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【一日目】・8

【一日目】・8

養生気功/昇降開合 

  「では、作品としての養生気功を構成している動きの一つである昇降開合を練習しましょう。」
 そう言いながら私は手足を動かし始めた。

★動きに関しての文章は、動きの解説だけを羅列的に記していくことにします。

【昇降開合の実習】

1、足を肩幅程度に開いて立つ。

2、軽く膝をゆるめながら、掌を太ももに向けるようにして両手を前に垂らす。

3、手の指を垂らしたまま、腋の下の空気が膨らんでわき上がってきて、その上に丸い形で両手を乗せたような感じで、息を吸い入れながら両手を胸の高さあたりまで上げていく。

4、次に、膝をゆるめ、尾骨(お尻)から真っ直ぐ沈んでいくようにしながら息を吐き出し、肩の力を抜き、肘から降りていくような感じにして、両手を下腹の前まで降ろす。
(手が降りていくのに合わせて手首も反っていき、掌や指の腹で前の空気をなで下ろすような感じで手を降ろしてみる)。

5、続いて、降りてきた両手の掌を向かい合わせにし、足の裏(主に踵)で床を押し骨盤を持ち上げていくのに合わせ、息を吸い入れながら、肘で引っ張っていくようにして胸板から開く感じで、両手を左右に開いていく。
(手首は掌側に曲がり、指先は向かい合うような感じになる)。

6、再び膝をゆるめ、尾骨(お尻)から真っ直ぐ沈んでいくようにしながら、息を吐き出し、肘から近づけるような感じで両手をおなかの前に近づけてくる。

 両手が戻ったら、3の動きに移り、3〜6までの動(昇・降・開・合)を5回ほど続けてみる。

7、最後の6が終わった後、両手で気のボールを持ち、その感覚をしばらく味わい、その後、下腹に両手を重ねて当てて、丹田の感覚を体感してから、両手を擦り、足踏みをして終わる。


 みんなはそれぞれに私の指示に従って、自分の呼吸に合わせながら、動きを確かめていた。
 「センセイ、この動きのポイントを教えて下さい。」
と、研究熱心な薬膳の楊さんが言った。
 「そうですねぇ、まず一つは、息を吸い入れながら足の裏(踵)で床を押し、その力で骨盤が上がるようにし、息を吐き出し膝をゆるめることで尾骨から真っ直ぐに沈んで行き、体重が踵に降りるようにすることですね。」
 「上半身は骨盤の上に乗せたままなので、前後には倒れないんですよね?」
 太極拳でも注意されるのか、健太君が確認するように訊ねた。
 「はい、そうです。
 それに、二つ目ですが、腕は大胸筋や胸の中、或いは肩甲骨から手の先に向かって、ムチのように、しなやかに撓んで動くようにすることですね。
 この動きは、両手を体の前で上げ下げしたり、左右に開いたりするだけの単純な動きなんですが、足の裏で骨盤を上下に動かすという足の使い方や、胸の中や胸板、背骨から動くという腕の使い方など、気功的な体の使い方が身につけられると同時に、掌の気の感覚も強くしていくことが出来るんですよね。」
 そう私が応えると、ヨガの香代さんが口を開いた。
 「昇降開合は養生的には、どんな役割を持っているんですか?」
 「私は、昇降開合には幾つかの役割があると考えていて、一つは、呼吸と動きを統一させていくことで、坐禅やヨガと同じような三昧の境地になり、心が穏やかになってくるということでしょうね。」
 私が言うと、
「まさに、動く坐禅、動く瞑想ですね。」
と、そこが一番と言わんばかりの勢いで翔君が言った。
 「そして、その働きによって、血圧や血糖値が安定してくるでしょうね。」
 「すると、昇降開合を続けることで、高血圧や高血糖も予防できますよね。」
と、慎二君が続いた。
 「更に、大腿四頭筋が鍛えられ、ミトコンドリアが増え、基礎代謝量が上がり、そのことによって、基礎体温が上がり、免疫力も高まるでしょうね。」
 私が言うと、楊さんが、
「気功って、やはりスバラシイですよね。
 ワタシ、薬膳教室で、この昇降開合から取り入れてみます!」
と、明るい声で言った。
 「以上のようなことを頭に入れながらも、必死に頑張らないで、ゆったりした心地よさを味わい、楽しみながら実習していって下さいね。」
と、私は楊さんに告げた。
 「では、一日目の講習はこれで終わり、今日のところで疑問に感じたり、尋ねたいことがありましたら、今日の昇降開合をよく練習した上で、次回に聞かせて下さい。
  ということで、今日は終わりましょう。」
  「ありがとうございました!」
と、みんなは大きく頭を下げたのだった。

