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猛烈アプローチ



田島と花井





花井。花井。花井。

好きで好きでたまらない。毎日毎日頭の中で考えたって足りないくらい。どうしてこんなに好きなんだろう。どうしてこんなに愛しいんだろう。
こんなにも想っているのに、どうしてお前は俺だけのものにならないんだろう。

「田島、何してんの?」

深い溜め息をつき顔を上げると、俺の気持ちを知ってか知らずか目の前では愛しい人が脳天気に笑っていた。

「花井のこと考えてた。」

「…お前いい加減にしろって。こないだもそんなこと言って女の子振ったとか聞いたけど本当かよ?」

「本当だけど。」

「マジかよ!」

花井は頭に手を当てて心底困ったとばかりに顔をしかめている。

「真剣に言って来る子に対して真剣に答える義務があるだろ?」

俺は少し驚いた。どうやら真面目な花井に気に障ったのはそこだったらしい。俺はまたてっきらそこで花井の名前を出すなと怒鳴られるんだと思っていたのにどんだけ気遣いさんなんだろ。

「真剣に答えたよ。真剣に答えた結果がそれだったんだから仕方ないじゃん。」

むくれたようにそう言えば、花井は苦笑いを浮かべるばかりだ。

「っていうかじゃあそういう花井こそ、真剣に考える義務があるってことだよな。」

真っ直ぐに見つめると、花井は少したじろいだ。

「お前どこまで本気かわっかんねぇよ…!」

「俺は花井のことならいつだって本気だよ。」

言いながら手を握る。花井は真っ赤になって小さく呟いた。

「ならなおさら…いい加減に返せないから余計悩むじゃないかよ…!からかわれてるだけだって言い聞かせてあんま考えないようにしてたのに、いい加減にしろよな本当!」

そんなこと、初めて聞いた。俺は驚いて声も出なかった。だって花井が俺を、意識してくれてるってこと?

「嬉しい、花井。もっと俺のことだけ考えてよ。」

「言われなくてもそうなってるから困ってるんだよ…!」

耳まで真っ赤になりながら叫ぶ花井が本当に可愛くて、俺はそっと花井の手を取った。ここが教室だなんてもう関係無い。ここは俺と花井だけの空間。

「花井、好き。」

今はただ頷いてくれるだけだけど、いつか君からもこの言葉を聞かせて欲しいと切に願った。







猛烈アプローチ






レイニー、レイニー




リボーンと綱吉






ざんざんと雨が降りしきる中、その少年は佇んでいた。

「どうしたの、傘もささずに」

声をかけると綱吉はすっかり雨に濡れてしまっているその少年を思わず自分の傘にいれた。
漆黒の瞳に端正な顔立ちの幼いその少年は、ゆっくりとこちらを向くと重たい口を開く。

「別に、お前には関係無い。」

少年は、目も合わせずに言い放つ。

実に冷たい物言いではあるが、確かに、と綱吉は思った。
今ここで偶然通り掛かったやつにつべこべ言われる理由もないだろう。
だけど、綱吉はそんな少年を放っておけるほど割り切った人間ではない。
「誰か待ってるの?」

「誰も待ってない。」

「じゃあどうしてここにいるの?」

「分からない。」

分からないから、ここにいる。

少年はそう言うとすたすたと歩き出してしまった。暫くぽかんとしていた綱吉だが、我に帰り慌ててその手を伸ばす。

「ちょっと待ってよ!」

「…なんだよ、関係ないだ…ろ…っ」

「おっおい!大丈夫か!?おい!」

目の前で倒れかけた少年を慌てて支えると、綱吉はそのまま少年を抱き抱え急いで自宅に戻って行った。







***

なんか、あったかい…?

