「って事があったんだよ」
誰もいなくなった蒸し暑い教室で額を拭いながらソイツが笑う。
「え?お前がこの前の肝試しで勝手に忍び込んで、用務員さんに見つかって救急車騒ぎの当事者?」
教卓に腰掛け、一番前の席に座る見下ろしながら自分で言うのも何だが、細い眼を限界まで見開いた。
「そー!救急車初めてだったのに記憶ねーわ、怒られるわ」
カラカラと笑うソイツは首に巻いたタオルで次々に溢れる汗を雑に拭き取る。
「怖くねーの?」
あまりにあっけらかんと話す当事者に眉を顰めると、ソイツは気持ち悪く”ニカリ”と笑った。
反射的に、『きもっ』と出た言葉を綺麗にスルーしながらキラキラとした眼で言い切った。
「死んだと思ったけど、アドルムさん見てる分にはかなり眼福でしたわ!!」
ーーあぁコイツぁダメだわぁ、変態ですわぁ
思わず天井を仰いだ。
目だけをソイツに戻すとまざまざと見せつけられる現実。
タオルに隠れて見えにくくなっているが、熱さで真っ赤になった首の真ん中にクッキリとミミズ腫れた痕は、ワタシからは見えていた。
ちゃんちゃん。
2018.7/25