虚匣

新しい服も無く、雨雲の歓迎を受けて氣分は灰色。救いは灰色が嫌いでは無いことだけれども、そう云う問題でも無い氣がする。
糸雨に煙ったように世界がくすんで視えるのは、恐らくビタミン不足に因るのでしょう。
心身共にね。

メィルの返信はしたし、サテ本を読もうと鞄を漁ったら何も無かった。
２冊入れた心算だったのに何も無かった。
代わりにノートと筆箱が入っていたので、仕方無くペンを執る。
和訳の転がっている大切な唄の歌詞を初めて眺めてみる。
英語は出來無いのに、慣れ親しんだ母国語で読むよりも、原文はストレートで刺さった。
当人の訳なのか、第三者の訳なのかさえ知らないけれども、解らないが故に装飾を剥がされた原文のことばはとても真摯だ。
書き写して変換を試みる。
ナンセンスと分不相応を承知の上で眺めてみる。
感覚として捕らえた輪郭が、手前の言語では絡め捕れなくてことばを失う。
虚な箱を直視して、何とも云えない。