次に少年が目覚めたのは見知らぬベッドの上だった。なんだかいいにおいがしてくる気がする。

くるりと寝返りを打ってみるとそこには先程のおかしな青年の姿があった。

あいつはおかしい。
俺がいたって、みんなチラチラとこちらを見ては素通りしていくだけなのに。わざわざ家に連れて帰るなんて、本当にどうかしてるんじゃないか。
「あ、起きた?」

少年は何も言わない。
否、何も言えなかった。
「あー、喉やられちゃってるみたいだねぇ。ちょっと待ってて!今おかゆ作ったからさ!」

綱吉は得意げにそれを見せるとふぅふぅと息を吹き掛け充分に冷ましてから、ゆっくりと少年の口へと運んだ。しかし、少年は口を開かない。

「…警戒するのも分かるけどさ、取り敢えず食べてくんないと治るもんも治らないよ。病気治ったら好きにしていいから、ね?」

そう言って、ぽんぽんと頭を撫でられると、少年はとても不思議な気持ちになった。
人に触られるのはどちらかと言うと好きじゃない。なのに、なんだか、温かくて恥ずかしい。やっぱりコイツは変なヤツだ。だけど、少しだけ信用してやらないこともない。だって、いいにおいがする。ほかほかと湯気が立つそれが、美味しくないわけがないんだ。

一口食べて確信する。

あぁ、やっぱり。

全て綺麗に平らげると、少年は再び眠りに着いた。








***

「おい、重い。」

目を覚ますと自分の上に何かが乗っていることに気づき声をかけると、青年は勢いよく飛び起きた。

「うわっごめん…って、声出るようになったんだね!よかった!」

「…」

照れ臭くて目を逸らすと、ふと枕元に転がった濡れタオルや、まだ冷たいままの凍り枕が見えた。一晩中、ついててくれたんだろうか。
こういう時に何を言ったらいいのか、少年には分からなかった。手放しに親切にされたことなんて、無かったから。自分のために何かをしてもらったことなんて、無かったから。

綱吉は立ち上がると朝食を作り出した。少年は黙ってそれを見つめる。

「どうかした?あんまじろじろ見られると、やりづらいんだけどなぁ。」
視線を感じて尋ねる綱吉に、しかし少年は答えない。綱吉は、きっとこの少年は甘えるのが下手なんだと思った。寂しそうな目。諦めたような目。
「ねぇ、お前、名前は?」

「…リボーン」

「リボーンか。俺は綱吉。沢田綱吉って言うんだ。よろしくな。」

そう言って、綱吉はリボーンの手をしっかりと握った。

また、だ。
また、変な感じ。
触れた所が、あったかい。

「どうしたの?」

リボーンの目から、ぽろぽろと涙が溢れる。
触れた綱吉の手が無償に暖かくて、優しくて、なんだか泣きたくなった。

綱吉は、そんなリボーンを何も言わずに抱きしめる。
大丈夫、大丈夫。
綱吉の声が聞こえてくる。

自分にも感情がある。
自分は機械なんかじゃない。

綱吉は、それを分かってくれるような気がして、分かってくれているような気がして、リボーンは、思いっきり泣いた。






――――――――――
一応RAIN DROPの原形です。最初はリボツナで書こうと思ってたネタなんですが、あまりにもギアスにはまりすぎたのでスザルルに置き換えてみました。

大切な物を掴むために

3と6と7



「ねぇ、スザクが、行っちゃう。」

「…。」

「ねぇ、ジノ、行っちゃう。」

ずっと一緒だったのに。最後はルルーシュのところに帰るの?私は知ってるのに。スザクが苦しんで苦しんで、全部背負ってそれでも頑張って強く生きようとしてたの、知ってるのに。それもこれも全部、ルルーシュのせいなのに。

「…アーニャ、仕方ないよ。スザクにはスザクの考えがあるんだ。」

「でも、敵同士になっちゃう」

三人で一緒にいるのが好きだった。辛い時もあったけどそれだけじゃなかったよね?だって、何にもない私に沢山思い出が出来たの。スザクとジノが沢山思い出をくれたの。

「…私は、スザクと戦うなんて出来ない。」

「アーニャ。気持ちは分かるけど、スザクはブリタニアに反旗を翻したんだ。それがどういうことかは分かるだろう?」

「…分かるよ。分かるけど。」

じゃあジノは寂しくないの?ジノはスザクと戦うなんて出来るの?そんな感情が関を切って溢れそうになった時、私は初めてジノの手が震えているのに気付いた。あぁ、そうか。そうだよね。寂しくない訳、ないのにね。どんな思いで私を聡そうとしていてくれたんだろう。一瞬でもジノを疑った自分が恥ずかしくてたまらなくなった。

