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マトリョーシカは嘘つき


アルコールを飛ばしたホットワインに、レモンを数滴。

香り付けにはシナモンを。

お好みで砂糖

「何杯いれる?」

3杯

と、言いたいとこだけど我慢する。

きっと、甘すぎない?って大人は言う。

「2杯で」

これが大人と子どもの違い?

シナモンの強い香りは、すこし苦手。


目を閉じて、

お昼にした撮影を思い出す。


あれは、わたしには大きすぎる衝撃だった。

目の毒、言葉は誘惑、物語は残酷で甘い

鹿島先輩は、持っているすべてが特別なんだ

無色透明のお伽噺

紛れもないフェアリーテイル

少ないわたしの自信を、きれいにぽっきり折ってくれた。


「目を閉じて、」

中身はもやもやと熱が籠っている

「願い事を」

それは自分にする約束



「潮は、表情が冷たい。それなのに、目だけはぎらぎらしてるんだ。」

「意外と気性は荒くて、ずる賢い」

「自分をもっと知りなさい」

わたしに足りないのは、なんだろう?















1秒前のチョコレート




仰向けに転がる赤葦さんに、ぴったりと重なるように、上にうつぶせになる。

聞こえるのは心臓の音

わたしたしを分けるのは肉と皮膚

人の冷たさにゾッとして、そろりと胸を舐めた。


舌で溶かすように、手のひらで混ぜるように

赤葦さんのからだを可愛がる。


赤葦さんの右足に、わたしの両足を跨ぐように引っ掻けた。

動きやすいようにずるずると位置を変えていたら、赤葦さんはにやりと笑って

ぐん!

突然、膝を立てて、わたしの弱いところを突いてきた。

そうなったら止められなくて、わたしは赤葦さんの体を、足を使って気持ちよくなろうとする

舐められる口の中

ぐにゃりと形を変える胸

赤葦さんの太股に擦り付けて、ぐちゃぐちゃになっているわたし。


「きもちいい?」

返事はできない

もう、あたまがまわってないんだ

でもこれだけは言える

おねだりは、散々教えてもらったから



「なか、いれてください」






赤葦さんを汚す感覚に酔ってしまいそう





あとは駈け上がるだけね!



「赤葦さん、年越しそばを作りましょう」

年末は大忙し

そばを食べて、ガキ使見て、おせちの仕込みをしてから神社へお参りに行くんです

「赤葦さんのお家は、おせちどんなのでした?わたしの家ではおせちというよりオードブルみたいな、重箱には入ってないんですけど」


「潮、」

「あ、おっきい鯛とかありますよ。お父さんに仕送り頼んだので酒蒸ししましょう」

「潮、家帰らないの?」


あーもう、

みんな、口々にそう言いますね。

帰る家があるなら帰った方がいいよ、なんて

「耳にタコって感じなんで、その話は終了です」

それに、

赤葦さんをひとりにはしたくないし。


「あ、もしかしてお友達と予定とかありました?」

「いや、2日は飲みにいくことになってる」

「びっくり、友達いたんですね」

からかえば、むすりと拗ねる

よかった、いつもの赤葦さんだ。




思う

一年の終わりって、すこしだけ寂しくなるんだ。

大切な人がいなくなったのなら、尚更


赤葦さんには両親がいない

海に流されてしまって、その体も見つかってない。

空っぽだった

なにもかも。



「一緒に年越ししましょうよ」

「どうせ、そば作れって言うんだろ」

「当たり前です。」

「ついでに、年越ししたらセックスしましょう」

「!!」

うーわー

あからさまな、びっくりした顔!

そういう顔は好きよ。


「そんなの、どこから覚えてくるの」

頭かかえて、ため息

余裕な大人の皮をかぶる。

「全部、赤葦さんからですよ」



とりあえず、来年の目標

赤葦さんの本性を引きずりだす
で、ほんとうに、わたしは赤葦さんのものになりたいし、赤葦さんをわたしのものにしたい


「覚悟しとけ」








シュフレヒコールは吟う

ひさしぶりに逢う先輩は、すこしだけ大人の匂いがした。


鹿島先輩

わたしの憧れで、夢

遠くにいってしまった思いでの人。


養父と年末をすごすために、里帰りをしているらしい。


「潮、ひさしぶりだね」
「はい」
「実家には、やっぱり帰らないんだね」
「はい」

実家に帰らなくてもいい理由を探してた。

それで、合鹿さんの仕事のお手伝いをさせてもらうことになりました。

デザイン関係の就職を考えているわたしには、チャンスだと、お父さんにもっともらしい嘘をついて

家に帰れば、お兄ちゃんのいないあの空間が待っている。

わたしは、それから逃げたくて仕方ない

お母さんから、逃げたくて仕方ない。


「合鹿さんから、話を聞いて。モデル、することにしたんだね」
「はい。鹿島先輩、御指南よろしくおねがいします」

鹿島先輩は、照れ臭そうに笑った。
やわらかい笑顔は、学生時代ではあまり見れなかったものだ。

いつだって先輩は、綺麗なお人形のような顔をしていたから。

「どうして」

外に出れば、そうなるのかな?

変わっていくものなの
変わっていけるものなのか?


「私、潮のことがうらやましかったよ」

「感情が、素直っていうか、まっすぐで。冷めてるように見えるけど、情熱家。」

「ねえ、潮は、なんになりたい?」

なんになりたい?


「そんなの、わたしが聞きたい」

置き去りにして

なにもかも

わたしは進めない。



食べるのが好きな人


赤葦さんとお昼ごはん

近所の、カレーがおいしいお店に行きました。

「なに食べたい?」

「カレー」

「あ、俺も食べたいと思ってた」

うん、食べたいだろうなって思ってたよ。


赤葦さんは、顔に似合わずよく食べる

もそもそと食べて、いつのまにか二皿目を完食

そして、メニューをまた見て

「デザート食べよう」

なんて子どもみたいだ。

「じゃあ、わたしはカフェアフォガードと苺パフェで」

「よく入るね」

赤葦さんに言われたくないし!