けんちゃんは、
ブルーの小箱を差し出した。
『遅くなりましたけど、
お誕生日プレゼントです(^^;)』
『私に?』
スワロフスキーの、
ピンクの石が可愛いネックレスだ。
職業がら、
指輪や 華美なヘアアクセサリーなどは禁止されている。
『これならシャツに隠れるし、
仕事中もつけられるでしょ?』
そんなことまで考えてくれたんだ。
なのに私は、
ふたりの間に 誕生日なんかないことにしようって…
嬉しいのと情けないのとで、
たぶん顔をクシャクシャにして泣いた。
泣きながら、
ネックレスの金具を外そうとして、
『けんちゃ〜ん!
前が見えない〜(ノД`)』
けんちゃんは、
しゃくり泣きしてる私を笑いながら、ネックレスをつけてくれた。
『うん…
似合いますよ(^^)』
決して安いものではなかっただろうに。
あの時、あんなひどいこと言ってしまって…
そろそろやってくる けんちゃんの誕生日に
私も何かプレゼントを用意しなきゃ。
帰省してた娘も大学に戻り、
またそれぞれひとりの生活。
子供たちがいる間はけんちゃんに会ってなかったから、
今日は2週間ぶりに会えた。
何となく、
母親モードになっちゃうのか、
短い期間に、子供たちにしてあげたいことがいっぱいあって、
けんちゃんは後回しになっちゃう(^^;)
子供だって、構う歳じゃないんだけど…
久しぶりに会ったけんちゃんは、
もうたまんない! って感じで
懐に飛び込んできた。
ごめんね、ほったらかしにして…
って、
フワフワの髪を撫でてたら、
けんちゃんのスマホが鳴った。
『宅配が来たみたいです。
ちょっと、待っててくださいね!』
けんちゃんは、小走りて階下に降りてった。
なんか途中で中断されちゃって、
悶々としながら衣服を直して待ってたら、
またけんちゃんは走って戻ってきた。
『なに買ったの?』
『……』
けんちゃんは無言で箱を開けて、
中の物を取り出した。
『あの〜、
今さらなんですけど、これ…』