これはある隊員達の日常を切り取ったもの。時系列は本編から数ヶ月後のどこか。



case1.悪気はないんだが


いちかは小柄でフレンドリーな性格なせいか、よく動物に例えられている。本人はナチュラルにボディータッチをしてしまうようなやつだ。
いつの頃からか、寂しすぎて馴染みの仲間限定で抱きつき癖という迷惑な癖がついた。それもダッシュで突っ込んでくる。犬かよ!

ダッシュでタックルしてくるのは毎回ではないが、休憩所と司令室は色んな意味でデンジャラス。


・御堂和希の場合


ある日、御堂は休憩所へ。


そこに待ち構えたかのようにいちかがダッシュして飛び込んできた。

「御堂たいちょー!」
いちか、満面の笑み。
「ぎゃあああああ!!アメフトかーっ!!」
御堂、ギリギリでかわす。


・紀柳院鼎の場合

ある日、休憩所へ彼女が入ったと同時にいちかがダッシュで抱きつ…タックルしてきた。いちかは何かがあったのか泣きながら。


「きりゅさーん!会いたかったよおお!!」
鼎は冷静にタックルを指2本で止めた。周りの隊員達は驚く。

あの時任のアメフトばりのタックルを止めた!?


鼎はいちかの頭をなでなでする。彼女はいちかの扱いに慣れていた。
「いちいちタックルしてくるな。話をしろ、聞いてやるから。いちか…お前は猪か!」

司令補佐がツッコミをいれるなんて…レアだ。…と周りの隊員達は思ったとか思わないとか。


・宇崎幾馬の場合

ある日、司令室にひとりでいた宇崎室長(司令)。扉が開く。なんとなく嫌な予感が…。
そこにはいちかの姿が。なんかよくわかんないけど、めっちゃ目ぇキラキラしてるよーっ!


「しつちょー!たまにはあたしの話を聞いてくれーっ!!」
「ぶふぉっ!!」

宇崎、避けきれずに突き飛ばされた。いちかは闘牛の牛かっ!!意外とパワーあるし!侮っていた…恐ろしい子…。


「いちか、頼むからタックルするの…やめて…。みぞおちにヒットした…」
宇崎は痛みに悶えてる。

「室長、すいませんです」


絶対、反省してないだろ。こいつ。



case2.ゼルフェノア広報班


特務機関ゼルフェノアには広報班なるものも存在する。主に隊員募集のポスター制作をしたり、ゼルフェノアの活動内容を伝える役目を担っているのだが…この班のチーフも癖が強い。


ある日。広報班チーフ・峯崎は一眼レフを持って館内をうろうろ。
御堂は姿を見かけるなり、察した。


――隊員募集ポスター制作の時期が来たかーっ!!
峯崎のやつめっちゃ狙ってる、狙ってるよ!!
あいつの餌食になったら終わり…。喰うか喰われるか…。


御堂は汗だらだら。峯崎の怖さを知っているからだ。

彼は一眼レフを持つとキャラが豹変する。


峯崎は館内をずっとうろついてはポスターのモデルを探しては、フラれの繰り返し。彼はついに司令室に入ってしまう。


「どうも!広報班の峯崎と言います。あの…隊員募集ポスターのモデルに紀柳院司令補佐…なって頂けないでしょうか?」
峯崎、ごますりモード。


御堂は物陰からこの様子をチラ見。鼎は即答。


「断る。他を当たれ」

峯崎、大ショック。わかりやすいリアクションしてる…。

「私がモデルになったところで組織のイメージ向上にはならないだろうが!
広報班の峯崎と言ったな…私は『仮面』だと言うのを忘れているのか?ふざけるなよ?」


鼎の圧がものすごい。峯崎は圧にびくびくしている。

…これが紀柳院「司令補佐」…!この人、怒らせたらめちゃくちゃ怖い…!
仮面のせいもあるのだろうか。とにかく怖い…!

峯崎は怖じけづいて退散した。


それからしばらくして。隊員募集ポスターのサンプルがいくつか完成。
峯崎は隊員達にデザインを選ばせるらしい。

ボードに張り出されたポスターのサンプルはかなり癖の強いものばかり。
御堂といちかは突っ込んだ。

「これは選挙ポスターかよ!場違いすぎんぞ広報班!遊ぶなーっ!!」
「たいちょー、このサンプル某映画のパロディっすよ?構図まんまっす」

「峯崎呼んでこい。これ全部ボツだ。あいつらは真面目に作ってない!」

司令の宇崎まで突っ込んでる有り様。


なんだかんだひと悶着あって、広報班制作の隊員募集ポスターは爽やかなイメージの自衛隊や海保にありそうなデザインに落ち着いた。
写真モデルは人気タレントを起用。クリエイターに依頼した、アニメ絵バージョンのポスターもある。


御堂達は呟いた。

「これ、毎年ひと悶着あるんだよなー…広報班のポスター騒動。結局爽やか路線になるんだけどよ。もはや組織の風物詩」
「峯崎さん、一眼持つとパパラッチみたいで怖すぎるっす」
いちか、びくびくしている。どうやらいちかも追われたらしい。

「今回は鼎にがっつり言われて猛省したみてーだぞ。鼎を怒らせるとめちゃくちゃこえーから…」
「峯崎さん、きりゅさんの地雷踏んじゃったかなぁ…」

「明らかに踏んでるだろ、あれは」



case3.桐谷さんの過去と紅茶


組織の休憩所でよく見られるのが、桐谷が紅茶を優雅に淹れている光景。
桐谷はいつもマイペースに休憩所の隣の給湯室で紅茶を淹れてるのだが、紅茶に対するこだわりが強いのか?


「きりやん、紅茶好きだよね。アフタヌーンティーとか飲んでそう」
「アフタヌーンじゃなくても飲んでますから」

桐谷といると場が和む。いちかは話を聞いているうちに桐谷が組織に入る前はバスの運転手だったと知る。

観光バスの運転手だった。


「き、きりやん意外すぎる…!」
「え?私なんて経歴が異色の中でもまだまだな方ですよ」

元バスの運転手よか異色の経歴の隊員いるの!?ここ…。


「元看護師は意外と多いですし。元教師や元自衛隊もちらほらいます。変わったところだと元動物園の飼育員もいますねぇ〜」


どんな組織だ、ゼルフェノア!?
変なもん引き寄せてない!?気のせい!?


「時任さんみたいにヒーローに憧れて入った人もいますから、浮いてないですよ」
「きりやん、ヌン活しないの?」

桐谷はかなり遠慮がちに返した。
「紅茶は好きですが、そこまでやろうとは思わないですよ…ははは」
「じゃあそのスコーンはなんなんなんじゃ!?」


桐谷はたまにスコーンを手作りしては、おやつにと持参している。食いしん坊のいちかにはお見通しだったらしい。

「た、食べます?1個あげますよ」
「やったー!!」


…餌付けかな。