私は今、監禁されているらしい。
らしい≠ニいう発言については、しっかりとした理由がある。その理由は、自分に「 監禁をされている 」という自覚がないという事。そして、目の前に居る お兄さん はとっても優しくて、私にも気を遣ってくれている。監禁していると言っても、毎日ご飯をくれるし、寧ろ自分の家に居る時より満足な生活を嗜んでいるのかも知れない。不自由もなく、自由に暮らせるこの場所が、多少なりとも気に入っていた。家では、親がガミガミと言ってきたりと、毎日ストレスでパンクしそうになる。でも、お兄さんはそれでも親身に私の話を聞いてくれてて、コッチもお兄さんになら何でも話せちゃえそうな気がしてくる。
「 あのね、お兄さん。――私って面倒臭い? 」
「 ん?いきなり、どうしたの?でもそんなの気にしなくても、全然面倒臭くないよ 」
「 そっか!お兄さん、有り難うっ、 」
いきなりの質問に少し、驚いて目を細める。今までに、そんな質問はして来なかったしそもそもしなかっただろう。最近、何となくだが彼女の自分への接し方が以前とは違うのは薄々は感じていた。それでも見て見ぬフリをしているのは自分だし、とやかく言う筋合いも無いだろうと把握している。「 面倒臭い? 」と人に聞かれるのは初めてだけれども、別に答えがない訳ではない。彼女は自分を必要としてくれているし、何よりも慕ってくれている。その事に感謝しつつも、どうせ何時までもこの場所に居られなないという事は分かっている。目の前でニコニコとした笑みで自分と接してくれている彼女を見ていると、毎回の如くそう思ってしまう。
「 いっそ、此処から消えちゃおうか 」
「 ……お兄さん?どうかしたの? 」
「 ううん、何でもないよ。君は気にせず、俺と一緒に居れば良いから 」
お兄さんは私には聞こえないように、何かを呟いているのは知っていた。でも、お兄さんは私に気を遣ってかはまだ分かんないけど極力私にはそんな事聞かせないようにしてたんだと思う。その気遣いが嬉しかったり、少し――心配になったりフクザツで自分でも何を思っているのかたまに分からなくなる。でも、そんなお兄さんを信頼しているのは間違いない。だからあ、私はお兄さんにずっと付いて行く。例え、邪魔が入ったとしても――ね。
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弑樺さんに「ストックホルム症候群」というお題で書いて頂きました(*´ω`*)!
「一度垂れ流した感情って、もう元には戻らないと思うんだ。」
『もし、それを誰かが掬ってくれたら、その感情は無碍にならないと思うけど。』
「そんなの綺麗事。」
『うん、それは言えてる。けどね、私は君がそんなこと言ってくれて嬉しいと思った。』
「何故?」
『だって君には『綺麗だ』って思える心が残ってるってことだろ?』
「そうかな」
『そうだよ。私には、もう何も残っていないもの。』
「××はいつも哀しそうだね。」
『、』
「大好き、って言ったら怒るかい?」
儚くて、優しくて、それでいて何処か寂しげな××。
もう一度逢いたいと願い、俺は夢を見続ける。そして、次の夢から醒めたときはきっと、俺の居場所は何処にも無い。
/妄想癖
彼女のことを例えるとすれば、サロメに愛されたヨナカーンだ。
サロメに愛されたとき、もうヨナカーンは聖人で無くなる。サロメの接吻を受け入れたとき、ヨナカーンはこの世には居ない。
11月3日、最早レーゾンデートルの保証さえない国を挙げた盛大な宇宙旅行。
吠えることしか知らないライカ犬クドリャフカは、皆に愛されたアルビーノの代わりにこの地を旅立った。
翌年4月14日、それが果てるその日まで人間は夢を忘れていた。
/ライカ、クドリャフカ。ヨナカーン、サロメ
( 後日談『
7日目』 )
「あの人たちは私たちのこと、嫌いなのかなあ。」
私、何も悪いことはしていないのに何でこんなことされてるのかな。
こないだ、あの人達は皆よりも私が強かったら特別に此処から出してあげるよって言った。皆を殴ったり、蹴ったりすると私の体も心も傷んでくから、私は誰も傷つけたくなかったけれど、絶対って約束してくれたから頑張ったのに。なのになんで、なんで私は此処に戻ってきたの? なんであの人達は笑ってるの?
体中が痛いよ。お父さん、どこにいるの。お母さん、助けてください。
夜になると明日が嫌だって、心臓の辺りが痛くなるんだよ。明日になったらまた今日の繰り返しだから。朝になるともう起きたくないって、おなかが痛くなるんだよ。また今日という日が始まるから。
ベッドの上に上がるのはもう慣れたけれど、体が動かなくなる薬を入れるための針は嫌い。体が動かなくなると何をされても痛くないけれど、薬が切れてきたらどんどん痛みが広がってくるのは辛い。
いっそ死んじゃえば良いって言って、此処にいる半分以上の子が死んでいった。夜に首を吊った子は、次の朝には排泄穴や鼻の穴や口から色々なものを垂らして死んじゃってた。舌を噛み切って死のうとした子は死に切れなくて、大きな声を上げて泣いていたら軍人さんに連れて行かれたままもう戻ってきてない。
「私、いつか一人で死んじゃうのかな。」
「×××。そのときは僕も一緒に死ぬよ。一人で死ぬのは寂しいもんね。」
「……ありがと、×××」
私は今日も白い部屋に入っていく。
私は今日、また白に染まっていく。
/白い部屋