【葬真】
(生前)
白狼(はくろう)村という小さな村の生まれ
父は幼い頃に亡くなり、母と病気がちの兄と三人暮らし。父がいない分生活はそこそこ厳しいものだったが村人と助けあっていた
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その村では戦のために一家から男を戦に向かわさなければならなかったが、葬真の兄は病気を患っていたため免除されていた
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ある日父の形見である犬笛を貰い山の中で遊んでいたら大きな白い犬と出会い"雪彦"と名付けた。その犬は白狼村に代々伝わる厄災を運ぶ白い狼の物の怪の元となったこの付近にしか生息しない巨大な犬であった
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数日後、村長の息子が戦で死亡したことが手紙で知らされた。息子と仲の良かった葬真の兄が生きていることに逆恨みした村長は村人に葬真の家に関わるなと命令し葬真の家は次第に孤立していった
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更には村人から陰口、嫌がらせをされるようになり精神的な疲れから母も床に伏せるようになった。葬真は一人山の中で雪彦と共に山菜摘みや薪拾いなどをして生活を続けた
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苦しさに限界を感じた兄は体を引きずりながらも村長に謝りに行く。しかしそれが村長の逆鱗に触れ、その日の夜に葬真の家が焼かれた。母と兄は焼け死に、一人山に行っていた葬真は無事だったが焼けていく家を見て呆然とする
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「娘がいたぞ!」という村人の声に走って逃げる葬真。山に逃げ込むも村人に捕まり暴行を受ける。その時雪彦が現れ村人に噛み付いた
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雪彦の巨体に驚きながらも「これは村に伝わる白狼…!災いを呼び込む獣だ!こんな獣と関わっていたとは、お前はやはり疫病神か!」と叫ぶ村人に雪彦は殺されてしまう
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雪彦の亡骸を庇うように覆いかぶさる葬真。様々な農具を構える村人に囲まれ、葬真は無残に殺されてしまう
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一人と一匹の遺体は村から離れた崖の下へと捨てられた。まだ微かに意識のあった葬真は空に浮かぶ月を見て『私が男だったら兄さんの代わりに戦に行くことができて、こんなことにならないで済んだんだろうな』と呟き亡くなった
(死後〜悪霊化後)
その後村では葬真の一家が無かったことのように処理をして普段通りの生活を続けた
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ある日村人の一人が惨殺死体として発見された。その体には噛みつかれた跡や爪痕が酷く残っていた
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次第に白い狼を見た、という噂が出てきて村人は山へ近づかなくなった。村人は葬真の祟りだ、と口々に話していた
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しかし次第に被害が大きくなり村人の数もどんどん減っていった。村長はその犬を退治しようと村の男共を集め夜に山へと向かった
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山に行くと一人の少女が白い着物を着て立っていた。それは葬真であった。顔を青くする村人、村長は構わず武器を投げた
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その時葬真の身体は人の何倍もある巨大な犬へと変化し、村人を食い尽くした。その後村へと向かい、村を滅ぼした
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他の村からは「あの山には白狼様がいて、近づいた人間は食い殺される」と噂になり山は立入禁止区域となった
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しかしその山には果物やら山菜など豊富にある場所のため噂を信じず生活のためと採取しに来た者もいる。そんな彼らも、人間が憎いと食い殺していった。
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人ならざるものの噂は獄都に届き、退治せよと通達が特務室に届いた
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肋角は獄都を現世へと派遣し葬真を捕らえた
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拘束され獄都に連れ裁きを受けさせようとしたその時、葬真の身体は人(葬真自身)と犬(雪彦)に別れたのだった
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調べによると葬真は全くの無意識で、葬真の体を借りたり人々を食い殺していったのは雪彦の方だった。そのため葬真の罪は軽く、雪彦は裁きを受けるため地獄へと送られた
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自分も行くと聞かない葬真に肋角は「膨大な時間が掛かるが、待っていれば必ずまた会える。だがしかしお前は最早怪異の一部、また人間に転生は難しい」と話し獄卒になることを提案した
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転生できず雪彦に会えないなら、とそれを承諾し肋角に獄卒としての体を貰い、「葬真」の名前も貰う
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ただし生前のショックからか女であることを嫌い、男として生きることを決意。このため男装をするようになった
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閻魔庁からの手紙で雪彦の現状を見つつ、また雪彦に会えることを葬真は今も待っている