*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋-完結・前編-』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の完結・前編です⇒
story.30:『逮捕の時』
------------現代。警視庁の最上階にある警視局長室に、水嶋律と槐事件の主催者だった福崎善が相対していた。
福崎から、槐事件に繋がる話を延々と聞かされた水嶋の顔は動揺で沈んでいた。
福崎は初恋の人、山村若菜を失った『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』を表に出すために。
それを隠蔽した実父と石塚紀章を追い詰めるために、槐事件という恐ろしい悲劇を作ったのだ。
あの事件で生き残った、遠藤実千香も、福崎は復讐した。
福崎:「……あと、もう一つ重要なことを話します」
福崎はそう言うと、真顔でこんな話をしてきた。
福崎:「"愚か者たちを殺った"のは、アートロではなく僕です」
水嶋:「"愚か者"……」
水嶋はそう口にしてからハッと思い出した。
第7の槐事件が終わった辺りの頃に、犬の仮面の男こと、アートロが『槐-エンジュ-同盟』というサイトの書き込みで予告していた、槐事件とは別で発生した連続殺戮事件だ。
被害者たちは全員、このサイトに書き込みをしていて、殺された後、部屋の壁に血文字で"愚か者"と書かれ、一時期世間を恐怖に陥れた残酷な事件。
あのサイトで"愚か者"を殺戮すると予告したのはアートロだったから水嶋も疑っていたが、鳥の仮面の男こと、城之内凛太が自殺した現場で会った時、彼は殺戮のことを否定していた。
水嶋:(そ、んな……)
福崎に嘘を付いている様子が見当たらない。
水嶋:「善……本当に、お前が…あの事件を?」
水嶋がそう聞くと、福崎は微笑みながら頷いて言った。
福崎:「僕は嘘を付きませんよ。
愚か者たちは、僕がやりました。
そして、槐事件を思い付いたのも他でもない……僕です」
福崎の話を聞いて、水嶋はさらに落ち込んだ。
もう何もかも覚悟の上でここまでやって来たというのに、水嶋は頭の中で槐事件のことを思い出しながらハッと思い付いたのを言ってみた。
水嶋:「アートロが、善は直弥くんに殺人をさせたくなかったと聞いた。それは、事実か?」
水嶋の言葉に、福崎は応えた。
福崎:「直弥くんは、既に殺人鬼の子供というレッテルが張られています。それは、水嶋さんたちがあの女を追い詰める前に気付いたことです……」
福崎はそう言うと、思い出したようにこう言ってきた。
福崎:「ああ、直弥くんの時といえば、直弥くんのイジメっ子たちに匿名で警察に電話をさせたのも、僕です。」
福崎の話を聞いて思い出す。
自分が初めて七条直弥にあったのは、警察に匿名で通報があったことからだった。
確かにあの後、匿名電話を掛けた少年たちからの徴収では、どうやって直弥がアルバイトしていた店を突き止めたかが不明だった。
槐たちを監視していた福崎なら、槐たちの日常生活はよく分かっていたに違いない。
そう理解した水嶋は、また思い付いて福崎に問い掛けた。
水嶋:「…城之内凛太の事件の時に槐たちが警察病院を脱走したことがあっただろう。
その時、猫の仮面を被って姿を現したのは、善だな?」
福崎:「はい。その通りです。」
福崎は、あっさりと応えた。
水嶋はまた思い付いて、福崎に問い掛ける。
水嶋:「大夢くんが、一人で祖父母を殺害出来るわけがない。
祖父母を襲った時、誰が一緒だった?」
福崎:「大夢くんは殺してません。僕が殺しました」
水嶋:「っ…秋生くんの妹の死は、どうやって突き止めた?」
また福崎の罪を聞いてしまった水嶋は、また思い付いた質問をすると、福崎は言った。
