*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋2』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第2章です⇒
story.9:『本物』
偽物の槐・河田が逮捕されたその夜、原田淳浩は住宅地の近くにある見通しのいい公園広場に逃げ込んだ。
原田:「…ハァ、ハァ………」
かなり走ったのかその場で立ち止まり、両手を両膝について息切れをしていた。
帰宅途中、目の前に現れた人物に恐怖心を覚えて必死に逃げてきた原田だった。
が、目の前に突然気配を感じた。
俯いた状態から、原田は黒に身を包まれた"何者かの両足"を確認し、恐怖に震える。
今、目の前に現れた人物は前から歩いて来たのではなく、上から降りてきたようだったから…。
原田は恐る恐る顔をゆっくりと上げると、その人物の手にはしっかりとナイフが握られている。
第2の槐----------黒い服装に身を包み、頭にニット帽を被ってスカーフで鼻から素顔を覆い隠した今年の夏頃に連日ニュースで何度も報じられていた連続殺人鬼の姿そのものだった。
原田を見下ろす槐の目は、冷酷で静かに恐怖を感じさせる。
そんな槐に原田は震えた声で言ってきた。
原田:「…お、お前…誰だよ?
俺が何をしたっていうんだよ…っ!!」
槐:「"槐"。もっと単純に言えば、"お前たちに復讐しに来た奴"----------決まってるだろう?」
即答でそう応えられて、原田は一瞬変な声を出しながら一歩後退りをした。
それに合わせて槐も一歩近付くと、こう言ってきた。
槐:「中森に関しては想定外だったが、俺にとってみればラッキーなことだよな。河田さんには、感謝しないと」
原田:「!…お前、ニュースで言ってた通り、中森を殺す気であのアパートへ行ったのか!?」
原田の問い掛けに、槐は頷きながら答えた。
槐:「あぁ。お前、中森…そして他の2人を殺す----------それで俺の…俺たちの復讐は達成する」
槐はそう言いながら、原田を鋭い眼光で睨みつけて言った。
槐:「失ったものは戻らない…」
そう言った後、槐はナイフを構えてこう続けた。
槐:「Never More」
その瞬間、槐が持っていたナイフは原田の胸に突き刺さり、原田は苦しい声を上げながらその場に倒れ込んだ--------------その時だった。
女性:「キャー!」
槐:「………。」
槐が振り返った先にいたのは、犬の散歩中の若い女性だった。
槐は女性を見付けると、ふと笑ったような表情になる。
槐は女性という目撃者を無視して、近くの滑り台の上に飛び乗って勢いよく飛び上がり、近くに立っていた一軒家に飛び乗った。
その姿は報道で聞いていた超人的、まるで忍びを思わせる身体能力だったそうだ。
-------------------------…
犬の散歩をしていた女性が110番通報してから、実に30分後に本署の捜査一課は到着した。
公園広場前には、既に野次馬が集まって来ていた。
黒い服装、ニット帽、スカーフ……超人的な身体能力。
第2の槐出現----------そう思いながら、水嶋たちは殺害された原田の周辺を捜索していたが。
水嶋:「"悪魔のカード"が見当たらねーな…」
姫井:「また偽物かしら…」
水嶋と姫井は遺体があった周辺に槐が置き残してゆくはずの悪魔のカードが見当たらないことを知ると、水嶋は言った。
水嶋:「いや、やり口は真幸の時と似てる。
それに目撃者の証言もある」
高柳:「本物…ですか。
このナイフは確かに、真幸から預かった物と同じみたいですし、今回は確信を持っても…」
姫井:「でも肝心のカードは?
