お久しぶりです、いつの間にか9月でした……。
遅々として家の整理が進まなくてガックリしています笑
でも明日あたりにテイルズ(ゲームです)の最新作が家に届くので今のうちに頑張ります。
■あらすじ■
カンナには幼なじみがいた。
名前はハルタ。
小さいころはすごく仲が良かったけれど、中学で少し疎遠になって、高校でちょっとだけ仲が元に戻った幼なじみが。
けれど、ハルタは死んでしまった。
カンナにメールを打ちながら自転車を漕いでいたら トラックに撥ねられてしまった。15歳だった。
薄々気づいていたし、もしかしたら自分もそうだったのかもしれないけれど……ハルタはカンナのことが好きだった。
ハルタが死んで以来、カンナはうまく前を向いていられなくなった。
心の底にいつもハルタがいる。
このままじゃだめだ、ということはわかっているけど……どうすれば前に進めるのかすらわからない。
そんな中、カンナは自分と似た傷を持つ人・ロクと出会う。
「ハルタの死」と「カンナ」と「ロク」そして彼らを取り巻く人たちの心を切り取るオムニバスストーリー。
■レビュー■
本作品の最大の特徴は数話程度で主人公がどんどん変わっていくことだと思います。
例えば1巻のACT1ではロクの友人の梶間に恋する女子高生が主人公、ACT2ではカンナ、2巻冒頭のACT3ではのちに梶間の婚約者となる梶間の先輩・瑞希が主人公。
全13巻のコミックスの中で、カンナとロクを中心にした人間模様がパズルのピースをはめていくように少しずつ埋まってゆくのが特徴です。
●●から見た「カンナは、ロクは、ハルタは」どんな人だった、ということを13巻かけて描いている感じでしょうか(ときどきメイン人物のカンナ、ロク視点も混じりますが)
いくえみさんはほんとに読みきりがうまい方で、短い物語の中にいろんな感情を詰め込むのがうまい方なのですが、いくえみさんの良さを生かしつつ長編に持っていったところがこの作品のうまいところだと思います。
作中で私が特に好きなエピソードにカンナの友人の千家という女の子を主役に据えたエピソードがあるのですが、このエピソードで千家は中西という男の子に片思いしているのですが、中西はカンナのことが好きなのです。
それに気づいた千家はカンナのことをどうしようもなく「ジャマ」だと思う。
でも、表面上はカンナの気のいい友達を演じ続けるのです。
それまでのお話でカンナが「マドンナだけど気のいい奴で、けれど最後の部分で他人に踏み込んでこない人物」として描かれているので 千家のカンナを「ジャマ」」だと思いつつも、「友達としてカンナのこと 本当は嫌いじゃない、むしろ結構好き」という複雑な心境が読み取れて非常に面白い。
人が人に抱く気持ちは決して「好き」か「嫌い」で割り切れるものじゃなくて、「好きだけど、ジャマ」「好きだけど、憎らしい」、「嫌いだけど、うらやましい」みたいに 好きか嫌いかの後に何か言葉が続くような ちょっとややこしいものなんじゃないかな と思えます。
ちなみにラブストーリーとして王道ですごく好きなのはACT5から始まるハルタに片思いしていた一恵のエピソード。
ここに出てくるキヨという男の子が私、すごく好きなのです。
いくえみさんの描く男の子はちょっと馬鹿だったりもするけど、芯が通ってて でも優しくて、女子的にキュンキュンします。加えてリアル。
いい、格好いい!ってときめくのと同時に「こんな男の子いるんじゃないかな」って思える感触があるのです。
だから、恋に恋したい女子よりもどっちかというと大人な女子がときめける男子かもしれませんね。
他にも梶間や古屋も個人的にすごく好きです笑 どうカッコイイかは是非その目でお確かめください。
メインとなるカンナとロクの物語はあまりにネタバレなので多くは語りませんが、作品のラストを飾ったカンナのモノローグを読んだ瞬間 全てが「許された」気持ちになれます。
このカタルシスを味わうために13巻があったんだ!と思えます。
タイトル通り、「潔く」「柔い」物語です。
いくえみさんの代表作となる一作だと思うので、いくえみ漫画は未読の方もぜひぜひ。