夜は朝を迎える。朝は夜へと誘われる。
この地に昇る太陽は、果たして誰に望まれてそこにいるのだろうか。
あの月は、お前を食い殺そうとしているのかもしれないのに。
そんなことを考えるのは俺だけなのだろうか。あの月に覚えるこの不安は、死を連想するからではない。
太陽が食われたら、人はいつ目を覚ますのだろう。その目覚めない眠りを連想させることが、俺にとって心臓を食い破らんとするほどの焦燥感に駆り立てる。
このことは、チャットには言っていない。
大変なことになるというその曖昧さに、それを騒ぎ立てる人々に、自分を埋めることでその不安から目を逸らしている。
「ねえちょっと!聞いてるの?はやく探しにいかないと!」
目の前のやらなければいけないことを片付けていくうちに、点と点は繋がっていく。線は後ろにしか伸びないはずが、自分の前に少しずつ伸び始めたその幻に、足を止めそうになる。
この先にいるのは誰だ?
空を見上げた。あの月は顔のようなものがある。あの顔は、どういう意味があるのだろう?
悲哀、絶望、虚無、憤怒、それとも。
誰のため?何のため?何処を見ている?
「チャット」
「なに?」
「一度、戻る」
オカリナを構えて息を吹き込む。
チャットの声が遠くなる。申し訳ないと思いながらも、時の激流に身を投げた。
まるで死ぬみたいだ。
そう思うと、なんだかとても穏やかになれる気がした。
(水面ほど歪んでくれたなら、君の表情も変わって見えただろうか)