現役の精神科医である作家・帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)による、第8回山本周五郎賞受賞のベストセラー小説『閉鎖病棟(仮)』が映画化決定。主演を約10日間で7kgも減量した笑福亭鶴瓶が務め、綾野剛、小松菜奈が共演する。

長野・小諸にある精神科病院には、様々な過去を背負った患者たちが暮らしている。母親や嫁を殺害した罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生きながらえた梶木秀丸。幻聴が原因で暴れるようになり、妹夫婦から疎んじられている元サラリーマンのチュウさん。不登校のため通院している女子高生・由紀。患者たちは世間から隔絶されても、明るく生きようとしていた。ある日、穏やかな日常を一変させるように、秀丸が殺人事件を起こしてしまう。 彼を犯行に駆り立てた理由とは…?

1995年に発売された、丸善・お茶の水店に掲げられた「感動のあまりむせび泣きました…」というPOPが起爆剤となり、累計発行部数80万部を超えた原作(新潮文庫)は、事件をめぐり、登場人物たちの交錯するそれぞれの思いを描いた。精神科病院を舞台に、様々な過去を背負い、家族や世間から遠ざけられながらも明るく生きていた患者たちの日常を遮るように起こった殺人事件を巡って彼らの交錯する思いを描く。事件を巡り、登場人物たちの交錯する様々な想いを描いた本作は、その結末が感涙を誘うと絶賛された。

主演は、落語家、タレント、俳優と多岐にわたって活躍する国民的芸人・笑福亭鶴瓶。本作で演じるのは、母親や嫁を殺めた罪で死刑囚でありながら、刑の執行が失敗し生き永らえ、現在は精神科病院にいる男・梶木秀丸。[ディア・ドクター;'09]以来、10年振りの主演作となる本作では、役作りのため炭水化物をとらない食事制限や腹部にサランラップを巻くなどして、約10日間で81.6kgから73.8kgもの減量を成功させ、お馴染みの庶民的な顔とは異なる姿に挑戦する。社交的な鶴瓶サンは、共演者やロケ先の人々と談笑しながらも、撮影に入るとトレードマークの笑顔を封印して難役を熱演した。

また、秀丸と心を通わせる患者役として、綾野剛が出演。サラリーマンだったが、幻聴が聴こえるようになり、家族から疎まれて精神科病棟に強制入院となったチュウさん役を演じる。鶴瓶サンとは08年公開の映画[奈緒子]以来11年ぶりの共演。

そして、不登校が原因で精神科病院に通院する女子高生・由紀役には小松菜奈。

監督、脚本を務めたのは[太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男][愛を乞うひと][エヴェレスト 神々の山嶺]などの平山秀幸。2011年に原作と出会い、惚れ込んだ、約9年の時を経て脚本を完成させ、平山監督が自ら脚本を手掛けるのは今回が初となる。撮影は1/7に長野・松本でクランクインし、その後、独立行政法人国立病院機構が運営する精神科の専門医療施設・小諸高原病院の協力を得て2週間にわたって実施。日本国内でドキュメンタリーを除いて国立の精神科病棟を使用した映画撮影は、同作が初の試みになるという。ほかに関東近郊や都内での撮影を経て、クランクアップは2月中旬を予定。


▽笑福亭鶴瓶コメント
平山監督から、長文のオファーの手紙をいただいたのが3年前。素晴らしい作品を数多く手がけた平山監督がそこまでおっしゃるならと、お引き受けしました。とにかくいい脚本なんです。クランクイン前に脚本を読んでいたら、涙が止まらず、撮影現場でも台詞を言っていても、ぐっと詰まることが度々あります。“人に優しい映画”になると確信しています。

▽綾野剛コメント
鶴瓶さんは深く潔く、小松さんは繊細で瑞々しく、平山監督は愛で現場を包み込んでくれる。私はこの作品の中で、本当を見つける事を捨て、嘘をつかない事を手に入れた。本当とは観念だ。嘘をつかないとは心念だ。平山監督のまなざしに魅せられ気づかされました。誰一人、自分に嘘が無い人達の物語です。優しく強く抱きしめて頂けたら幸いです。

▽小松菜奈コメント
今回、私が演じているのは、自分ならば決して耐えられない程の壮絶な過去を背負いながら、強い覚悟で生きていく少女の役です。共演者の方々とお芝居の化学反応を楽しみながら、日々挑戦しています。特に長野ロケでは、演技に集中出来る環境が整い、鶴瓶さんや綾野さんという諸先輩がオープンに接して下さるので、オンとオフを切り替えながら、現場で落ち着いて撮影に取り組めているのを実感しています。

▽平山秀幸監督コメント
原作が書かれた20年以上前と比べて、今ではスマホやパソコンで生活は便利になったけれど、むしろ、自分の荷物を抱えきれずに、心の病にかかる人が増えた気がする。
自身もどん底で苦しいのに、他人の痛みを思いやる――原作で、秀丸がみせる“自己犠牲”に圧倒され、どうしても映画化したいと脚本を書き始めた。
笑福亭鶴瓶さんは、きっと新しい顔を見せてもらえるとお願いした。
そこに綾野剛さん、小松菜奈さんという、才能溢れるキャストが加わって、芝居の応酬を見ていて楽しい現場となった。


映画『閉鎖病棟(仮)』は11月公開。