「…ジノ、ごめん。」

「謝ることないよ。」

「…ごめん。でも、スザクが大好きで、大好きだから…っ」

「アーニャ、もう分かったから。私だってスザクが大好きだ。それは今も変わらないよ。」

こんな真っ赤な目をして、戦場になんか行きたくない。だけど私たちは皇帝直属部隊、ナイト・オブ・ラウンズ。いかなる時も皇帝の仰せのままに、命令がでればきっと先陣切って戦いに臨むことになるんだろう。
戦いなんてもういいから、いつかまた三人で一緒にいれたらいいのに。スザクの横にいる筈なのはいつだって私たちなんだから。…でも。

「…スザクは一度もちゃんと笑わなかった。」

「あぁ。彼の元々いるべき場所は、ルルーシュの隣だったのかもしれないね。だからこそ、スザクは彼のことであんなに悩んでいたのかもしれない。」

どこかで否定していた。だけどそうなのかもしれない。スザクがいるべき場所は、共に歩んで行くべき人は、きっと。
それでも一緒に過ごした日々は確かなものだったと私は信じてる。
だからスザクが自分の道を行くなら、私も最後まで自分を信じて進んで行くよ。あなたたちに会えて、私はこんなに強くなれたんだから。

「…ジノ、私、もう大丈夫。」

もう、逃げたりしない。大切なものを見失ったりしない。

「あぁ。行こう、アーニャ。」


大切な物を掴むために




私たちは戦い続ける。




スリースレッド

「はぁはぁ。なるほど。」

「おい、スザク何してんだよ。」

「あのね、いつでも直ぐに何でも出来るようにスリースレッドのポジション取ってるの。」

「…はぁ?」

「ほら、今日体育で習ったじゃない。」

「それは分かる。シュート、ドリブル、パスが直ぐに出来るようなボールの位置、だ。」

「うわぁ実際は出来ないくせに理屈だけはバッチリだね!流石ルルーシュー!」

「黙れ。だいたいそれはバスケでの話だろ?」

「うん。」

「今は何の時間だ。」

「…数学?」

「なら黙って聞けよ。そして離れろ。」

「え〜!」

「そもそもなんだよ。これの何処がスリースレッドなんだよ。この腰に回ってる手はなんだ。」

「だからね、直ぐに抱きしめられて、キスも出来て、あわよくば服も脱がせられるという三欲を満たす最高のポジションを僕は今正に取っているんだよ!」

「すいません先生枢木くんが豚インフルにかかったので隔離した方がいいと思います。」

「え〜!かかってないかかってない!!え!ちょ!みんな!なんで〜!?」












―――――――
うわぁくだらなーい^^

きっと、飛べる。

エウレカとレントン






「エウレカ!こっちこっち!」

少年は少女を手招きすると、颯爽とバイクに跨がる。

「ほら、後ろ乗って!」

言われるがままに少女は後部車輪に足をかけ、その上にゆっくりと立ち上がった。

「ねぇレントン、ちょっと怖い…かも。」

「じゃあさ、俺にしっかり捕まっててよ!」

少年は少女の手を取り自分の肩に乗せた。

「まだ怖い?」

少年が優しく問いかける。

「…ううん。レントンと一緒だもん。」

少女はもう笑っていた。

(いつの間に、こんなに背中、広くなったんだね。)

少年はハンドルを握る手に力を込めると、スピード全開で駆け抜けた。

「レントン!何処行くの!?」

風に負けないように大きな声で叫ぶ。

「分からない!決めてないんだ!」

少年もまた大きな声でそう返した。後ろで少女が少し笑ったことを、少年は知らない。

「レントンらしいな。」

「何か言った!?」

少女はまた少し笑って、少年の耳元で囁いた。

「レントンと二人なら、きっと何処へでも行けるって言ったの!」

少年は思わず後ろを振り向く。しかし少女に注意をされ、すぐまた視線を前に戻した。

「レントン、前向いてなきゃダメじゃない。」

「そうだよ。エウレカがいれば何時だって俺は前を向いてられるんだ。」

少年の腕に力が篭る。一気にバイクが加速した。

「しっかり捕まっててよ、エウレカ!」

それを聞いて少女は少年の腰に手を回し、ぎゅうとしがみついた。
少年の鼓動が速くなったことを、少女もまた知らない。

「アーイ、キャーン、フラーーーイ!!」


バイクはスピードを上げまるで飛んで行くように向こう側へと消えて行く。
少年と少女が走り去った後ろには、綺麗な虹が広がっていた。








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