福崎:「秋生くんの妹の死にはいくつか疑問が残っていたので、駅の防犯カメラを調べました。
気になる人物をピックアップして、"彼らに直接聞いてきました"。
そしたら、"彼女"に行き着いたんですよ」
九条秋生の亡き妹・千春を殺害した桃山悠里は、福崎にマインドコントロールされ、自分たちが行き着く前に自白していた。
水嶋は、マインドコントロールに恐怖を感じた。
現に自分も、アートロに掛けられたマインドコントロールが最初ではなかった。
阿岐名葉月の墓の前で、福崎と再会し、あの事件のその後のことを話している。
自分ではまったく思い出せないが、福崎から聞いた今までの話が事実なら自分はやっぱり槐事件の中心に立たされていた。
そして、水嶋は最後にこう問い掛けた。
水嶋:「……なぜ、石塚さんを殺さなかった?」
福崎:「……………。」
水嶋:「隆志くんたちと井野楽都くんの自宅アパートの前にいた時も猫の仮面を被って、石塚さんに向かってナイフを投げただろう。
お前は、石塚さんを恨んでいたはずだ。なぜ、殺さなかった?」
水嶋がそう問い掛けると、福崎は真剣な顔をして言った。
福崎:「逆に聞きます。
水嶋さんは、この事実を聞いてもまだ、石塚を信用出来ますか?
阿岐名さんをこの世から抹消しようとしたんですよ、彼は…」
福崎はそう言うと、水嶋に近付いてきてさらに聞いた。
福崎:「彼は、自分の失敗を阿岐名さんのせいにした!
阿岐名さんは命懸けで僕たちの命を守って死んだのに、貴方の口も塞いで、自分の都合の良い状況を作った。
水嶋さんは……貴方は、あの男が憎くないんですか!?」
水嶋:「善……」
福崎:「僕は絶対に許せない。
若菜が死んだことも、阿岐名さんが死んだことも……」
福崎は、哀しげに言った。
福崎:「父さんの弱味を握ったことも、水嶋さんを縛り付けたことも……僕は、許せない」
水嶋:「善っ…」
福崎の言葉に、水嶋の心が揺れる。阿岐名のことを、石塚のことを思い出して……。
福崎:「でも石塚は僕よりも、水嶋さんが蹴りを着けるべきだと思いました。」
水嶋:「…!」
福崎は、水嶋の目の前にいた。
福崎:「水嶋さんが決めてください。
石塚を自分の手で殺すか、それとも…僕が殺すか」
福崎の強い瞳が、水嶋の目にもよく写った。
宇宙に吸い込まれてしまうような、深い海に沈み込まれてしまうような…。
水嶋:「…っ」
水嶋の中で、"あの日"の阿岐名の姿が甦った。
『珍し……な……。律が、泣いてる……』
阿岐名はそう言いながら、自分の涙を、血塗られた手で拭ってくれた。
『律のことだから……』
阿岐名は、微笑んでいた。
『だから……好きなんだ……』
自分は、あの日の愛の告白を一生忘れない。
『……っ…やったぁ…』
自分が口にした言葉で、あんなに喜んでくれた人のことを------------…
『…じゃあ……頑張って………生きな…きゃ……な------------』
------------絶対に、忘れない。
水嶋:「くっ…」
気付いたら、水嶋は涙を流していた。
福崎の罪に辿り着いて、阿岐名の死を思い出し、ようやくあの槐事件にも、廃倉庫での事件も終わりが告げられるのだ。
水嶋:「…俺は、これからも警察官として生きる!」
福崎:「!……分かりました。」
水嶋の言葉に、福崎はハッと理解を示し、水嶋に向けて両腕を差し出す。
水嶋は腕で涙を拭うと、服のポケットから手錠を取り出してからこう言った。
水嶋:「福崎善。槐事件及び、殺戮事件等の容疑で逮捕する!」
水嶋はそう言うと、福崎の両手首に手錠をカチャリと掛けた。
その後、姫井が他の警察官たちと共に部屋にやって来て、福崎は水嶋の同行の下、取調室へ連行されて行ったのだった。
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