【一日目】・7

【一日目】・7

養生気功に入る前に

 「では、お立ち下さい。」
  そう言って、私はその場で立ち上がった。

  「坐ってばかりいたので、養生気功の練習に入る前に、少し体をほぐしましょう。」
と言って、私は腰を左右に捻り、両腕をムチのようにしてウエストに巻き付けていった。
  同じように立ち上がった塾生のみんなも真似をし、「捻りのスワイショウ をし始めた。

 「ウエストがゆるんで絞られていく感覚や、腰椎から胸椎が螺旋階段のようにねじられていく感覚も体感しましょう。」
  「これ、太極拳でもします!」
  勿論、健太君だ。
  「坐禅の前や後に、体をほぐす目的で、ストレッチなどと併せて、この動き、してました。」
と、お坊さんの翔君も言った。
  すると、鍼灸師の慎二君が、
「これ、仕事の前や合間にすると良いでしょうね。」
と言った。
  「では、故意に動かすことをやめ、揺れが独りでに止まるのを待ちましょう。 
  私が言うと、みんなの動きがそれぞれにゆらゆらしながら収まっていった。
 「しばらく、自分の皮膚や体内に現れてくる感覚に没頭して下さい。」
  少しすると、ヨガの香代さんが、
「この、ジワーッとする感覚が気の感覚なんですか?」
と訊いた。
  「それは体内が緩んできた時の感覚なので、直接、それを気の感覚とする訳にはいかないでしょうが、気を体感する前段階の感覚としては大事な感覚なので、何かの動きが終わった後に、いつも、しばらく立って、その感覚を体感することは必要だと思いますよ。」
と、私は応えた。
  「では、養生気功フルヴァージョンを行ないますので、足を肩幅より少し広めにして下さい。
  足の内側は平行にして立って下さいね。」
  そして、私は、最初の動作である「昇降開合」に入ったのである。

【一日目】・6

【一日目】・6

養生気功の構成

  「養生気功フルヴァージョンもシンプルヴァージョンも、基本構成は同じなんですが、フルヴァージョンの方が一つの構成部分の種類が多くなっているんです。
  その構成ですが、次の六つから成り立っています。」
  そう言って、私はホワイトボードに、
1、昇降開合
2、鳥の舞(4種)
3、気のボール遊び(4種)
4、馬歩雲手(マープーユィンショウ)
5、三円式タントウ功
6、採気(4種)
と記し、
「シンプルヴァージョンでは、このカッコの中の4種を1種類にしているんです。」
と言った。
  すると、太極拳の健太君が嬉しそうな声を上げた。
  「僕のしている太極拳にも馬歩雲手(マープーユィンショウ)やタントウなどがあります!」

