又吉直樹の小説『火花』が映画化され、11月から全国東宝系で公開される。
若手コンビ「スパークス」としてデビューするも、まったく芽が出ないお笑い芸人の徳永(菅田将暉)は、営業先の熱海の花火大会で4歳上の先輩芸人・神谷(桐谷健太)と出会う。神谷は、「あほんだら」というコンビで常識の枠からはみ出た漫才を披露。それに魅了され、徳永は神谷に「弟子にしてください」と申し出る。神谷はそれを了承し、「俺の伝記を書いて欲しい」と頼む。その日から徳永は神谷との日々をノートに書き綴ることに。その後徳永は、拠点を大阪から東京に移した神谷と再会。毎日のように芸の議論を交わし、神谷の同棲相手である真樹(木村文乃)とも仲良くなり、仕事はほぼないが才能を磨き合う充実した日々を送るように。しかし、いつしか2人の間にわずかな意識の違いが生まれ始める――。
物語は、漫才の世界に「夢」を持って身を投じるも、結果を出せず底辺でくすぶっている青年・徳永と、強い信念を持った先輩芸人・神谷が出会い、「現実」の壁に阻まれ、「才能」と葛藤しながら歩み続ける青春ストーリー。原作が掲載された雑誌「文學界」は驚異的な売り上げを記録し、単行本の部数は253万部を突破(※2月10日に文庫が刊行され、文庫初版部数を加えると累計で283万部)、さらには「第153回芥川賞」を芸人として初めて受賞する快挙を達成するなど、発売当初から大きな話題に。昨年にNetflixでドラマ化され林遣都&波岡一喜主演でドラマ化されるなど反響を呼び、2月26日からNHK総合でも同ドラマが放送される。又吉サンは第2弾の小説を、3月7日発売の文芸誌[新潮]4月号(新潮社)で発表する予定。
映画版の監督を務めるのは同作が3作目の長編監督作となる板尾創路。2010年に[板尾創路の脱獄王]を監督し、初長編監督作品にも関わらず、釜山国際映画祭を始めとした国際映画祭などに出品され、第29回藤本賞・新人賞と、第19回日本映画批評家大賞・新人監督賞を受賞するなど、監督としての才能も平山秀幸監督や是枝裕和監督らからも演出を高く評価されている。
又吉サンが創造した“芸人”の世界を廣木隆一監督とは違う観察眼で映像化できるのは、同じ芸人であり、又吉からの信頼も厚い板尾監督しかいないとの声に快諾し、彼ならではの視点を盛り込みながら映画「火花」を新たに創造していく。
脚本は、[青い春][ナイン・ソウルズ][クローズEXPLODE]などの監督作を発表している豊田利晃が板尾と共同で手掛ける。豊田氏が脚本のみで映画に参加するのは約20年ぶりとなり、豊田作品に多く出演している板尾監督からのラブコールによって実現した。
まったく芽が出ない若手お笑い芸人・徳永役を菅田将暉、徳永の師匠となり、強い信念によって“真の笑い”を追求する先輩芸人・神谷役を桐谷健太がそれぞれ演じる。お互い「三太郎」シリーズで“鬼ちゃん”と“浦ちゃん”でお馴染みとなった2人だが、映画は今回が初共演。共に大阪出身でもある2人が見せる関西弁のセリフや漫才シーンは必見となりそう。菅田君と桐谷君は共に大阪出身。撮影前に入念な稽古を行なうことも予定されている。
共に今をときめく人気俳優であることに加え、「舞台に立ち、人を笑わせる“漫才師”としての存在感」「目指した“夢”を前に惑い、突き進む危うさ」を表現できる稀有な俳優として、2人に白羽の矢が立った。
大阪出身でお笑いを愛する2人は、それぞれ芸人を「神様」(菅田将暉)、「怪物」(桐谷健太)と呼ぶほど尊敬しており、プレッシャーも相当だ。それでも菅田君は、芸人の世界に足を踏み入れるうれしさが勝ったようで、役柄にあわせて髪を銀髪に染める覚悟も決めた。
