいか、甘さが引き立ちますよねー♪( 〃▽〃)
おめかしして行きましたよね、百貨店♪(^o^)/
私の場合も、最も近い百貨店で20qぐらいは離れていたので(当時、うちに車はなかったし)、観光旅行気分というの少し判ります♪(/▽\)
で…「押し絵と旅する男」!まさか、ここで登場するとは(笑) 思わず笑ってしまいましたヾ(*T▽T*)
服装は名探偵コナンばりで
百貨店の屋上と言えばキャベツの芯が入った焼きそばです
ちなみに目玉焼きものせてある
完全に旅行で観光地に行くノリでしたね。
……遊園地と公園の、判別付かない生活レベル送ってた子供でしたしorz。
展望双眼鏡から見えるもの……案外押し絵と旅する男だったりして。←それ、よその人の小説や!
行きましたよねぇ…おめかしして(照)(//∇//)
エレベーターもエスカレーターも、ただ乗るだけで楽しかった(笑)
最上階とか高層階のレストランでお食事。
同じくとても楽しみにしてました♪あの頃の感覚…今となっては、なかなか味わせませんよね(/▽\)♪
で、北海道…なるほどー♪そこは盲点でした(照)
真冬の屋上とか、とんでもなく寒そう(///∇///)
ああ…大した事は起きないので、あまり期待しませぬように(笑)f(^ー^;
もっと劇的な展開に持っていけば良かったかな…と。でも、それだと話が10倍ぐらい長くなりそうだ(汗)
おめかししてデパート行きましたぁ
お年玉を大事に抱えて
買い物連れてってもらいました
エスカレーター乗るのドキドキしました
デパ地下じゃなくて屋上より下のレストラン入るの嬉しかった
北海道は寒いから屋上ってあまりイメージないですが。
望遠鏡ワクワクしますね( ´ ▽ ` )ノ
めっちゃきになるー
やはりーミライのジブンかしら?