ここしばらく映画三昧の日々を送ってます
たたら侍やら花戦さやらキングアーサーやら爆音上映でキングスマンを見て、アイアンマンとシャーロック・ホームズ、そしてあともうひとつ、パフューム ある人殺しの物語を観た
まぁどれもいろいろ思うところはあったし、それぞれ楽しかったのだけれど、パフューム『ある人殺しの物語』、これについて感想ブログをざっと探して見て、なんか自分の感じた感想とあまりにも違うものばかりなので面白くて、ひとつ
今日観た映画、ということで語ってみようと思う
めっちゃネタバレします
追記にて
倫理的にかなりヤバい映画だった
マジモンのサイコパスが主人公、ではあるのだけれど、彼の人生を思えば成るべくして成ってしまった悲劇の果実でもあるんだろうなあ、と思う
愛されることなく、愛を知らない
人間というよりは限りなく獣に近い生き物であり、獣ですら持ち合わせている仲間意識さえ与えられず、理解できず、誰からも求められることのない人間
だからこそ倫理も道徳もなく善を善と思わず、また悪を悪とも思わず自分の欲求のみで動いてしまう
人間にとって誰からも求められることのない人生というのは大きな悲劇のひとつ
そして嗅覚という才能を持ち、嗅覚というひとつのもので世界と繋がっていたのに自分の匂いがないという事実、これで自分というアイデンティティが揺らぎ、危機を覚える
ならば世に自分という存在を残し、求められる存在になろうという、あまりにもシンプルなその欲求がただひとつ彼の人間らしい部分である、というのがとても哀れです
そして目的のために究極の香りを作ろうとパーツを求め12人を殺害するわけです
その間にいろいろ試行錯誤してるんですが、ひとつのパーツを完成させたときに主人公がすこしだけ指にそのエッセンスをつけるシーンがあります
そのときに他人からの反応が不自然に優しくなったんですよね
直前までめっちゃ理不尽に怒っていて乱雑に八つ当たりしてくるのに、主人公がそのエッセンスをつけた瞬間に急に優しい人当たりになる
あっこれ、エッセンスの効果?1滴で、しかもまだ未完成の時点でこれってヤバくない??????と最初は女の子の香りだからつけるとアイツは主人公を女性みたいな扱いをしたのかな〜さすがすけべな男w(そういう役柄だった)とかバカなこと考えてたんですけど
完成した香水はそんなものではなくて人類愛とかに近いエロスとかアガペを呼び覚ますものだったんですね
だから処刑される寸前に主人公が香水つけたらそれまでの粗末な扱いから一変して恭しくかしずくようにされて、無実だ〜とか天使とか言われてしまうし、匂いを纏わせたハンカチが人々の上にばら蒔かれることで主人公のみが敬愛される世界から周りすべてが性愛の対象になって男女関係なく乱交にw
最初に登場する香水の名のように『愛と精霊(プシケ)』であれば肉体の交わりは必要がないのに、悲しいかな人間は人間であるがゆえに肉の交わりから離れることはできない
そこで主人公は初めて自覚したみたいですね(ちなみに主人公は娼婦は買っていたけど童貞のまま)
愛し愛される、つまり求め求められるには肉体が必要なのだと
けれど、彼のファムファタルはもういない、彼自身が殺してしまったから
絶望したでしょうね、だから女性の父親が殺そうと迫ったときに抵抗もしなかった
だけどその願いは叶えられず、そのうえ、偽りの愛まで与えられてしまう
息子ではないのに、息子と呼ばれて愛される
自分という存在を認めてほしくて、なのに自分が自分でいられないので逃げるんですね
それで生まれた場所へと戻る
そしてそこで自分にありったけの香水を被って自殺するんです
運命の女をなくし、自分という存在もなくて生きていたくなかったから
愛してほしくて、崇めてほしくて被ったわけではないと思う
結果を知っていて、選択したのだと思います
才能があるゆえに凡人になり世に埋もれることもできず、人を知らないが故に人になれなかった、天災のような存在
才能がなかったらここまで彼も苦しまなかっただろうし、呪いのような欲求で身を滅ぼすこともなかったはずです
めっちゃサイコで怖すぎるんですけど、同時にめちゃくちゃ哀れな人物でもありました
そんで、この主人公の役者さんの演技ヤバかったです
冷徹な人を人とも思わないサイコパスを演じきっているのもそうですけど、学もなく知識もないけれども血を吐くような一心で目的を追い求めてその強すぎる欲求に翻弄されている人物像を見事なまでに表現されていました
説明的な台詞なんてほとんどないのに見ているだけで主人公の感情が伝わる演技がほんとうに素晴らしかった
そして音楽も上品ながらもめっちゃくちゃストーリーを引き立てていてすごかったし、嗅覚という目に見えないものを映像で表現する演出とストーリー構成もよかった
でもナレーションはちょっと説明的すぎるし多すぎるかな
多分話を掴むのが苦手な人向けなんだろうけどわたしにはくどかった
セットもすごかったし、あと黒と暗闇を多用する画面もよかったです
黒が多い絵にすることで香りを光で表現するというのがとても引き立ってた
でもなんで映画にしたんやこれw
別に伝えたいこととかないやろ……w
まぁそういう変な思い入れがなかったから映画の出来として成功したのかもしれない
この話をどうしたら上手く映像化できるかな?というシンプルすぎる欲求で作られた映画みたいだな〜と思いました
人を選ぶ内容だけど映画の出来としてめっちゃ高度な作品でした
うん、おもしろかったな…ワクワクどきどきとは違うけどw