さらに神谷の恋人・真樹役に木村文乃がキャスティング。売れない神谷を支え、徳永にも優しく接しながらも、2人の人生の転換の引き金となる切ない存在ともなる美しい女性を演じる。また徳永とお笑いコンビ「スパークス」を結成するツッコミ担当の山下役を川谷修士(2丁拳銃)、神谷と「あほんだら」を結成するツッコミの大林役を三浦誠己が演じる。「漫才コンビのツッコミ役は、ボケ役よりも高度なお笑いの技術が要求されるため、経験者を入れたい」との板尾監督の思いから2人がキャスティングされたという。3月中旬からの撮影を前にそれぞれのコンビが本物の芸人のようにネタを磨き漫才の稽古を行う。
半年かけて脚本を完成させた板尾監督は「最終的に2組の漫才コンビをM-1グランプリに出場させたい」と宣言し、物語と同時にお笑いも本気で表現する。又吉サンやほかの芸人のカメオ出演は、現時点で予定はない。
▽菅田将暉コメント
お笑いがなかったら、今の僕は存在していないと思います。常に芸人さんの繰り出すパンチが好きで好きで好きで好きで仕方なかった。人を笑わす、この痛みが無いと生きていけないとすら思っています。そんな自分にとって神様であり日常である芸人さんを演じるという事に物凄く怖さがあります。でも板尾さんと出会ってなんかもうどうでも良くなりました。だってこんなにおもろそうな座組。原作。そして聞いたら芸人さんあるあるだと言うじゃないですか。知りたい。そんな欲求がある事をお赦し下さい。ただ好きなものに邁進して良いと言う許可が下りたので、この度マイクスタンド一本のステージに立たせて頂きます。
映画『火花』宜しくお願いします。
▽桐谷健太コメント
幼い頃から、人を笑かして笑顔と笑い声が生まれた時のエネルギーが大好きでした。
同時にウケへんかったら…とゆう、底知れぬ恐怖を感じ、眠れない夜も何度もありました。
人に笑ってもらえる最上の喜びと、この上ない困難さ。それを生業とする芸人さんは狂気の沙汰。怪物です。そんな世界に生きようとする、愛おしい男たちの物語。役者が芸人を演じるのではなく、芸人を生きます。あーコワ。
▽木村文乃コメント
誰もが知ってる物語の、誰もがどこかで経験したことのある苦さのなかで、少しだけホッといられるような存在になれるよう、板尾監督を信じてスタッフキャストの皆さんと一歩一歩踏みしめていけたらと思っています。
▽板尾創路監督コメント
この小説を映像脚本にするのは大変苦労しました。
語りを画にして登場人物の思いを観客に届けるのが私の今回の一番の仕事だと思い半年かけて脚本を作りました。キャスティングに関しては、関西出身のドリームキャストで何の心配もしていません。最終的に「スパークス」と「あほんだら」という二組の漫才コンビを誕生させ、M1グランプリに出場させたいです。
▽原作・又吉直樹コメント
「火花」は自分の作品ではありますが、舞台に立ったすべての芸人、それを支えてくださった多くの人達が大切に共有していた風景を、たまたま僕が書かせて貰っただけだと思っています。謙遜などではなく、むしろ大それた恥ずかしい発言かもしれませんが本気です。
その風景を子供の頃から尊敬している板尾さんに預かっていただけることが嬉くてなりません。脚本は豊田利晃さん。僕が東京で最初に好きになった大人です。キャストを聞いたときも興奮しました。菅田将暉さん、桐谷健太さん、木村文乃さん、お三方とも僕にとって色気と才気が爆発している特別な俳優さんです。そして、2丁拳銃・修士さん、俳優の三浦誠己さん。昔からお世話になっている大好きな先輩なので心強いです。なぜでしょう。
監督、脚本、俳優、優しいけれど喧嘩が強い方々ばかりが揃った印象です。ドキドキしてきました。よろしくお願いいたします。