これまでのあらすじ。
ガク然としてケーキ屋をとびだした吸血鬼ルルーシュ。しかしその後を追わずにマイペースにバイト業にいそしむスザクの前に、渦中のキーパーソンである吸血鬼ユフィがあらわれた。メラメラと燃える恋心、どうなる、どうするスザク!?
だいたいそんな感じで(?)以下からバレンタイン話をどうぞ〜
〜Valentine・cappuccino〜
【7】
「いらっしゃいませお客様……あっ」
「スザクこんにちは」
「ユフィ…君かい?」
「はい、この前はどうもお世話になりました。いつもルルーシュがこちらにお邪魔しちゃっていますけれど、ごきげんはいかがですか?」
「見ての通りで暇だよ」
「アラそうなのね」
「今日は一匹も吸血鬼が現れなかったから、おかげでハンターの召集もかからなくて平和だったよ」
「まあ、フフそんなにそっけない顔しないで下さい。吸血鬼みんながいきなり人間を襲って食べちゃう訳じゃないんですよ?……だから、ね?ポケットのその銀の剣を収めてもらえるとうれしいわ。だってほら、私は丸腰なんですもの」
「……何か用かい?」
「ええ」
「ちょうど良かった」
「はい?」
「僕も君に話があったんだ」
「あら何かしら」
「君がくれたバレンタインのチョコレートの件だけど…」
「もしかしてお口に合いませんでしたか?」
「いや美味しかったよ」
「それは良かったわ。心を込めて作ったからスザクにそう言ってもらえると嬉しいです」
「ただひとつ聞いてもいいかな」
「構いませんよ」
「何を盛ったの」
「……え?」
「毒、とかさ」
「スザク?」
「たとえば吸血鬼にしか効かない薬とかね」
「それってどういう意味ですか……あっ、もしかしてアレの事かしら」
「やっぱり身に覚えがあるんだね」
「ごめんなさいスザク。私は貴方に謝らなくちゃいけないの」
「……」
「昨日ルルーシュから聞きました。私が媚薬をチョコレートに入れたなんて怒鳴られてしまいましたからね、でもあれは誤解です」
「……」
「ブランデーをいれたつもりがあやまって吸血鬼専用のお酒を注いでしまったみたいなの。人間には強力な作用があって、えぇもちろん体には無害ですから安心してください。ただ、これを飲むと吸血鬼の魅力に当てられてしまうの」
「……」
「ヴァンパイアを見るとメロメロになっちゃうんです。だからルルーシュは怒っちゃったのよ。『あのハンターに惚れたのか!』なんて詰め寄ってくるものですから困ってしまいました。いくら私はあなたの事が大好きですよって言っても聞いてくれないんだもの、本当なのに…」
「……」
「朝ごはんも一緒に食べてくれなかったんですよ?とても淋しかったわ。いつもなら同じテーブルで食べていたのに、この前は私の料理を褒めてくれたんです。オムレツが美味しいって」
「ちょっといいかな?」
「はい何ですか?」
「話の途中で悪いんだけど、この効能がいつ消えるのか教えてほしいな」
「ああ、私ったらつい。それなら二日で消えますよ」
「今日までか…」
「大変だったでしょう、スザク。ハンターが吸血鬼を好きになっちゃうなんて掟破りですもの…すみません」
「大丈夫だよ、僕には効かなかったみたいだし」
「えっ」
「だって今きみの事を見ても理性がちゃんと働いてるからね」
「えぇそれはそうだわ。あのお酒は一部の吸血鬼を見ないと効果を発揮しないから」
「こうか?」
「はい。黒です」
「……」
「ルルーシュみたいな漆黒の髪を見ると発動するんです」
「…………………………………………………………………………」
「どうかしましたスザク?」
「道理でジノがああなっちゃったわけだよ…」
「ジノ・ヴァインベルク卿ですか」
「彼の事を知ってるんだ」
「はいもちろん、ヴァンパイアの雑誌に載っていましたから」
「へえー」
「貴族出身のお金持ちで好青年と聞いています。週刊誌の一面を飾っていたからおぼえていました、強豪ハンターという噂で吸血鬼界でも有名なんです」
「そうなんだ」
「ちなみに貴方も紹介されてるんですよ」
「僕も?」
「吸血鬼に大人気なの。今一番倒したいハンターランキングナンバーワンですよ」
「…それって喜んでいいのかな」
「いいと思いますよ。だってあなたを見る吸血鬼たちの目はいつもキラキラしているんですもの、注目されてるってことですよ」
「ふうん…そういうもん?」
「ルルーシュの太鼓判付きですからね。間違いありません」
「ソレあんまりうれしくないんだけど。むしろ迷惑なんだよね」
「ルルーシュのこと嫌いですか?」
「キライ以前の問題だよ」
「好きじゃないんですか?」
「吸血鬼は好みじゃない」
「…………」
「いまなにか言った?」
「いいえ。残念ですと言ったんです」
「ユフィ?」
「だってそうなんですもの。私は貴方がすきですよ」
「は…っ?」
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