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あなたを知りました(原沢)


iPhoneの画面に映し出されている彼ーー…以前、躍動感に満ちたスポーツ…ハンドボールをしていた男子生徒が、仮装した姿の画像を見ながら、原沢は…想いを巡らせていた。

盗み聞きをするつもりなど、気はなかった原沢だったがー…
(お母さんからプレゼントされた仮装用の衣装…某映画の主人公の仮装をしていた原沢)
仮装が、歳頃の原沢の羞恥心を煽り…異性である彼を意識してしまい、隠れてしまった。
結果として、同じく仮装をしていた女子生徒ー…快活な狼少女との会話を盗み聞きする事になってしまったのだが…

原沢の意識が、完全にiPhoneの画面に映し出されている彼へ向けられていた時…注がれる視線と、忍び寄る狼少女の気配に…原沢が気づいた時には、刻既に遅し。


隠れていた場所から引っ張り出され、肩に置かれた、可愛い肉球がついた手袋が…しっかりと原沢を捕らえていた。

興味深々かつ、宝物でも見つけたように満面の笑みの狼少女がー…原沢を彼の前へと、連れ出してくれたのだ。

手の届く範囲にいる彼の姿に、緊張と憧れが込み上げるものの…歳頃の羞恥心から、嬉しさと恥ずかしさも混じり合い…困った顔になってしまった原沢。


そんな原沢を見かねてか…彼は、狼少女から原沢を引き剥がしてくれた。

原沢の肩に置かれた彼の手。包み込むように抱かれた腕の中、間近で見た…本物の彼の顔に、原沢は更に赤くなる。

白布からでも感じる事の出来る、大きな掌と温もり。運動している彼の逞しい腕と肩の力。
自分とは明らかに違う、異性の身体つき。
しかも、異性なゆえに…原沢よりも身長があり、少し上を向かないと、彼との視線を合わせる事が出来なさそうな事も理解した。

狼少女との会話は、軽口の言い合い?ようにも聞こえて…親しい間柄である狼少女に、原沢の心は陰りを落としそうになる。

それもそのはずで…
狼少女の方が、メリハリのある…女の子の身体つきをしていたからだ。
対して原沢は…メリハリのある身体つきとは、遠いのだ。狼少女と比べれば、原沢の胸は小さいし…女の子としての、身体の成長期が遅いからだ。
同性として、原沢は狼少女の身体つきが…少し、羨ましくもなる。

『サクラ先輩も…』
ようやく知った彼の名前を呼びつつ、異性はやはり、メリハリのある身体つきの女の子の方が…などと、実に歳頃の女の子の考えをする原沢。

原沢は、軽口の言い合いをする2人の会話が終わったのを…彼の雰囲気と、やや疲れたであろう表情から察して、チラリと彼へ視線を向ける。

そして…偶然にも、彼と、ほんの数秒でも視線がかち合う。

彼は、自分がした行為に驚きつつも、異性が側にいるこの瞬間も…全てを引っくるめて、人見知りをしているように感じた原沢。

離れ、項垂れる彼の姿に……少し、ほんの少しだが…くすくすと、気づかれぬよう、笑顔を浮かべた原沢。
もちろん、助けてくれた事への感謝や…申し訳ない気持ちがないわけではない。
が、無意識でも…行動した彼の姿や、ハンドボールの姿、つい先ほどまでしていた…軽口の言い合いの姿とは違い、新たな一面を見せてくれた事に…つい、笑顔になってしまったのだ。


つい先ほどまで言い合いをしていた狼少女が、原沢に…両手をぶんぶんと振り、こっちにおいでよぉーー!と、呼んでくれている声に…原沢は、笑顔で頷いた。

「私、美術専攻科に在籍している、1年の原沢 鈴乃と言います。」

離れ、項垂れる彼に…はじめて、自分の名前を口にする。
が、直ぐに先ほどの狼少女に、大声で指名されて…原沢は、彼の名前を聞かずに狼少女の方へ慌てて駆け寄って行く。


彼の名前を勘違いしている事など知らず、狼少女と…その周囲にいる友だちとの会話が弾む原沢だった。





(コラボ小説です。

最後まで、こんな長文を読んでくれて、ありがとうございました。m(_ _)m)







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