第8弾目は十二支がモチーフです。一部不使用可。
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鼠
ただ遊んで欲しかっただけなのに、どうして僕を除け者にするの?どうして仲間にいれてくれないの?
「いつ、裏切るかも分からねぇヤツと一緒にいられるかよ」
ネコは言った。
ネズミに言った。
ネコはいつまでもネズミを憎み、ネズミはいつまでもひとりぼっちのまま。
「ごめ、な…さぃ…」
無限ループを解くひとつの言葉が、今放たれる。
ネコは、ただ嬉しそうに笑ってネズミの頭を撫でた。
牛
勝手に馬鹿だと、ノロマだと決め付けないで。
「俺を馬鹿だと罵れるほどてめぇは頭いいのかよ。俺をノロマだと馬鹿にできるくらい、てめぇはご立派にできてるのか?勝てねぇと分かってる相手に罵声を放るお前のほうが、よっぽどの馬鹿じゃねぇのかよ」
ウシが放つ言葉はいつも、人を拒絶するものばかりで。ひとり佇むその姿は、なぜか悲しい。
「勝手に…決めつけて、俺を見るな…っ」
そんなウシの落ちた涙を見るものは、ない。
虎
荘厳で威厳があるけれど。
「たまには甘えさせてよ。ねぇ。アンタにだけは牙を向けないし、じゃれる時だってめいっぱい手加減するよ?誰かがアンタを泣かせたなら俺がソイツを殺すし、俺は泣かせたりしないから…ねぇ、」
虎は笑みを浮かべる。
「なんで泣いてんの?」
自らの言葉が、行動が、最愛の人を傷付けているということも知らずに。
兎
逃げるためのこの脚力を今は追うためだけに使う。だって欲しいから。アレだけはどんなことをしてでも、自分の力で手に入れたいから。
「鬼ごっこは、もうおわり?」
息を切らせて、やっと捕まえたソレを後ろから抱き締めれば、ようやく安堵の溜め息をついた。
「もう…離してやんないから…。せいぜい、後悔しな」
自嘲じみたその言葉、その笑みが、本物に変わるとき、彼は本当の恋を知る。
龍
存在を信じてもらえるその日まで待ち続けるから、早く迎えにきてよ。
暗い暗い穴の奥で、今日も自らの体を抱き締めるようにして眠る。
「寒い、」
「もう寒くない」
「…遅いよ」
「悪かった」
「ばか…っ、」
闇の中から、光の世界へ。
飛び出すまであと数分――…。
蛇
紅い目で全てを見透かして相手の思考を読み、三歩先の行動を予測して、できるだけ自分への被害が少ないように、利益が大きいように、行動する。
「なんでだろうな…。お前だけは、読めない。どうしても、気付けばいつも俺が振り回されてばかりだ」
溜め息混じりにそう呟けば、ソイツはおかしそうに笑みをこぼす。不意打ちとしかいえないその笑顔は、不思議と嫌な気はしない。
むしろ、愛しいとさえ想うのは、なぜだろう…。
かつてない感情に、ヘビはただ首を傾げた。
馬
乗りこなすには、もう少し時間が必要でしょ。そう簡単に、僕をなつかせようとしても無駄だからね。
「……そう言いながら、いつもお前から寄って来るよな…?」
少し天邪鬼なウマは、いつも構ってほしくてしょうがない。
「うるさいなー。光栄でしょ?この僕が君なんかの隣にいるんだよ?」
「はいはい」
だってこの時間が、この瞬間が、一番大好きなんだ。
羊
毛刈りされて随分痩せて。
「無様なものだな」
そう言われてもしょうがないと思う。気持悪いものでも見るかのようなその視線が当たり前だと思ってて、死ぬまでひとり、こうやって生きていくんだと思ってた。
「ちょっ…お前、大丈夫か!?」
人は世間知らずだと君を馬鹿にしていたけれど、君が世間知らずなおかげで僕はあそこから抜け出せた。
大丈夫か、その言葉が死ぬほど嬉しかった。
「今、助けてやるから!!」
差し出された手が、温もりが、涙が出るほど嬉しかった。
猿
犬は嫌い。でも羨ましいと思ってる。
「近付くんじゃねぇよ!!お前が近付くだけで鳥肌がたっちまう!!」
鳥
いつも何処でも苦労して今日も今日とて仲裁役。
「ご飯の時くらい我慢してください」
犬
猿は嫌い。でも凄いと思ってる。
「そりゃこっちのセリフだごらぁ!!」
つっかかってこればこっちも黙ってられないから。いつものイヌの言葉に言い返す。
なんだかんだと言っても、これが普通で皆これが楽しい。
猪
真っ直ぐにしか突き進めないけれどたまには回り道して、寄り道してみたい。そんなの自分の心がけ次第だとあなたは言うけれど。
「自分を変えるって結構…勇気いるんだよね」
だから今日もまっすぐあなたのところへ帰ります。
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