「ルーク」
「どうしたレオン」
「今俺は気づいたんだよ…暇だって事にな!」
「今更!?」
1時間程前から部屋の主のベッドを陣取り、特に何をするでもなく占領していたレオンは、無駄に勢いよく起き上がったためにベッドから落ち、ついでに引っ張られてルークも落ちることになった。
「稽古でもするか?」
突然暴れだすのはいつものことなので、ルークはぶつけた場所を擦りながら会話を続けた。レオンは半分ベッドから落ちた状態で「嫌だ!」と返した。
「嫌なのかよ。他にすることもないんだろ」
「例えあったとしても俺は暇を貫く!!」
「何かしろよ!?」
「あ、じゃああれだ、ベヒモス会いに行こうぜ。ガイなら牛丼作れるだろ」
「食えねぇよ!つーか、グランコクマに何を持ってくつもりなんだよ!?」
「厄災」
「こえぇよ!」
レオンはルークのツッコミにからから笑いながら、再度ルークのベッドに倒れ込んだ。暇と言いながらも、どうやら部屋から出るつもりはないらしい。ルークもそれを悟ってか、それ以上誘うつもりはなかった。
突如部屋に現れたレオンは丸1日こんな様子でいる。ルークにちょっかいをかけては、楽しそうに笑う。いつも通りと言えばそうなのだが、何と無くむずむずする感じがして、ルークも剣の手入れに集中できなかった。
「…何かあったのか?」
耐えられず先に問いかけるルーク。レオンは目をぱちぱちと瞬かせ、ルークに向けていた視線を天井に移すと、一旦目を閉じてから笑みを浮かべて「別に」と返した。
「何かちょっと雰囲気が違うっつーか、上手く言えないけど、なんか…まあ、別に何もないならいいんだけどさ」
「…まー、単純に幸せだなって思ってただけだよ」
「は?」
幸せ、などと言い出す彼女に、今度はルークが目を丸くした。
「お前と話したり、名前呼んでもらったり、ちょっと前は当たり前になってて結構忘れてたけど、やっぱ改めて幸せだなーってさ」
「いきなり過ぎるだろ、それ」
「まあ、久しぶり特典ってことで」
「なんだよそれ」
ルークは違和感の謎が解けてすっきりしたものの、また別のざわざわした感覚が体の中に溢れてきた。浮き足立つような、落ち着かない感覚。
ルークはすぐに分かった。自分も、嬉しいのだと。
それを何だか知られたくなくて、ルークは窓の外を見ながら呆れたような声を出した。
「ははっ、有難うルーク」
楽しそうに笑いながらお礼を言う少女の姿を見て、少し頬が熱くなるのを感じながら、「はいはい」とだけ返した。
心のなかでだけ素直に、有難うと返しながら。
(君とまた会えたことが)
(一番の幸せ)