3と6と7
「ねぇ、スザクが、行っちゃう。」
「…。」
「ねぇ、ジノ、行っちゃう。」
ずっと一緒だったのに。最後はルルーシュのところに帰るの?私は知ってるのに。スザクが苦しんで苦しんで、全部背負ってそれでも頑張って強く生きようとしてたの、知ってるのに。それもこれも全部、ルルーシュのせいなのに。
「…アーニャ、仕方ないよ。スザクにはスザクの考えがあるんだ。」
「でも、敵同士になっちゃう」
三人で一緒にいるのが好きだった。辛い時もあったけどそれだけじゃなかったよね?だって、何にもない私に沢山思い出が出来たの。スザクとジノが沢山思い出をくれたの。
「…私は、スザクと戦うなんて出来ない。」
「アーニャ。気持ちは分かるけど、スザクはブリタニアに反旗を翻したんだ。それがどういうことかは分かるだろう?」
「…分かるよ。分かるけど。」
じゃあジノは寂しくないの?ジノはスザクと戦うなんて出来るの?そんな感情が関を切って溢れそうになった時、私は初めてジノの手が震えているのに気付いた。あぁ、そうか。そうだよね。寂しくない訳、ないのにね。どんな思いで私を聡そうとしていてくれたんだろう。一瞬でもジノを疑った自分が恥ずかしくてたまらなくなった。
「…ジノ、ごめん。」
「謝ることないよ。」
「…ごめん。でも、スザクが大好きで、大好きだから…っ」
「アーニャ、もう分かったから。私だってスザクが大好きだ。それは今も変わらないよ。」
こんな真っ赤な目をして、戦場になんか行きたくない。だけど私たちは皇帝直属部隊、ナイト・オブ・ラウンズ。いかなる時も皇帝の仰せのままに、命令がでればきっと先陣切って戦いに臨むことになるんだろう。
戦いなんてもういいから、いつかまた三人で一緒にいれたらいいのに。スザクの横にいる筈なのはいつだって私たちなんだから。…でも。
「…スザクは一度もちゃんと笑わなかった。」
「あぁ。彼の元々いるべき場所は、ルルーシュの隣だったのかもしれないね。だからこそ、スザクは彼のことであんなに悩んでいたのかもしれない。」
どこかで否定していた。だけどそうなのかもしれない。スザクがいるべき場所は、共に歩んで行くべき人は、きっと。
それでも一緒に過ごした日々は確かなものだったと私は信じてる。
だからスザクが自分の道を行くなら、私も最後まで自分を信じて進んで行くよ。あなたたちに会えて、私はこんなに強くなれたんだから。
「…ジノ、私、もう大丈夫。」
もう、逃げたりしない。大切なものを見失ったりしない。
「あぁ。行こう、アーニャ。」
大切な物を掴むために
私たちは戦い続ける。
「はぁはぁ。なるほど。」
「おい、スザク何してんだよ。」
「あのね、いつでも直ぐに何でも出来るようにスリースレッドのポジション取ってるの。」
「…はぁ?」
「ほら、今日体育で習ったじゃない。」
「それは分かる。シュート、ドリブル、パスが直ぐに出来るようなボールの位置、だ。」
「うわぁ実際は出来ないくせに理屈だけはバッチリだね!流石ルルーシュー!」
「黙れ。だいたいそれはバスケでの話だろ?」
「うん。」
「今は何の時間だ。」
「…数学?」
「なら黙って聞けよ。そして離れろ。」
「え〜!」
「そもそもなんだよ。これの何処がスリースレッドなんだよ。この腰に回ってる手はなんだ。」
「だからね、直ぐに抱きしめられて、キスも出来て、あわよくば服も脱がせられるという三欲を満たす最高のポジションを僕は今正に取っているんだよ!」
「すいません先生枢木くんが豚インフルにかかったので隔離した方がいいと思います。」
「え〜!かかってないかかってない!!え!ちょ!みんな!なんで〜!?」
―――――――
うわぁくだらなーい^^
エウレカとレントン
「エウレカ!こっちこっち!」
少年は少女を手招きすると、颯爽とバイクに跨がる。
「ほら、後ろ乗って!」
言われるがままに少女は後部車輪に足をかけ、その上にゆっくりと立ち上がった。
「ねぇレントン、ちょっと怖い…かも。」
「じゃあさ、俺にしっかり捕まっててよ!」
少年は少女の手を取り自分の肩に乗せた。
「まだ怖い?」
少年が優しく問いかける。
「…ううん。レントンと一緒だもん。」
少女はもう笑っていた。
(いつの間に、こんなに背中、広くなったんだね。)
少年はハンドルを握る手に力を込めると、スピード全開で駆け抜けた。
「レントン!何処行くの!?」
風に負けないように大きな声で叫ぶ。
「分からない!決めてないんだ!」
少年もまた大きな声でそう返した。後ろで少女が少し笑ったことを、少年は知らない。
「レントンらしいな。」
「何か言った!?」
少女はまた少し笑って、少年の耳元で囁いた。
「レントンと二人なら、きっと何処へでも行けるって言ったの!」
少年は思わず後ろを振り向く。しかし少女に注意をされ、すぐまた視線を前に戻した。
「レントン、前向いてなきゃダメじゃない。」
「そうだよ。エウレカがいれば何時だって俺は前を向いてられるんだ。」
少年の腕に力が篭る。一気にバイクが加速した。
「しっかり捕まっててよ、エウレカ!」
それを聞いて少女は少年の腰に手を回し、ぎゅうとしがみついた。
少年の鼓動が速くなったことを、少女もまた知らない。
「アーイ、キャーン、フラーーーイ!!」
バイクはスピードを上げまるで飛んで行くように向こう側へと消えて行く。
少年と少女が走り去った後ろには、綺麗な虹が広がっていた。