まさか女性に見つかって慌ててたとかじゃないでしょうね…」
姫井がそう疑いを持って、カードのことを考えていると他の刑事が近寄ってきた。
刑事:「被害者の身元が分かったぞ。
原田敦浩・25歳。職業は会社員で、現在は2年前に結婚をし妻子がいます。
婿入りしていて、旧姓は中原敦浩……前科があります。」
その刑事がそう告げると、姫井はハッとしながら水嶋に言った。
姫井:「ねぇ、原田さんって過去にうちで担当したことがあるんじゃ…!」
水嶋:「…………。」
姫井が水嶋の方を振り返ると、水嶋は視線を遠くへやっていた。
水嶋何を真剣に見ているような表情である一点を見据える。
姫井や高柳、他の刑事も気になってその方向へ視線を向けた。
目線に写ったのは、15階建てのマンションだった。
その屋上には、一つの人影が見えた。
その人物は黒い服装で身を包んだ、鼻と口を覆ったスカーフをしていた----------そう、第2の槐、本人だった。
高柳:「あ…!」
姫井:「出たわね、槐!」
警察は数人で急ぎマンションへ向かってゆく中、槐の出現により、野次馬が騒ぎ立てる。
悲鳴を上げる者もいれば、ケータイのカメラ機能を使って撮影しようとしている輩もいた。
水嶋:「………。」
高柳:「なぜ、また現場に…」
姫井:「決まってるでしょう。
"自分が本物だ"って通告しに来たのよ」
高柳:「そうなんですか…?」
水嶋:「……………。」
槐を発見してから、なぜかだんまりになる水嶋に高柳は気が付く。
疑い目をした難しい表情を浮かべる水嶋を見て、高柳が怪訝に思っていると、水嶋は急にハッとしたような顔になる。
高柳:「?」
高柳はふと視線を槐に向けると、槐の手にキラリと光るものを確認した。
高柳:「まさか、あれって…」
槐が手にしているのは、悪魔のカードなのか!?----------高柳がそう思った直後、槐はこちらへ向かってカードを投げた。
ブーメランのように、カードは途中急カーブをして高柳の前を横切った。
高柳:「わっ!」
高柳は少し驚きながら隣を見ると、水嶋の人差し指と中指に挟まれた悪魔のカードを確認。
高柳:「み、水嶋先輩…?」
まさかあの勢いよく飛んできたカードを一発で、しかも素手でキャッチしたというのか。
水嶋:「…槐、かぁ」
水嶋はそう呟きながら、再びマンションの屋上に立っている槐に視線をやる。
槐は頷いた動作をすると、こちらから背を向けてその場から去って行った。
その数秒後、マンションに上がっていった他の刑事が到着したのを見て、水嶋がふぅと息をついたのを高柳と姫井は見逃さなかった。
-------------------------…
マンションの屋上から去った第2の槐こと、二条武長は途中、路地裏の影に身を潜めて、黒い服装とニット帽、スカーフを脱いだ。
下にはあらかじめ、長袖とジャージのズボンを履いていたから武長は犯行で使用した物を全て紙袋に入れ、今度は近くにあった駅の中に存在するコインロッカーに出向いた。
武長はコインロッカーの鍵を使い、開けると中に入れておいた上着のジャージと鞄を取り出し、代わりに紙袋を入れた。
コインロッカーの鍵は、今夜中か明日の早朝に掛けた時間帯でメールの主の仲間が武長の部屋に取りに来ることになっている。
武長:(しかも、寝ている時にこっそりとね。)
武長はまだ一度も"共犯者"の顔を見たことがないのだ。
一体どんな悪い奴がこの槐ゲームに関係しているのだろう、と武長は気にしつつ、先程の一件を思い出していた。
武長:「水嶋さん…」
槐事件の現場にいた人物は確かに"水嶋"という刑事だった。
4年前の事件----------他の警察が捜査を止めても最後まで抗った唯一の刑事。
武長:(どっちかな)
復讐達成が先か、捕まるのが先か……それでもまだ捕まる気は更々ないのだ、と武長は開き直る。
武長は鞄の中に入れてあったケータイに手を掛ける。着信を鳴らして、応対したのは幼い弟の飛鳥だった。
武長:「あ、もしもし飛鳥、お兄ちゃんだけど。今、駅に着いたから、これから帰るって母さんに伝えてくれる?」
武長は飛鳥と電話をしながら、駅を後にしたのだった。
------------To be Continued...