高橋大輔が現役に戻ってきた。

近畿選手権が始まる2.3日前から、
私は仕事が手につかなくて
ソワソワドキドキしていた。
だってその少し前に肉離れしてアイスショーへの出演をやめたから余計に。
(とはいえ、みんなの前でジャージ姿で挨拶してくれるところは、さすがだなと思ったけど)

自分のために現役復帰する。

その言葉が、現役を見守ってきたファンにとってどれだけ嬉しかっただろう。
彼は過大評価ではなく、事実、男子フィギュアの牽引者だ。

私は名古屋出身というのも手伝ってか、そもそもフィギュアスケートが好きだった。
自身もよくスケートリンクで遊んでいたし、近所にもあったしで身近な存在だった。
とはいえ、テレビでやっていたら観る、
という程度だったし、ジャンプの見分けもつかないようなただの視聴者。
何となく村主章枝選手が好きで、応援はしていた。
観るのは女子フィギュアとアイスダンス。
アイスダンスのアクロバティックで美しい演技はまるでシルクドソレイユを見るような気持ちで見ていたし、
綺麗な衣装を着て踊るように滑る海外の選手は
とても可愛くて綺麗で、うっとり眺めるだけだった。
男子フィギュアは、そもそもテレビの放映時間がめちゃくちゃ遅いので、子供には起きていられなくて寝てしまったり、あとは何より興味が持てなかった。

そんな私がたまたま目にしたのが、
高橋大輔の
「白鳥の湖〜HIP HOP Ver.〜」

凄かった。
初めて、男子のフィギュアに興味が湧き、
めちゃくちゃカッコいい、美しくてカッコいいと思った。

高橋大輔は常に期待されていた。
女子ではまず安藤美姫に始まり、浅田真央という大スターが登場した。
彼が昔から言っていた、男子フィギュアになるとお客さんがいなくなる、と。
私もテレビで観てて思ってた。
男子フィギュア観てるお客さん少ないなー、つまんないんだろうなって。
私は観てもいなかったけど、そうなんだろうとおもってた。
そこを変えたい。お客さんをいっぱいにしたい。
そのモチベーションもあっただろう。
男子フィギュアを間違いなく背負っていた。
その背中を知っている。
いつも周りのことを考えて、謙虚で、控えめで。

見た目のチャラさが、私は最初苦手で、
「スケートはずば抜けてカッコいいけどチャラチャラしてるなー」と思ってた。
でも知れば知るほど、優しい人柄や、謙虚なところ、面倒見のいいところ、努力家で素直なところ、、、それを知って、内面も好きになった。
自己評価の低さにイラつくこともあったけど(笑)

自己評価が低いんじゃなく、理想・目標というか、
自分の中の「OKライン」が高いため、
それ以下は全てダメだという自己評価になるのだとわかった時は、
目から鱗というか、これが世界に行く人のレベルなんだ、と思った。

ソチの前の全日本選手権
その前にまた膝を怪我して
当時、全日本を回避したらオリンピックは出場出来ないって言われてて
(条件を既に満たしていたので出られる筈だったのに)
怪我をおして出た全日本で優勝は出来ず
それでもやっぱりオリンピック出場は高橋大輔!とコールされて
知らない人の目には大ちゃんがきっと贔屓されてる、嫌な奴にうつっただろう。
(しかもソチ後のキス写真流出である…)

頑張りたい、結果を残さなきゃ
でも怪我の状態が良くない
国内の調整でも全然上手くいかない
(この時の辛さは、歌子先生や織田くんが語っていましたね)
膝の水を抜いてやっと、ぎりぎりで滑っている姿
それでも大きなミスなくまとめて、
「みんなへの感謝、愛」というテーマで滑ったFS

真央ちゃんのフリーも感動したけど、
私はその時の大ちゃんが、芸術というかスポーツというか、そういう枠を越えて、とにかく本当に人として、
一段高いところにいる人だな、徳が違うなと
神々しくて、ぼうっとしてしまったのを覚えている。

最初の怪我
左十字靭帯断裂という大怪我から復帰したアスリートは、医学的にもかなり貴重な存在で
そこから復帰しての日本男子、アジア男子初のフィギュアのメダル
怪我をする前は跳ていた4回転だけど
怪我のあとに作り直して、それでも4回転を入れないという選択肢は大ちゃんの中には無かったと言っていた。
当時はまだ4回転時代になる過渡期で、
結局4回転を回避したライサチェクが金メダルになった。
プルシェンコが「4回転に挑んだダイスケは素晴らしい」的なことをライサチェクの金メダル、自身の銀メダルの皮肉的に言ってたけど
誰がやる、やらないとか、
メダルをとるとらないではなくて
アスリートとして、4回転時代に入っていくだろうときに
それにチャレンジしないという選択肢が自分の中に無かったんだろうなと思う。
そして失敗してしまい銅メダルだったわけだけど、すごく高橋大輔らしいし、更に好きになった。
(ライサチェクがどう、プルシェンコがどうとか言いたいわけじゃない。ただそういう論争は当時あった)

話しがあちこちいってしまう。
とにかくそんな人間性がとても好きだ。
アスリートとして、表現者として、
人間の生き方として、尊敬している。

でもなにより、私は高橋大輔のスケートが心底好きで、惚れているのだ。
スワンレイクから始まった高橋大輔沼に、
もう15年以上浸かってしまって
歳を重ねるごとに深みが増し、
味わいが増し、成長し続けるあの人に。

私は西川貴教さんが、ライブで歌を歌ったとき、
挑むような目つきもそうだし、でも何より、
歌うことが本当に好きなんだ、ライブが本当に好きなんだ、っていうあの笑顔、あの表情
それを見たときに、私も最高に幸せだ!ってなる。
今、高橋大輔が、「楽しい」「充実している」
「幸せ」って言ってることが、どれだけ私にとっても幸せだろう。
こんなにも求める人が多いのに、こんなにもファンは世界中にいるのに、それに気付いてないようなことしか言わなかった人が、
「長い間愛してくれてありがとうございます」って言ってくれたことに、自分がファンに心から愛されてると自覚してくれたことで、どれだけのファンが泣いていることだろう。
「もっとできる」「見ておけよって思う」「今の方が当時より身体が使えてる」って前向きな発言をしてくれることがどれだけすごいことか。
そして「若い子に負けられない。」「勝てれば嬉しいし負けても悔しくない。自分を越えて世界にいってもらわないと。負けても悔しくないっていうか、悔しいけれど嬉しい」なんでこんなに、愛情深いのだろう。スケートに対して。周りに対して。
そして「復帰してよかった」
これに尽きる。



私も、4年ぶりに、試合前の緊張感、ソワソワワクワクドキドキ、落ち着かないときを過ごしているよ。
でもそれと同時に、とても幸せなんだ。

高橋大輔が表現する世界を、また緊張感とともに味わうことのできる幸せ。