恋愛マンガの金字塔作品として呼び声の高い、魚喃(なななん)キリコ『南瓜とマヨネーズ』の実写映画化が決定した。11月に新宿武蔵野館ほかにて全国公開される。女優の臼田あさ美が原作を初めて読んだときから出演を熱望していた、思い入れたっぷりの本作で5年ぶりに映画主演を務める。
ツチダ(臼田あさ美)は同棲中の恋人・せいいち(太賀)のミュージシャンになる夢を叶えるために、内緒でキャバクラで働き生活を支えていた。一方、無職で曲が書けずスランプに陥ったせいいちは、毎日仕事もせずにダラダラと過ごす日々。しかし、ツチダがキャバクラの客・安原(光石研)と愛人関係になり、生活費を稼いでいることを知ったせいいちは心を入れ替え働き始める。そんな矢先、ツチダにとって、いまでも忘れられない昔の恋人・ハギオ(オダギリジョ−)と偶然、再会を果たした。過去の思い出にしがみつくようにハギオにのめり込んでいくツチダだったが…。
『南瓜とマヨネーズ』は夢を追うミュージシャン志望の恋人と、自由奔放で女好きな昔の恋人の間で揺れる女心を描く恋愛マンガ。1998年から1999年にかけてCUTiE comic(宝島社)にて発表された。映画化もされた[blue(マガジンハウス)][strawberry shortcakes(フィールコミックスGOLD)]などの魚喃キリコの代表作を、[乱暴と待機][パビリオン山椒魚][パンドラの匣]などで知られ、2015年に[ローリング]で[第89 回キネマ旬報ベスト・テン]日本映画第10位を受賞した鬼才・冨永昌敬監督が実写化。もろく崩れやすい日常の大切さを説きながらも、女性の切ない恋模様をリアルに描いた原作世界を忠実に再現。近年の青春恋愛映画を象徴するような、“壁ドン”“顎クイ”などは一切なし!20代半ばに誰もが経験するような、甘く切ない恋のほろ苦さ、そして人には言えない葛藤を描く等身大の恋愛映画を誕生させた。
主人公の女性・ツチダ役は臼田あさ美。今彼「せいいち」と元彼「ハギオ」の間で揺れるツチダの繊細な女性心理を見事に表現した。ツチダに生活を支えられながら夢を追う、ミュージシャン志望のツチダの彼氏・せいいち役は太賀、ツチダが再会を果たす忘れられない昔の彼のハギオ役はオダギリジョーが担当。自由奔放で女にだらしのない役柄ながら、どこか憎めないキャラクター像を作り上げた。冨永監督とは商業長編デビュー作[パビリオン山椒魚]以来、約11年ぶりのタッグとなる。
またツチダとともにキャバクラで働く同僚役には清水くるみ、ツチダがせいいちとの生活費を稼ぐためにツチダと愛人関係になるサラリーマン・安原役には光石研がキャスティングされる。せいいちのバンド仲間には浅香航大、若葉竜也、大友律、岡田サリオらが名を連ねた。
また、「音楽」「バンド」が重要な要素となる本作では、音楽監修と劇中歌制作は、MVで冨永と数々タッグを組んでくるなど親睦も深く、や唯一無二の活動を続ける音楽家・くしまるえつこが引き受ける。撮影は昨年10月、下北沢を中心に都内近郊で行われた。
▽臼田あさ美コメント
映画を作りました。と、こうして皆様に伝えられること、ツチダとして過ごした時間、せいちゃんが太賀さんだったこと、ハギオがオダギリさんだったこと、すべてが尊くて、大切で、嬉しいです。そして4年も前に声をかけてくださった監督の冨永さんと、やっとの想いで特別な日常を収めました。1999年の魚喃キリコさんが誕生させたツチダが2017年の今も相変わらず元気でやってます。
▽太賀コメント
映画に参加するにあたって原作を読ませて頂きました。自らの感情のわからなさに立ち止まる登場人物に強烈に共感を抱きました。あたり前の事なんて何一つもない、男女の平凡な奇跡と、葛藤。この原作のもつ普遍的な尊さがどうか映画に宿ってくれと、撮影に臨みました。
冨永組として「南瓜とマヨネーズ」を作っていく過程は、役者としてあまりにも濃密で幸せな時間で、撮影を終えた今でも、心地の良い余韻がまだ残っています。原作ファンの方にも映画ファンの方にも納得して頂ける作品になっていると思います。
▽冨永昌敬監督コメント
主人公ツチダの望みは「せいちゃんの歌を聴きたい」というごく些細なものでした。せいちゃんが軽い性格だったら一秒後にはイントロが聴けるかもしれないほど、些細な望みです。もの作りというのは自意識と生活と時間のあいだで、その三つを削るようにして為されるものである。などと断言するつもりはありませんが、ある意味で時間にボロ負けしてしまったのがこの二人なのだと思います。結末にはツチダの涙とせいちゃんの歌声と、二人の爽快な敗北が待っています。と言ったところでネタバレ全然してません。この映画が目指したのは、結末を先に知ってもまったくネタバレにならない魚喃さんの作品の、とりわけその描写の強さでした。なので、まず、魚喃さんが描いたツチダそっくりな人を探しました。その女優はすぐに見つかりましたが、似ているのは顔だけではなかった気がします。ツチダは臼田さん以外にありえません。臼田さん本人もそう思ってるはずです。
▽原作・魚喃キリコ コメント
みごとにのまれた、感謝!