*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・前編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の完結・前編です⇒
story.19:『悲しい罪』
大学生の時、大学の友人に誘われて行ったとある施設で、僕はある体験をした。
男性:「これが、マインドコントロールの力です!」
そう言って、男性はその場にいた客にマインドコントロールを懸け、数人を操ってみせた。
それを見た僕は、衝撃を受けた。
福崎:「他人の隠し事を聞き出すことも出来ますか?」
僕の言葉に、男性は笑った。
男性:「もちろんです!
貴方も、マインドコントロールを学びますか?」
男性は電卓を取り出し、軽くポチポチッと打つと、僕に向かって結果を見せながら言った。
男性:「今なら安く、しますよ」
今、思えば、男性はマインドコントロールを使って金儲けがしたかったのだろう。
でも僕には関係なかった。
僕はただ、なぜ罪を問われずにここにいるのか。
若菜の両親や、水嶋さんたちがどうなったのかを知りたい一心で、男性にすがった。
少々値段は高かったが、僕は適当な理由を付けて、父からお小遣いを増やしてもらい、男性のもとでマインドコントロールを学んだ。
すると、およそ2週間で男性が驚いたように言ってきた。
男性:「福崎!君は、催眠術の才能がありますね!君になら、すぐにマインドコントロールも出来るようになるだろう!」
男性はそう言うと、今までよりも高い値段を要求してきたが、僕には痛くなかった。
息子の金遣いの荒さを、父が文句言ってくることもなかったし。
実際に、僕は目に見える形でマインドコントロールを取得した。
------------そして1年が過ぎた頃には、僕は師である男性よりも高い催眠術を身に付けて、マインドコントロールも容易く扱えるようになった。
福崎:(これで、父さんから真実を聞き出せる…)
僕はそう思いながら、才能を開花させた後も師である男性のところに通いながら、大学生活を過ごした。
父からの許しが下りるまで。
父から日本に帰って来るように言われない限り、僕は帰れない。
突然、息子が無断で帰って来たら父に怪しまれ、香港で何をしていたのか探られてしまうかもしれない。
だから父からの許しが下りるまで、さらに才能を開花させておく必要がある。
マインドコントロールで操った後、記憶操作が出来るように。
------------そして、"その時"は来た。
父から、日本へ帰って来るように許しが下りたのだ。
大学3年生。僕の国際パスポートの更新するためだった。
一時的な帰国。だが、僕にとっては大チャンスだった。
そうして帰国した僕を自宅に迎え入れると、父は素っ気なくこう言った。
福崎の父:「大学を卒業したら、香港の財務省に就職しなさい。
そして時期が来たら、日本の財務省に転職するんだ。」
福崎:「分かった…」
僕は素直にそう返事をしてから、父の目を見て、集中しながらこう言った。
福崎:「じゃあ、今度は僕の番だ。……父さんには色々と、聞きたいことがある。」
福崎の父:「な、何をっ…」
僕は父の顔を両手で抑えて、父の目を見つめながら、この催眠術の力を手に入れてから初めて私情でマインドコントロールをした。
父がマインドコントロールに懸けられたのは、ほんの数秒の出来事だった。
僕は先ず、若菜の両親がその後どうなったかを聞き出した------------が、それはあまりに辛い現実だった。
福崎の父:「若菜ちゃんが死んだ後、若菜ちゃんのお母さんが……自殺をした。
若菜ちゃんのお父さんは今、病気に懸かってしまって……病院へ通院する生活を送っている。」
……僕は、若菜の顔を思い浮かべた。
若菜の両親が、あの事件の後でそんな末路を送っていただなんて。
若菜の危機をいち早く察知していたら、若菜の両親も幸せな日々を送っていたはずなのに。
福崎:(僕のせいで……)
僕はそんな後悔の念を抱きながら、あの事件の関係者がどうなったのかを聞き出した。
里沙と真紀の両親が離婚したこと。
あの事件を起こした遠藤兄妹の昇平が死亡し、実千香は命が助かった後、少年院に服役し、釈放されたこと。
阿岐名さんが死亡したこと、そして、水嶋さんが奇跡的に助かり、刑事を続けていることを。
福崎の父:「水嶋さんは今、神奈川県警の刑事課に移転配属されて、出世街道を歩いている…」
福崎:「水嶋さんが……」
僕はこの時点で違和感を抱いた。
水嶋さんなら出世出来てもおかしくはないけど、気掛かりなことがある。
福崎:「僕はあの時、阿岐名さんの拳銃でアイツらを撃ったのに」
真犯人の僕が罪に問われずにいるなか、真っ先に疑われるのは拳銃の持ち主である阿岐名さんのはず------------いや、待て。
福崎:「そもそもあの事件にはもう一つの拳銃があった…!」
そう。あの事件が起きる前に水嶋さんと阿岐名さんから聞いた、『県警の警察官が紛失した拳銃』の一件。
あの後、警察官が駆け付けて、遠藤兄妹が所持していた拳銃も回収されたはず。
福崎:「遠藤兄妹が持っていた拳銃は、誰が紛失したものだったの?