 「用語的には、太極拳から戴いた訳で、そっちの方が先ですから…。」
  私は健太君に笑って顔を向けた。

そして、私たちは「養生気功フルヴァージョン」の実習に入ったのである。

【一日目】・5

【一日目】・5

養生気功にふくまれていなければならない練習法

  私は楊さんの質問に応えた。
  「内気功としての養生気功に含まれていなければならない要素ですが、それには五つの練習方法があるんです。
  一つは、体や脳を緩めていく放鬆法で、二つ目は、体内の各部で気の感覚を体感していく意守法です。
  三つ目は、体内で気を巡らせていくためのルートを作り、その中で、実際に気を巡らせる貫気法で、四つ目は、天空や大地、太陽や樹木など自然界の気を体内、特に丹田に採り入れる採気法です。
  そして最後は、採り入れた気を含め、丹田の気を練っていく練丹法という取り組みで、これら五つの要素が含まれていてこそ百日練功としての養生気功になり得るんだと思うんですね。」
 そう言って、私は手元にあった小さなホワイトボードに、[1…放鬆、2…意守、3…貫気、4…採気、5…練丹]と記した。
  「先生のご存知の気功の中には、その五つの要素が含まれている気功はなかったんですね?」
と、いがぐり頭の翔君が言った。

  「いいえ、そんなことはないんですが、5分や10分で出来て、しかも練習の長さというか強度というか、練習の深さを自分で調整していけるような功法はなかったんですね。」
  「そうなんですよね…」
と、楊さんが納得するように首を振りながら言った。
  「ワタシ、色んなセンセイの講習を受けましたが、意味もわからずに動きを覚え、それをしていると、それが気功なんだみたいな感じで、気を巡らせているとか採り入れているとかといった感覚もないまま、ケンタさんには悪いけど、太極拳みたいに動くことしか学べなかったんです。」
  「太極拳も本当はそうじゃないと思うんだけど、僕はというか、初段の段階では、二十四式を間違えずに通して動ければ合格ですからね…。」
と、健太君が楊さんに向かって言った。
  「ところで先生…、」
と、口を開いたのは慎二君だった。
  「先生が作られた養生気功フルヴァージョンは、どんな内容で構成されているんでしょうか?」

【一日目】・4

【一日目】・4

養生気功を創作したワケは…


  「今回、みなさんに修得して頂く養生気功フルヴァージョン、シンプルヴァージョンは、私たち自身の主体的な取り組みとして健康の回復、維持、増進のために、毎日続けていけるようにと創作した功法なんです。
  朝でも夜でも、勿論、昼間でも、一日一回、シンプルヴァージョンなら5分程度、フルヴァージョンでも10分程度でできるようになっています。」
  私は、早速、「養生気功」の説明に入った。
  「ワタシ、養生気功というのは、健康のために内気を養うために行なう練功の総称だと思っていましたが、センセイの仰る養生気功というのは、ある一つの功法の名前なんですか?」
  訊ねたのは薬膳の楊さんだった。

 「そうですねぇ、楊さんの言われるように、養生気功という言葉は内気功を総称する言葉でね、 ですから、養生気功と言った場合、古代から現代までに作られてきた全ての作品が含まれる訳で、その作品数は数百を超えるでしょうね。」
  「そんなにあるんですか!」
と、太極拳の健太君が驚きの声を上げた。
  「毎日の取り組みとする、百日練功でしたか、それを推奨するにあたって、それら沢山の功法の中から選ばずに、敢えて別の功法を創作された理由は何ですか?」
  鋭い質問を投げかけてきたのは鍼灸師の慎二君だった。
  私は、疑問があれば、その都度、訊いて欲しいということ、話し合いながら学びを深めていきたいということをはなしておいたのだが、最初から核心的な質問が投げ掛けられるとは思ってもみなかった。
 「それは…、」
  私は話し始めた。
  「気功の練習は、何かを闇雲に続ければ良いというものではないんですね。

  勿論、体を動かすことを続けるのは良いことですが、香代さんが言われたように、内臓や丹田や気というものを意識して練習した方が、より早く有効性を発揮できると考えていましてね、その為には、養生気功の練功としての要素が網羅されている必要があるんですね。
  ところが、私の知っている功法の中に、それらの内容を含んだ功法で、しかも、5分や10分で出来る百日練功とし得る功法がなかったんですよね。」
  「そこで、やむを得ず、先生が新しい養生気功を作られたという訳ですか。」
  そう言ったのは少君だった。
  すると、楊さんが、また手を挙げた。
  「内気功としての養生気功に含まれていなければならない要素って、何ですか?」
  楊さんの探究心は誰よりも強いかも知れなかった。
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