……何で、人殺しの僕は罪に問われなかったの?」
僕はマインドコントロールを強く懸けながら、父に問い掛ける。
福崎:「教えて…。あの事件は、どうやって解決させたの?」
僕は、訴えた。
福崎:「真犯人は、父さんの目の前にいるのにぃ!」
感情的になった僕を、父は心ここに在らずといった目をしながら淡々と語った。
福崎の父:「拳銃を紛失した警察官は------------……"石塚紀章"。お前もよく知る警察官だ。」
僕の中で、あの事件の後の石塚のことがフラッシュバックした。
福崎:「……まさ、か…っ」
"あの石塚さんが…"。
僕も最初はそう思ったよ。
福崎の父:「石塚紀章は私にすべてを話した。
お前が告白したことと、彼自身の罪を…。
だが、石塚紀章は気丈だった。
私に向かって、こう言ったんだよ。
『息子さんが逮捕されたら、息子さんも貴方も終わりですよね?』って…」
父の瞳は、揺らぎ出したのが目に見えた。
福崎の父:「『この事実を知っているのは、私以外は貴方だけ。
……息子さんは、私の失敗を知りません』と言ったから私は、何が望みかと聞いたら、石塚紀章はこう言った……」
父から、とんでもない事実が語られた。
福崎の父:「『私の失敗を何らかの形で帳消しにして頂きたい。
そして、表向きには犯人グループを撃ったのは、阿岐名巡査ということにしてください…。
そして、もう一つ重要なことを……』」
石塚の言葉は、こう続いたと言う。
福崎の父:「『水嶋巡査部長を警部補に昇進させ、彼が回復次第、今いる所轄ではなく県警の刑事課に移動させてください。
------------貴方ほどの大物なら、これくらい可能でしょう?』……石塚紀章は、恐ろしい目でそう言ってきた。何を考えているのか、分からなかった……」
……父はそう言っていたが、僕にはすぐにその意味が理解した。
いや。理解するには少々、困惑する内容だった。
石塚は、自分自身の罪を隠蔽することだけではなく、"好きな人"の処遇まで操ったのだ。
まるで、マインドコントロールを懸けているかのように。
福崎:「…何で、そんな重大なことを承諾したりしたの?
あの事件で、何人の人間が死んだと思っているの?
阿岐名さんが何をしたっていうんだよ!!」
僕がそう声を上げると、父の目から涙が流れて、僕の頬に手を充てながら言った。
福崎の父:「お前を……私の一人息子を、守りたかった。」
福崎:「っ…!?」
自分の頬に触れた父の手のひらの温もりに触れた時、父はこう続けて言った。
福崎の父:「母さんと、約束したから…」
父は、死んだ母を口にした。
僕はあまりに残酷な真実に、悔しくて涙を流した。
こんなに辛いのは、僕だけだと思っていた。
父は、僕を愛するが故に、やってはいけない罪を犯した。
警察官として、立派に勤めている父が誇りだったのに、僕のせいで父は警察官としての誇りを汚してしまった。
------------僕は事実を知った後、父からこの時の記憶を封じて、再び香港へ戻った。
心に大きな穴を空けたまま。
------------To be Continued...